序列16位の魔法教師
リン
1章 期待はずれの16位
第1話プロローグ-少年の期待-
世界は残酷だ
その昔、誰もが思った事だろう。もしもこの世に神が居るならば、何故人類にこの様な試練をお与えになったのか……それこそ神のみぞ知ると言ったところだろう
人類が統治する国は100以上もあった程、人類が繁栄を謳歌した時代があった。だが突如現れた魔神という脅威によって人類はその数を減らし、残った人類国家は8つのみ。そんな時、普通の人間にはない……忌むべき異能を持った英雄達が立ち上がった
8人の英雄は魔神と戦い勝利を収める。だが協力な魔神の力を殺しきる事は出来ず、英雄の1人が魔神の核を自らの体に封印した。核を失った魔神は絶命したが、魔神の体から世界を覆うほど膨大な魔力が溢れ、様々な影響をもたらした
その中でも最も人類の脅威となったのが魔物だ。自然の中で暮らす動物達が魔神の悪しき魔力を浴びた事で肉体が変質し、人々を襲う魔なる生き物へと変貌したのだ。魔物は魔神とは違う。魔神は1人だったが、魔物は群れる。人間に抗えるようなものではなく、英雄達でさえも少しづつ数を減らし、人類国家が5つになった時、英雄は全滅した
だが世界を覆った魔神の魔力がもたらしたのは魔物だけではなかった。人類もまた動物と同様に魔力の影響を受けていたのだ。人類が新たに発現させた能力を魔法と呼び、魔物との戦いの中で魔法は進化していった。そして現在、人類は5つの国が協力し、全世界の1/3の土地を奪還する事に成功した。魔法により強固な障壁を張り、魔物の侵入を許さない。人々はひと時の安寧を手にしたのだ
それが現在ある5つの国の、魔法の、人類の起源の物語である
◇◇◇
まだ入学して半年くらいだが、見慣れた教室。真ん中の列の一番前、そんな席を席替えの際のくじ引きで引き当ててしまった少年は堂々と居眠りすることも出来ず、教師の話を聞き流しながら不満に思っていた
(やっぱり、歴史の授業はあんまり面白くないな……せっかく魔法学院に入学したんだから魔法を使う授業をしたいよな)
ここは5つある人類国家の1つ、ファーストにある国立魔法学院だ。人類の脅威である魔物と戦うための魔法を身につける為、魔法を使った競技を学ぶ為、この学院に入学する理由は様々だが、その全てが魔法に関連するものだ
だが4年制のこの学校は1年生の最初の半年は魔法の知識や人類の歴史、魔物の種類などの座学が中心だ。もちろん数学などの普通の授業もあるが
この少年だけじゃない。1クラス30名で4クラス、計120名のほぼ全員が魔法を使いたいと不満に思っているだろう
(そろそろ半年経つんだけど、いつになったら魔法が使えるようになるのやら)
そんな事を思ってると、教室のスピーカーからチャイムが鳴り響く
(やっと帰れる)
「じゃあ今日の授業はここまで!日直さん号令をお願いします」
日直の号令に合わせ、礼をする
「このままHRにしますね。なんと!明日から皆さんが待ちに待った魔法の科目が授業に追加されますよ!」
担任のその言葉に教室中が大騒ぎになる
(やった!ついに魔法が使えるんだ!)
普段はあまり感情的になることのない少年だが、この時ばかりは心から喜んでいた。半年間の平凡な日常…代わり映えしない学校生活に終止符が打たれ、この学院に入学した目的の第一歩を踏み出せるのだ。喜ばない方がおかしいだろう
「明日の1時間目に各クラスに魔法基礎、詠唱基礎、魔法陣基礎、魔法実技の担当の教師が来ますからちゃんと先生の言う事を聞くように。1-Aには魔法実技の先生が来る事になってます」
(魔法実技!いきなり実技は当たりじゃないか?)
「ここだけの話……その人、新人の先生なんですけど、元軍人で魔法序列16位の魔法のエキスパートらしいですよ!すごいですよね!」
それを聞いた途端、また教室が騒がしくなる。それもそうだろう。魔法を使うにはライセンスが必要となる軍人だろうがアスリートだろうが技術者だろうが、魔法を使う人間はみんな使用許可証となるライセンスが必要不可欠だ。そのライセンスには氏名、性別、年齢などの身分証明の他に魔法序列というランキングが表示される
(魔法序列16位……世界で16番目に魔法が上手い人……普通はそんな人は前線に行ったり、競技とか研究で忙しかったりして学院に来ることは滅多にないらしいんだけど……まぁいいか、すごい人に教えてもらえるんだし!)
その日は1年生全員が浮き足立っていた
◇◇◇
この学院は全寮制だ。1部屋2人でクラスメイトとペアになる
「カイト!明日は楽しみだな!」
「ニック、明日が楽しみなら早く寝ろ。寝坊する訳にはいかないだろ?」
少年はいつまで寝ようとしないルームメイトを咎めながらも、自身もなかなか寝付けないでいた
「魔法序列16位の人が来るってケイ先生言ってたけど、やっぱすげー人なんだろうなー」
「あぁそうだな。俺たちラッキーだな!初日から魔法実技の授業な上に最高の教師だ」
(俺は……魔法覚えて、強くなって……軍に入って………絶対に、外の世界をこの目で見るんだ)
少年……カイトは決意を新たにその日は眠りについた
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