恋する俺は学校の相談屋

ミロク

第1話恋する俺は学校の相談屋

放課後、橙色の太陽が薄暗い図書室の一角を照らす中、俺は1人本を読んでいた。


……なるほど、ここでこういうアプローチをすれば—————


ガチャ!


「おーい、相談屋ー?いるー?」


入口の方から声がするな……客か。せっかく今いい所だったのに…


「はぁ……。」


読んでいた本に栞を挟み、席を立つ。


「はい…ここです。」


のっそりと本で囲まれた仕事場から顔を出すと、


「あ、いたいた相談屋。実はな————————」




「聞いてくれてありがとう!それじゃあな!」


バタン!!


「ふぅ…。」


今日もやっと仕事が終わった…。もう太陽は完全に落ちていた。


それにしてもさっきの客ひでぇな…。


俺の仕事は人と相談する事だ。決して彼女に対する愚痴を聞く存在ではないというのに…。


ましてや現在色恋で悩みを持つ非リアには辛い話だった。くそ…あのやろう…。


何が「俺この前デート行ってさー」だよ!ただの自慢じゃねぇか!のろけてんじゃねぇ死ねっ!!


名前も知らないリア充の悪態をつきながら帰る用意をしていると、不意にケータイが鳴り始めた。


なんだよまさか今から相談とかじゃないだろうな?


それはさけたいので、部室に鍵をかけ帰る準備を整えながら電話に出よう。


そうすればあしらえるだろうと電話を手に取った。


「はい…。鍵谷です。」


名前を言うと、電話の先で相手は何度か迷っていたようだが、やがて意を決したように一度深呼吸すると、


「西条です…」と小さめな声で言った。


でも俺には小さな声で十分だった。


「に…西条さン!?どうしたの!?」


思わず変な声が出た。


しかし、それも無理はない。


西条さんーーー西条 美波といえば、容姿端麗、成績優秀、運動能力抜群で陸上部に所属している上に人柄まで良くクラスの中心になっている、まさに《天才》なのであった。


しかしそんな彼女がどっちかというと隠キャの俺に何の用なのだろうか……??


「あの…その…鍵谷君って相談屋してるんだよね…?ちょっと相談したいことがあって……。」


ますます謎だった。相談?何故俺に?


彼女ならもっといい人が相談相手になってくれるだろうに。


ていうかもう部室閉めちゃったな………


気になることはたくさんあったが、今日はひとまず


「今日はもう遅いから相談は明日聞くよ。明日の放課後はいけるか?」と

なるべく平静を保ち話した。


「うん。明日の放課後ね。わかった。…よろしくおねがいします。」


少し恥ずかしげな彼女の言葉を最後に、電話は終わった。


「……………」


やばいな…俺西条さんと電話したんだ…。


電話ってあんなに緊張するのか…………噛まなかったよな…………??


未だに実感がわかない。


今自分はどんな顔をしているのだろうか。


彼女の悩みとは何だろうか。


考えることが多すぎる。


「とりあえず帰るか……。」


気持ちを整理させるためわざとらしく声を出し、帰路についた。


帰る道中も、頭の中は彼女の事でいっぱいだった。


帰ってからも彼女の事で頭がいっぱいだった。


明日が待てない。


彼女に想いは寄せていたけれど、こんな気持ちになるのは初めてだった。


…………けど、悪くないな。






































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