第一章:旅と物語の始まり
プロローグ:暖かな暖炉の傍で
赤々と燃える暖炉からは暖かな風が流れ、その傍らで母は椅子を揺らしながら膝にのせた猫を優しくなでる。まだ幼き少女は赤い薪の舞台で爆ぜては踊る炎のダンスを眺めながらマグカップに口をつける。すぐに口の中にチョコレートの甘さがミルクの優しさに包まれて広がる。
私はこの時間が大好き。
今日はどんなお話が聞けるでしょうか。
お空に浮かぶ大神殿のお話でしょうか?それともドラゴンさん達の住む燃える土地の話でしょうか?海の底に沈む遺跡の話なんて日もありました。
とにかく私はお母さんの聞かせてくれる物語が大好きなのです。
その中でも一番なのはお母さんの旅の話。私が生まれるよりももっと前にお母さんが旅してまわった時の色々なお話。
お母さんはとっても色んなところを旅してきたのでお話はとっても長くなってしまいます。
実は私まだお母さんのお話を全部聞けたことってないんですよね。いつも暖かな暖炉と美味しいココアが私を優しく夢の中に連れて行ってしまいます。
なので続きからお話を聞くこともありますし一番最後の部分から聞いてしまったこともあります。
でもお母さんが昔のお話をする時は決まって嬉しそうなんですよ。だから私はお母さんの旅はとっても素晴らしいものだったのだと思います。
そう言えば私やお母さんの名前にあるウォーカーってのは世界を歩いてまわるご先祖さまが頂いた「ほまれある」名前なのですって。
なので私のお家の子はみんな旅にでるのです。だからお母さんは私もいつか旅に出るのよって言います。私も旅をするのが楽しみでなりません。
私のお家では「しきたり」っていうやつで15才の誕生日に旅に出ることになっているんです。まだまだ私にはとっても先のこと。
だからね、お母さんの旅の物語はいっつも同じ日、お母さんの15才の誕生日のある雪解けの日の朝から始まるの。
私のお母さん、アリス・ウォーカーはね、こうやって話し始めるのよーーー
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