密室

大地は屋敷にいなかった。萌黄に続いて大地まで失踪してしまった。

自分の部屋へ戻り、色々と考えていた時であった。

ノックがしたのだ。開けてみると、そこにはイトがいた。

「海翔様、大変です!ほかの使用人たちがおりません。2人ともどこかへ消えました。」

どうやら使用人がいないらしい。でもどうして俺のところへ来たのだろう?

「姉貴たちにはそのことを言ったのか?」

「い、いえ。実は樹里様、十一智様も見当たらないのです。

お二方は、確か一緒の部屋にいたはずなんですが。いくらノックをしても返事がありません。それどころか、物音もしないのです。」

彼女はかなり混乱した様子だった。不安そうな表情で足は小刻みに震えている。

「姉貴たちの部屋はどこなんだい?」

「十一智様の部屋です。私は萌黄様の捜索から帰ってこられた後、二人が十一智様の部屋へ入るのを見ました。」

彼女はメイド服の裾をぎゅっと握っている。怖いのだろう。男の俺も怖いのだから当然だ。

今は姉貴たちが心配だ。とりあえず、兄貴の部屋へ行こう。



兄貴の部屋は鍵がかかっていた。

「マスターキーは?」

「実は、昨夜なくなりました。十一智様の部屋と樹里様の部屋のものです。」

「だったらぶち破るしかねえ!」

「お待ちください!ここは先代様の所有物。乱暴は許されません。チェーンカッターをお持ちします。」

「分かった!」

なぜだ。どうしてマスターキーを盗んだんだ?

仮に姉貴たちが殺されているのであれば、犯人はマスターキーでこの部屋を密室にしたのだろう。

俺たちが帰ってきてからまだ15分だ。この間に二人を殺し、マスターキーでわざわざ鍵を閉めた。密室にするのが狙いなのだろうが、ちょっとずさんだ。

昨夜のうちからマスターキーを奪うのもおかしい。

そうこう考えているうちに、彼女がチェーンカッターを持ってきた。

あれ?チェーンカッターって意味あるか?

鍵をかけてあるのに、いらないのではないか?そのことを彼女に言ったら、

「あっ。そうでした。だったらぶち破るしかないですね。」

天然なのだろう。

俺は扉に何回か体を打ち付けた。扉は大きな音を立てて開いた。

そこには凄惨な十一智の死体があった。目は両目とも抉られ、腹には刃物で何回も刺された跡があった。頭も刃物で滅多切りにされていて、脳漿が散っていた。

俺はしばらくの間、このあまりにも残酷な死体を前にたたずんでいた。



「樹里様がいらっしゃいませんね。」

しばらくして彼女が言った。確かに彼女の言うとおりだ。姉貴がいない。彼女は部屋を隈なく見たが、姉貴の遺体はなかった。

人が死ぬ。犯人は誰だ?次も誰かが殺されるのか?

俺がそんなことを考えている時だった。

玄関から足音が聞こえた。俺は反射的に玄関へと足を進めた。

そこにいる誰かは絶対に怪しい。彼女も俺の後ろからついてきている。

この屋敷には、俺たち二人しかいない。今玄関へ来た人物こそ、犯人ではないだろうか。この考えは正しいはずだ!

俺たちは玄関へと着いた。そこには人間がいた。

しかし、そこにいた人物は、俺の想像を超えた人物だった。

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