卒業まで…あと…

 これは俺と友人Aゆうじんエーの話。


 入学式。これから始まる高校生活への不安と希望を胸に校門をくぐった。

 それから数日後。中学の頃から仲が良かった人もいたが、学科が別々になった事もあり話さなくなった。


 そしてある日、クラスの男の子と階段で話す機会があった。彼の名前は友人Aゆうじんエー。彼とはクラスが同じだったが、中学も違い、更に彼の性格が大人しい事もあり特に話す事は無かった。しかし階段で隣を歩く友人Aの姿を見て俺は一声かけずにいられなかった。彼がクラスで生徒と話している姿をあまり見ていなかったのだ。その日、僕が話したことは―


「卒業まであと何日だっけ?」

「最近入学したばかりだから、まだあと2年と半年以上あるよ。」


 それだけだった。


 そしてその日から毎日のように階段で会うたびに卒業までの会話をした。お互いに高校が窮屈だったのだろうか。早く終わらないかななどと言い合ってまたクラスに入っていくのであった。


 俺は今高校3年生。

 それまで階段以外でも話す機会が増え、普通の高校生の会話をしていた。

 そして今日、久しぶりに俺は友人Aに聞いた。


「卒業まであと何日だっけ?」


「もうあと2ヶ月と少しだね。」


 彼の悲しげな、それでいてとても爽やかなあの笑顔を忘れることは無いだろう。

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