29話 地獄の3000討伐
翌朝、義経とことねは昨日と同じ場所に行くと、既に西代が相変わらず仁王立ちで結構高い岩場に立っていた。
2人が呆然と立ち尽くしていると、西代はそのままトウッ!と言いながら地面に着地すると大きく口を開き「ワーッハッハッハッハッハー!2分18秒遅刻だ、気が緩んでいるんじゃないか?」と笑いながら云うと、義経が呆れたように「細かい上にいちいち癇に障るな。」とイライラさせていると西代はニッと白い歯を見せて「まあ、よい。それよりも諸君らに良い話と悪い話があるんだが、どちらから聞きたいか?」と綺麗な歯を見せながら云う西代に、ことねは「どちらも聞きたくない。」と答えると、義経も同意するように「右に同じく。」と答えた。
すると西代はまた大きく口を開け大笑いすると「では諸君らに良い話からしようじゃないか。」と人の話を聞かない西代に呆れつつ話を聞いてみると西代は「まず、良い話というのは君らに討伐依頼を申請しといた。無論、お金も沢山入ってくるぞ。」と話す西代に、ことねが「それで悪い話っていうのは?」と訊くと、西代は大笑いしながら「それがだな、なんと3日以内に魔物を3000匹討伐しなくてはならないことだ!しかもAランク以上の魔物をだっ!」と話す西代に2人はとうとう堪忍袋の緒がついに切れた。
そんな2人の様子も知らずに西代は笑っていると、ことねが西代の服を掴んだ。
普段は甘い声で話すことねも今回ばかりは我慢の限界を達したのか、いつもより低い声で西代を睨みつけると「おい、黙って聞いてればAランク以上の魔物3000匹討伐だ?ふざけんなッ!!そんなに魔物を倒したかったら1人でやってろ、アホがッ!!」と怒鳴り上げていると、ことねの背後から指をポキポキ鳴らしながら「ことねの言う通りだ。てめぇ1人で責任取れやカス。」と言いながら近寄ると、西代は苦笑いしながら「あれ……おかしいな。とりあえず2人とも一旦落ち着こうか!」と言うが2人は西代の話を無視して、ボコボコに一発殴って蹴り始めた。
「お前マジで空気読めないし、余計な仕事を増やしやがって!まだ喉も本調子じゃねぇんだぞ!今すぐ冒険者辞めちまえ、この筋肉バカッ!」
「そうだ!俺の貴重な時間を無駄に使いやがって!!」
西代は2人を宥めるように「2人とも良い蹴りではないか!この調子で討伐の依頼も頼んだぞ!ワーッハッハッハッハッハー!」と宥めるつもりが火に油を注ぐような発言をすると、2人は一気にヒートアップし蹴りの強さがより一層強くなっていた。
「2人とも、そろそろその辺にしてあげて。それと西代くんもあまり2人に無理させちゃダメだよ。」
2人の蹴りを止めながら話すフレデリックに、義経は「師匠!この
その隣で呆れたように、ことねが「うわ……ちょろすぎ。」とぼやいていると、フレデリックがことねに「ことねくんにも、ちゃんと用意してあるから安心して。」と云うフレデリックに、ことねは鼻で笑いながら「フッ、俺は義経と違ってそう簡単には、ちょろまかせられないですよ。」と自信たっぷりに話すが、フレデリックはことねにあるフィギュアを見せると、急に目の色を変え「これってもう入手不可能な超激レアの怪人23号とマスク仮面のフィギュアじゃあねぇかッ!なんで俺が欲しかったフィギュアを持ってるのッ!?」とフレデリックに訊くと、フレデリックはニコッと笑いながら「お得意様のお客様から貰ったんだけど、僕こういうのに興味ないから質屋に出そうと思ってたけど、もしことねくんが依頼達成できた時には、ご褒美としてプレゼントするけど、でもことねくんは断るんだよね?」と云うと、ことねも義経同様に即答で「やります。」と答えた。
するとフレデリックはニコニコ笑いながら「うん、良い返事だ。2人とも魔物の討伐頑張るんだよ。」と云うと、2人は敬礼しながらイエッサー!と言いながら狩場へと向かうのであった。
フレデリックは、依頼を受けに向かった3人を見送る中。
誰かに話すように「イグニスくん。2人の偵察を頼んだよ。特に僕の弟子である義経くんの実力を見極めて、今後の為に魔力の使い方を教えてあげてほしい。」と話すと、何処からともなくフレデリックの隣に背の高い男が現れると「全く。なぜ
フレデリックが去ったあと、イグニスは少々苛立ちながら「悪に堕ちた人間が
あれから数分こと。
フレデリックの言葉にまんまんと乗せられた義経たちは、車で依頼先の場所へと向かっていた。
今回の討伐場所となる、あきる野市、秋川渓谷の奥の方に突如魔物が発生したとの報告を受け。
義経たちは観光の復帰を再開させるため、3000体の討伐をする事に、車から降りると人はおろか野生動物すら見当たらない。
このまま魔物が増え続けると、いずれは都心の方にも影響を受け。多大な被害を防ぐため、義経たちの他にも沢山の冒険者たちが集っていた。
「こんなに冒険者の人がいるなら、俺たちいらなくない?」
ことねが義経にそう話すと、義経も確かにいらないな。と云うが、西代は笑いながら「何を言っている、大半の奴らは雑魚モンスター狩りでわざわざ死んでまでAランク以上の魔物を討伐するわけないだろ!」と他人事のように笑うと、義経とことねは拳を作ると「もういっぺん殴られたいの(か)?」と息ピッタリに云うと、西代はすまん。と謝った。
「それじゃあ魔物狩り1日目、始めんぞ!」
義経はそう言いながら川沿いの奥へと進んで行くと、突如草木の茂みからコモドドラゴンに似た、赤いドラゴンが素早いスピードで義経たちを襲う。
義経は素早く刀を水平に抜くと、ドラゴンの首を切り落とした。
すると、ことねが慌てた様子で「なんで殺しちゃうの!?」と義経に云うと義経は不思議に「いや、襲ってきたら普通は倒すだろ。」と返した。
ことねは呆れながら「まさかオオモドドラゴンの生態を知らないで倒しちゃったの?どうしよう、どうしよう、どうしよう!このままじゃあアイツらが復讐しに来ちゃうよッ!」と慌てた様子のことねに義経は「え、そんなにマズいの?」と訊き返すと、ことねはゆっくりと頷き「オオモドドラゴン一体なら雑魚レベルの弱さだけど、ヤツらは仲間意識が強い魔物なんだ。常に仲間の生存はお互いに認識しあっている、だから冒険者が知らずにオオモドドラゴンを倒したりすると、仲間の群れがその冒険者を殺しに襲い掛かるみたいだけど……。」と話している途中で茂みの方から、ものすごい数のオオモドドラゴンの群れが義経たちを襲い掛かる。
3人はその場から急いで逃げると、義経がことねに「なんで、そういう大事な話を最初に言わなかったんだよ!」と云うと、ことねは「勝手に倒したのは義経じゃん!そもそもオオモドドラゴンが秋川にいるのは想定外だよ!アイツら普段は高原とかに生息している上に温厚な性格なんだぞ!なんで倒すかなー、バカアァァァッ!!」と泣き叫んでいる隣で、呑気に笑いながら西代は「まあ、いいトレーニングだと思えば良いじゃないか、それじゃあ一緒に良い汗を流そうじゃないか!」と云うと、その隣でことねは涙目になりながら「もう嫌だ、この指導者……。」と言いながらオオモドドラゴンから逃げるのであった。
走り続けること数分。
少し開けた場所に辿り着くと、義経は足を止めた。
そして腰に差している刀をゆっくりと抜くと、迫り来るオオモドドラゴンに技を仕掛けたその刹那。
オオモドドラゴンの群れは一瞬で氷漬けになると、そのままダイヤモンドダストのように綺麗に砕け散った。
その様子を見ていた2人は「義経、凄いよ!」と、ことねが云うと西代も流石だな。と褒めるが、義経は困惑しながら「いや、俺は何もまだしていない。一体誰が倒したんだ?」と警戒していると、茂みの奥の方から1人の少年が出てきた。
義経は驚きながらも少年に「ここにいる魔物は全てお前が倒したのか?」と訊くと、少年の目付きが急に変わり、そのまま素早く右手を前に出すと、右手から鋭い氷柱でまだ生き残っていたオオモドドラゴンを一気に貫いた。
少年の行動に吃驚しながらも少年の方を睨むと「いきなり危ねぇだろがッ!もし人に当たったりでもしたら、どうすんだよッ!!」と怒鳴ると、少年は義経の方に目を向けると「魔物の気配に気づけない奴らが悪いだろ。俺はただ生き残りを倒しただけ。何も悪くないし、冒険者なら躱せて当然だろ。」ときっぱり言い切った。
義経は少年の態度に苛立ちながら「どこのギルドのガキか知らねえが。人の島を荒らすんじゃねえよッ!」と睨みつけながら云うと、ことねが呆れたように「島ってヤクザじゃないんだから、それより君はどこから来たの?」と訊くと、少年は素直に「北西の方でオオモドドラゴンの群れを倒していたんですが、倒している最中にオオモドドラゴンに逃げられて、それで追っている最中に他の人とも逸れたと思います。」と説明をすると、義経は苛立ちながら「お前のせいじゃねえかッ!」と怒るが、少年は義経を見下すように「雑魚モンスターもろくに倒せない奴がよく言うよ。」と挑発的な態度を見せると、義経は頭にきたのか少年に歩み寄りながら「おい、遠回しに俺のことを雑魚だって言いたいのか?上等じゃねえか、どっちがより多くの魔物を倒せるか勝負っすか?」と喧嘩を売ると、少年はため息を吐きながら「別に良いけど、ハンデとして俺は武器を一切使わないでやるよ。」と、義経を小馬鹿にした。
少年のその態度が気に入らなかったのか義経は「ふざけんなッ!ハンデとか要らねえんだよ、正々堂々と勝負しろや!」と苛立っていると、少年は呆れた様子で腰に差している剣を引き抜き、そのまま剣を振り翳した。
すると剣の振り翳した周囲一帯が一瞬で氷漬けになると先ほどと同様。周囲にいた魔物だけが砕け散り、そして氷漬けになった木々は水となり溶け始めた。
少年は義経の方を向くと「一瞬で勝敗が決まるけど、それでもいいのか?」と話す少年に義経は苛立ちを抑えながら「人のことバカにしすぎなんだよ、俺だって雑魚モンスターくらい簡単に一掃できるんだよ!見とけ氷野郎!」と云うと、義経は刀を構えながらそのまま素早く木々の奥の方へ行くと、兼房から教わった風神斬りの
すると周囲一帯が黒い風の刃で次々と切り倒されながら魔物と木を切り刻んでいった。
その様子を見ていたことねは慌てながら「義経、ストーップ!マジでストップしろーッ!」と止めると、義経はことねの声が聞こえたのか一旦攻撃を止め、不服そうな顔でことねに顔を向けると「ことね、せっかくいい調子だったのに俺の邪魔するんじゃねえよ。」と云うと、ことねは義経に起こりながら「そういう問題じゃないだろ!木まで一掃してどうすんの!自然破壊もいいところだよッ!周りをちゃんと見ろ、馬鹿経ッ!」と叫ぶと、義経も怒りながら「そこに木が生えてるのが悪いんだろが!そんなに切られるのが嫌ならお前が守れッ!」と、あくまで自分は悪くないと云うスタンスの義経たちを見ていた少年は呆れたのか、義経たちを背に向けると「なんか興醒めしたから、もう俺は戻ることにするよ。」と云うと、少年は持ち場を離れようとすると、義経が「試合放棄かよッ!名くらい名乗ってから去れよッ!」と言った。
少年は振り向くことなく「冠木だ。もう2度と会うことはないだろうけどな。」と云うと、義経も「俺の名は源義経。次会った時は絶対俺が勝つ!覚えておけ、冠木ッ!」と云うと、少年は返事もせずに森林の奥へと姿を消すのであった。
少年が去った後、義経はやる気が出たのか「お前ら、今日中に1500匹倒すぞ、覚悟はいいな!」と云うと、西代はニッと笑いながら「俺はいつでも大丈夫だッ!」とマッチョポーズを決めている中、ことねは苦笑いしながら「あー急に胃痛が、違うお腹の辺りがヤバいかも。」と仮病し始めると、義経は遠い目で「安心しろ、お前に何も期待してないから、とりあえずその辺の雑魚モンスターでも倒しておけ。」と言った。
ことねは嬉しそうに頷くと「うん、俺は2人の邪魔にならないように遠くで雑魚モンスターを処理しながら義経たちを応援しているよ!」と云うと、その辺の対象外のモンスターを倒し始めた。
義経は西代の方へ向くと「俺は右側をやるから、おっさんは左側を頼む。」と伝えると、西代は決めマッチョをすると「おう!俺に任せろ!」と言いながら、闘牛の如く対象である魔物を薙ぎ倒していく。
義経は呆れるように「まるで野生のゴリラそのものじゃねぇか。さてと、昨日は何も考えずに魔力を使いまくったが、今回は魔力を抑えて戦うとするか。」と云うと、魔物を次々と倒し始めた。
そして日も暮れて、夜の20時を回った頃。
義経たちは管理局から指定されたログハウスの中で今日の疲れをほぐしていた。
義経はマッサージチェアに座りながら、疲れをとっていると、ことねが「義経、お疲れ様。西代さんは先に寝るみたいだよ。それとこれは今日頑張ったご褒美に、俺特製のキャラメルマキアートをプレゼントするよ。」と云うと、サイドテーブルの上に、ことねが作ったキャラメルマキアートを置いた。
義経は少し嬉しそうに「サンキュー!これ1人で作ったのか?」と訊くと、ことねは頷きながら「そうだよ。ギルドに入る前に、俺とびすはカフェで働いてたんだよね。まあ、俺目当てで毎日客足が絶えなかったんだけどさ。本当、イケメンに生まれてきた俺って罪な男だよな。」と酔いしれていると、義経は「最後の台詞は余計だけど、味は確かだな。」と、ことねの話を軽く流した。
ことねもソファーに腰をかけ、カフェモカを嗜みながら義経の方を向くと「でもさ、本当に1500匹も倒すなんて凄いよ。」と褒めると、義経は少し不満そうに「正確には1450匹だけどな、その大半があの筋肉馬鹿野郎だし、何よりもだ!昼間の冠木とかいう氷野郎のせいで集中ができなかったのが悔しいんだッ!」と悔しがっていると、ことねは苦笑いしながら「まだ根に持ってたんだ。魔物狩りしている時くらい気楽にやればいいのに。そんな調子だと神経すり減るよ。」とアドバイスすると、義経はムスッとした顔で「俺もそうしたいんだが、アイツの事を思い出さないようにしようとすればするほど、脳裏であのうざったい言葉が再生されるんだよ!俺は一体どうすればいいんだッ!」と項垂れ始めた。
ことねは呆れるように「もはや末期だね。」と呟くと、ことねは立ち上がると、タンスの引き出しを開け。
花のようなものを取り出すと、紅茶の入ったポットにそのまま入れた。
そして紅茶を義経に渡すと「この花はね、レテって言って、その人の顔を思いながら飲むと一時的だけど、忘れることができるんだよ。だから明日は支障なく戦うことができるはずだよ。」と説明をすると、義経は納得するように紅茶を一口飲んでみた。
するとさっきまでの苛立ちが嘘かのように消えてゆき、だんだんと穏やかな気持ちに変化し始めるのであった。
「ことね、俺さっきまでなんであんなに苛立ってたんだか知らないが、今は清々しいほど心地がいい。」
「効果があって良かったね。それじゃあ明日も早いから俺もそろそろ寝るよ。義経はまだ起きてるの?」
「あー、うん。もう少し経ったら俺も寝るよ。」
義経がそう云うと、ことねは眠そうに「そう、あんまり夜更かししすぎちゃダメだよ。それじゃあ、おやすみ。」と云うと、義経も返事をするように、おやすみ。と言った。
静まり返った部屋の中、義経は火のついた暖炉を見つめながらボーッとしていると「今日はお疲れ様。」と背後から聞き覚えのある声がして、義経はゆっくりと振り返った。
「師匠。なぜここに?」
義経がそう訊くと、フレデリックは義経の腕を引っ張り上げると、そのままマッサージチェアから立たせた。
「それじゃあこれから、秘密の特訓を始めるよ。」
フレデリックは不敵な笑みを見せると、義経を外へと連れ出して行くのであった。
そして開けた場所に辿り着くと、フレデリックは義経の方を指差しながら「この短時間で、義経くんのスキルを更に磨き上げてみせる。疲れたから休むという戯言は聞かない。覚悟はいいな。」と、いつもと違うフレデリックに義経は「師匠、なんかいつもより変じゃない?本当に師匠なのか?」と、疑い始めると、フレデリックはチッと舌打ちすると、変身を解き始め。
「下等生物な生き物が、なぜ
男がブツクサと言っていると、義経はフレデリックの言葉を思い出し「もしかして師匠が言ってた本当の指導者ってアンタの事なの?」と訊いてみると、男は義経を方を向くと「なんだ、フレデリックから話は聞いていたのか。なら話は早いな。
果たして義経は強くなるのかは次のページへ続く。
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