第10話〜決意〜

 そして、次の朝。ワタルくんと廊下を歩いてくるとサクラさんたちが部屋から出て来た。

「あ、サクラさん!」

「ちょ、そら待って!」

 サクラさんが心配で、つい駆け足で近付く。そんな私を留めようとして、ワタルくんも声を上げたから、サクラさんたちは私たちを見た。

「サクラさん、あの、今日は・・・」

 そこまで言ってからなんて言っていいか分からなくなって、止まってしまった。『よろしくお願いします』じゃないよね、『お互い頑張りましょう』とか?いや、なんか違う。なんて言っていいの?

「頑張ろうね。」

 私が悩んでいると、サクラさんは優しくそう言ってくれた。その顔には、吹っ切れような感じがした。

「はい!頑張りましょう!」

 それがなんだか嬉しかった。

 みんなで出発点に向かうと、もう本部長さんとアスカさんたちがいた。

「アスカちゃん、カエデ、おはよ!」

「サクラ!おはよ!」

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫!!心配かけてごめん。」

 そんな風にいつもと同じように皆さん話してる。なのに、フウさんだけはその輪に入らず、ただ手を見ていた。

「どうしたんですか?」

 ワタルくんがそう言うと、フウさんは少し笑って言った。

「俺の力は、どこまでサクラを護れるかなって思ってさ。」

「え?」

 ワタルくんがそう言って首を傾げる。私も同じ事をした。なんで?フウさんは充分強いのに・・・。

「俺は一度、サクラを護りきれなかった。それが悔しくて、あの時よりも強くなったと思うんだけど、不安でさ・・・。」

 そう言って、笑う。だけど、笑ってるはずなのに、その目元は悲しそうにしてる。

「フウくん?」

 そんなフウさんを察知したのか、サクラさんが輪の中から出て来た。カエデさんやアスカさんもこっちを見てる。

「ん?どうしたの?」

 サクラさんには気付かれたくないのか、フウさんはさっきの悲しさを押し込んだ。

「なんか、フウくん変だったから、気になって・・・。大丈夫?」

「うん、大丈夫。そろそろ行く?」

「うん、そんな話してたところだけど・・・。」

 そう言って、話をそらせる。いつもの事なのかサクラさんは、困ったように返した。

「そう・・・。なら行こうか。」

「うん・・・そうだね。」

 『行こうか』と言われたサクラさんは、正直怯えてるように見えた。仕方ないよね、あの人の所に行くんだから。

「大丈夫、護るから。」

「うん、そうだよね。」

 そう言っても、やっぱり不安だよね。

「そらもだよ。」

 急にワタルくんにそう言われてびっくりする。え?私も?

「そらも、俺が護るから、安心して。」

「・・・え?」

「いや、そらもさ、昨日からずっと表情暗かったし、心配だったんだ。なのに最近はずっと、俺が元気付けられてたからさ。なんか、申し訳なくて・・・。」

 そっか、いつも私が思う事と同じ事思ってたんだ。なんだか、似たもの同士。嬉しいな。

「うん、ありがとう!でも、もう護られるだけじゃないからね!一緒に戦わせて!」

「うん、それはもちろん!頼りにしてるよ、パートナー!」

 そう言って笑う。ほら、いつもの私たち。大丈夫。きっと上手くいく。ワタルくんと一緒だもん!

 そして、私たちはあの人が指定した場所に向った。

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