第36話 36
「おいしい! エクレア大好き!」
エクレアさんは勝利のご褒美のエクレア食べ放題を満喫している。
「シュー、良い嫁を貰ったな。」
もちろんエクレアを作ったのは、エクレア職人のエリザである。
「やったー! お母さまのお許しは得たわよ!」
エリザ、勝ち組女の雄叫びをあげる。
「エクレアさんは、エクレアを食べさしておけば大丈夫。」
シューとエリザは母親代わりのエクレアさん公認の中になった。
「そうね。考えてみれば、私は歳をとらないから若いままだし、成長したシューとならナイスカップルに見えなくもないわね。」
お皿の大量のエクレアを食べ終えたエクレアは、ふと、考えが浮かんでしまう。
「シュー!? やっぱり私より、この女の方がいいのね!? 浮気者!? 偽善者!? ゲス不倫男!?」
エリザはシューに対して疑心暗鬼になる。
「ええ!? なんでこうなるの!?」
シューは、エクレアをエクレアさんのお皿に大量に盛る。
「わ~い! エクレアだ! パク! おいしい! シューとエリザの結婚を認めよう!」
エクレアさんの災いの口を塞ぐには、エクレアが1番である。
「これで私とシューは夫婦! さあ! シュー! 結婚式を上げに教会に行くわよ!」
「うわあ!?」
エリザはシューの手を引っ張って、修道院の教会に駆けこむ。
「エクレアさんにはエクレアを食べさしているから邪魔は入らない! 神父様! 結婚の議を行ってください!」
「早くしろ! 私は新妻になるのよ! 早くしないと、修道院に火をつけるわよ!」
「は、はい。」
エリザの脅迫に屈した神父さん。
「シュー、あなたはエリザを妻としますか?」
「はい。誓います。」
こうしてシューとエリザの結婚の儀が始まった。
「エリザ、あなたはシューを夫としますか?」
「はい、誓います。」
シューとエリザは愛し合って、結婚した。
「それでは誓いのキスを。」
「はい。」
向かい合うシューとエリザの心臓はドキドキしている。
「シュー。」
「エリザさん。」
瞳を閉じて近づいていく二人。
「シュークリームさん!? シュークリームさん!? 一大事です!?」
そこに街の兵士フェルナンデスが慌てた様子で駆けこんできた。
「フェルナンデスさん!?」
「邪魔者フェルナンデス!?」
幸せ過ぎたエリザは、毎回バッドタイミングで現れる邪魔者フェルナンデスの存在を忘れていた。
「シュークリームさん! 事件です! 街の建物が崩壊して多くの人々が生き埋めになっているみたいなんです! 直ぐに助けに行かないと!」
「え? ええ!? 助けて!? エリザさん!?」
フェルナンデスはシューの手を引っ張り建物の崩落現場に連れて行こうとする。
「・・・私の新婚旅行は・・・私の甘い新婚生活は・・・私とシューの子供は、男の子ならプチ・シュークリームで略して、プチ・シュー。女の子なら、エクレアさんから名前を頂いて、プチ・エクレアにしようと決めていたのに・・・。」
花婿を男のフェルナンデスにさらわれて、何が起きたのか理解できずにボーっとするエリザ。
「ゆ、許さん!!!」
少しすると固まっていたエリザが、怒りに任せて覚醒する。
「フェルナンデスの疫病神! 私はシューの奥さんだぞ! シューを取り戻すわよ!」
エリザもシューとフェルナンデスを追いかけて教会の外に出て行く。
「こ、これは!?」
修道院の教会の外に出たシューたちは恐ろしい光景を目にする。
「みんなが石になっている!?」
勝利のエクレア食べ放題パーティーをしているはずの宴会会場は凍りついていた。
「シュークリームさん!? これはどういうことですか!?」
フェルナンデスもビックリしている。
「シュー!」
「エクレアさん!? エクレアさんは無事だったんですね!?」
みんなが石になっている中で、半透明の実体の無いエクレアさんだけは石化しないで無事だった。
「当たり前だ! 私の体は天界にあるからな。」
エクレアさんはスケスケであった。
「いったい何があったんですか?」
「あいつらの仕業だ!」
エクレアが視線を送る先に女が3人立っていた。
「やっと見つけた。」
女達はシューたちに寄ってくる。
「おまえたちは何者だ!?」
「私たちはゴルゴ―ン3姉妹。」
「ゴルゴーン3姉妹!?」
新たな物語の始まりの予兆である。
「長女のステンノ―。」
「次女のエウリュアレー。」
「三女のメドゥーサ。」
何とも言えない冷たい冷酷な雰囲気が漂うゴルゴ―ン3姉妹。
「おまえたちの目的はなんだ!? みんなを元に戻せ!」
シューは不気味なゴルゴ―ン3姉妹にも怯まない。
「私たちの目的? それは・・・あなたよ。」
「ぼ、僕!?」
ゴルゴ―ン3姉妹の目的はシューだった。
「この石化した堕天使たちを元に戻せって? それは無理。だって、私たちは人間なんかに倒されないから。」
「そうそう。なんなら、あなたも石にしてあげましょうか? アッハッハッハ!」
笑う三女メドゥーサ。
「ダメよ。私たちは、この人間の男を連れて帰るのが使命。」
長女ステンノーが妹たちをたしなめる。
「ポセイドーン様がお待ちなんだから。」
「ポセイドーン!?」
その名前を聞いて、シューだけでなく、エクレアさんも驚いた。
「そうだ。我々の主は海王ポセイドーン様だ。」
「光栄に思うがいい。ポセイドーン様が、たかが人間である、おまえに興味を持たれた。」
「恐れ多くも、ポセイドーン様が謁見して下さるというのだ。」
「さあ、一緒に海底の世界に行こうか。」
ゴルゴ―ン3姉妹は、あくまでもシューをポセイドーンの待つ、海底に連れて帰るつもりである。
「嫌だ! 誰がおまえたちと一緒に行くものか! みんなを元に戻せ!」
シューは石化した仲間たちを元に戻すように要求する。
「私たちに歯向かう気? おまえも石にしてやろうか?」
ゴルゴ―ン3姉妹は敵を石化する能力を持っている。
「シュークリームさん!? どうしましょう!? 私は石になりたくありません!?」
「僕だって、石になるつもりもありません。なんとかして、目の前の3人を倒すことを考えないと。」
シューは、ゴルゴ―ン3姉妹と、あくまでも戦うつもりだった。
「邪魔者フェルナンデス! シューを返せ! 私はシューの妻だぞ!?」
そこにタイミング悪く、教会からエリザが飛び出してきた。
「あれ? え? なに!? どうなっているの!?」
エリザも教会の外の異様な光景に気づいた。
「エリザさん!? 危ないから教会の中に戻ってください!」
しかしゴルゴ―ン3姉妹の耳にエリザの叫び声は聞こえてしまった。
「そうか、その女は、おまえの妻か。」
「ポセイドーン様は言いました。あなたを連れてくるようにと。」
「でも方法はおっしゃらなかった。クッククク。」
ゴルゴ―ン3姉妹に嫌な予感がする。
「石になれ! ミネラリゼーション!」
ゴルゴ―ン3姉妹は恨めしそうに輝く瞳でエリザを睨んだ。
「キャアアア!?」
みるみるうちにエリザの体が石に変わっていく。
「エリザさん!?」
「・・・。」
完全にエリザは石にされてしまった。
「エリザさんに何をした!? 早く元に戻せ!?」
シューはゴルゴ―ン3姉妹に詰め寄る。
「なぜ? なぜ戻さないといけないのかしら?」
「おまえが悪いのよ。この石は海底に連れていく。」
「返してほしかったら、海底まで追いかけてくるんだな。」
エリザの石は、ゴルゴ―ン3姉妹の元に移動していく。
「エリザさん!?」
シューは、ただ何もできずに見ているしかできなかった。あの時と同じだ。エクレアさんがアダイブから幼かった自分を守るために命を絶った時と同じだった。
「それでは、さらばだ。」
「今度会う時は、海底で会いましょう。」
「その時は、石にしてやるわ! クッククク!」
ゴルゴ―ン3姉妹は水になって消え去った。
「エリザさん!!!」
シューが叫ぶエリザの名前は、どこまでも空に響いた。
つづく。
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