髪飾り

兄貴たちは俺と使用人を残して萌黄の捜索へ行った。

残された俺たち二人は見つめ合った姿勢で何も言わずただ立っていた。

使用人を初めてまじまじと見る。美人で胸が大きめだ。一見おとなしそうな雰囲気だ。

「海翔さまは行かれなくてよろしいのですか?」

美しい声で言われた。

「いや、俺はちょっと具合が悪くて。」

「お薬をお持ちしましょうか?」

ああ。やっぱりメイドさんってこうだよな~俺は幸せ者だ。

「そういえばさ、なんて呼べばいいかな?」

俺は彼女に聞いた。

「何と呼ばれてもかまいませんよ。でも、そうですね。」

彼女は何やら考えているようだ。

「それではイトとお呼びくださいませ。」

「イト、、OK!」

俺はわざと大声で笑顔で言った。この島に来てから初めて笑った気がした。こうでもしないと頭が混乱しそうだった。

イトは美しく笑った。俺は初めて彼女の笑みを見た。

「それでは、この辺で失礼します。」

イトはスカートの裾を軽く持ち上げていった。とても礼儀正しい。

残された俺は兄貴たちと萌黄を探そうと思い、屋敷の玄関へ向かった。

玄関へ行く途中、俺は廊下に何か落ちていることに気づいた。なんだろう。

髪飾りだった。しかもこれは泉姉貴がいつもつけているものだ!

確か泉姉貴はこの島に来る前に行方不明になっている。なぜここに髪飾りなんてあるんだろう。もしかしてこの島に、、

そこまで考えてから考えるのをやめた。不信感と恐怖感が胸中を渦巻いている。

もしも泉姉貴がこの島にいるとしたら、犯人である可能性が高い。親父の死に方はおぞましかった。この世のものではないような死体だった。親父はいつ殺されたのだろう。自分なりの推理をしてみよう。凶器は何だろう。屋敷にある農具か何かだろう。いつ死んだのだろう。親父は今朝から俺たちの前に姿を見せていない。死体が見つけられたのは10時近くだった。あの時俺は親父の腕時計を見たのだ。俺たちが最後に親父を見たのは昨日の午後10時だった。ということはこの12時間の間で親父は死んだことになる。親父は昨夜、大広間の左の部屋で何をしていたのだろう。そしていつ殺されたのだろう。

考えても何もわからない。もしかしたら自分も殺されるのではないだろうか?兄貴たちは大丈夫かな?

不安がますます募っていく。分かっていることは泉姉貴の髪飾りが落ちていたことだ。とりあえず推理好きな姉貴に報告しに行くか。

海翔は館の外へと出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る