ここから先、感染拡大につきマスク着用のこと

本日、仲間入りしました

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。


 ついに、世界保健機関( World Health Organization:WHO)が「世界的流行パンデミックと表現できるとの判断に至った」と表明。この瞬間、世界中が「えらいこっちゃ」と震撼した。


 とは言え、WHOの表明一つで新型ウィルス自体に劇的な変化が起こるハズもなく。



 3月に入って、アメリカ国内の感染者数が瞬く間に増加した。

 現在(アメリカ時間、3月12日)までに、国内50州のうち46州で感染が報告されている。『非常事態宣言(State of Emergency)』を発令する州の数も増え続ける一方だ。


 そして、本日、バージニア州も「非常事態宣言が発令された州」の仲間入りを果たしてしまった。

 巨大空港があるワケでもなく、外国からの観光客などほとんど見かけないアメリカ南部の州にまで、パンデミックの波は着実に押し寄せている。


 州内の感染者数は、現時点で17名。

 私が住む地域の感染者は4名。そのうちの2人は、夫婦で海外旅行から帰国した直後に感染が判明したそうな。彼らの旅行先は、なんとエジプト。どうやら、複数の感染者を出したことで大きなニュースとなった『ナイル川クルーズ』に参加していたらしい。


「こんな時期に海外旅行に行くなんて、非常識やわ! しかも、帰国便の中で症状が出たって……はた迷惑もエエとこやん! キミ達の辞書では『自己責任』と書いて『ジコチュー』って読むんとちゃう? えーかげんにせーよ、アメリカ人!」

 ……と、ニュースを見ながら怒りのツッコミを入れてみたものの、全てはこの国の政策のマズさが原因。おバカな大統領を野放しにしていたおかげで、アメリカは手痛いしっぺ返しを食らうことになった。

 医療関係者の助言や介入をことごとくね付けた彼は、「僕らは大丈夫! だって、インフルエンザみたいなウィルスなんだよ〜? だったら、暖かくなったら自然消滅するはずだよね〜」などと、危機感のカケラもない脳天気なスピーチをしつこく繰り返し続けた。

 その結果、ここまで国内感染が拡大したのだから、責任は重大だ。頼むから、ちゃっちゃとホワイトハウスを明け渡す準備をしてくれたまえ。



 おバカな国のトップに頼ってはいられない。こうなったら、自分の州だけでも守らねば……と、感染者数が増えつつある州の知事達がこぞって非常事態宣言を出したのも、うなずける。


 集団感染を防ぐため、全ての授業をオンラインでの『リモートスタディ』に切り替える学校が増えている。私が住む町にある大学でも、明日から教室での授業は全て中止となり、オンラインでの授業になることが決定したようだ。

 明日は、地域のほとんどの学校が施設の消毒を実施するため休校となる見込みだ。


 アメリカ各地のスーパーや小売店では、消毒用アルコールと除菌用ジェルやウエット・ワイパーが姿を消すという現象が起きている。

 我が家には犬と猫がいるため、常に除菌用ジェルは欠かさずストックしているし、私が花粉症持ちなので、春になる前にマスクを大量に買い込んである。が、日頃から「肌荒れがイヤだから」とノン・アルコールの除菌用ジェルを使っていた友人達は、相当焦ったらしい。


 医療用マスクについては、元々、販売している店舗が少ないため、あっという間に売り切れたようだ。

 インフルエンザにかかろうが、マスクなど付けないアメリカ人。マスクの正しい装着法など知る由もなく、「口元を覆うだけでなく、鼻もスッポリ覆いましょう」と実演映像を流すニュースを見た時には、思わず笑ってしまった。



 『日本ではトイレットペーパーやティッシュペーパーの買い占めが行われて大変やねん』と姉がLINEでボヤいていたが、今のところ、アメリカのスーパーにはペーパー類は山ほど積まれている。

 意外にも、缶詰類の陳列棚が空っぽだったのには驚いた。バージニア州では、ハリケーンなどの悪天候時に頻繁に「非常事態宣言」が発令され、その度に食品と飲料水の買い占めが行われる。おそらく、今回の宣言を聞いた州民が、「パブロフの犬」よろしく保存食品を買い漁ったものと思われる。


 

 大都市でない限り、車での移動が基本のアメリカ。大勢の人と接触するような場所に出向かなければ、感染の危険はググーッと下がるはず。


 なのだが……


 現在、相方は、ある大規模プロジェクト会議に参加すべく、西海岸に出張中。国内各地から参加者達が集う大きな会議なのだとか。

 間の悪いこと、この上ない。世界的な非常時に、アメリカ国内のみならず、世界各地で様々な行事が延期や中止となっているというのに……


 とは言え、非常時に奔走するのが相方の本来のオシゴトなので、仕方がない。

 「外出先で色々なものに触れた手で、顔とか口元とかやたらと触っちゃダメっ! 石鹸での手洗い、絶対に忘れんとってね!」と言い聞かせ、マスクと消毒用ジェルを大量に持たせて送り出した。

 帰宅予定は来週末。が、常の如く予定は未定。期待せずに待つことにしよう。

 

 相方よ。今回は出張先からのお土産は要らないからね。

 頼むから、だけは持ち帰らないでおくれ。



【追記】

 翌日、13日。バージニア州の感染者数は30名に膨れ上がった。

 州知事は今後少なくとも2週間、Kindergartenキンダーガーテン(=日本の幼稚園年長にあたる)から大学に至るまで、州内全ての学校を閉鎖すると発表。日本同様、仕事を持つ母親達が悲鳴を上げた。アメリカでは(州ごとに規定の年齢があるが、ほとんどが)12歳以下の子供を一人にしておくことは「育児放棄」「児童虐待」と見なされ、保護者が逮捕される事態に発展することも少なくない。


 私が住むエリアの大手スーパーからトイレットペーパーが姿を消した、と友人から連絡が入ったのは、午後を少し回った頃のこと。友人の娘(大学生)が、スーパーでトイレットペーパーを巡って本気の殴り合いを始める大人達の姿を目にして、恐怖に震える声で電話をしてきたそうだ。

「アホやね。銃を携帯しているかもしれへん相手に殴りかかって撃ち殺されても、『正当防衛』とみなされて、殺人事件にもならへんのにね」

 電話口で冷静な感想を述べてしまった自分に、思わず苦笑した。

 バージニア州は銃規制がゆるく、日常生活の中で銃を携帯している人達に遭遇することも少なくない。これについては既出のエピソード『お嬢さまにピンク色はいかが?』をご参照あれ。


 万が一、外出禁止令が発令された場合、アメリカ人の性格からして暴動が起きるのは避けられないだろう。「店舗を襲って品物を奪え!」「隣人を襲ってトイレットペーパーと食料を奪え!」となる可能性もあると考えて、銃と弾を買い込む人々も現れているのだとか。国民性の違いとは言え、アメリカ人よ、もう少し冷静になっておくれ。

 何はともあれ、必要な買い物は昨日のうちに済ませておいたので、しばらくは人混みに近づかないようにしよう。

 

 そして、夕方近く。


 相次ぐ非常事態宣言に押されるような形で、ようやく、おバカな大統領が「国家非常事態」を宣言。政権の遅すぎる対応については「僕の責任じゃないからね」と言い放った。

 現政権のトップがこれだもの。


 アメリカの迷走はどこまでも続く。


(2020年3月13日 公開)

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