第20話 20

「エリザさん。」

エリザはリザードマンに剣で斬られ死んでしまいました。

「エリザさん。」

深い眠りについたエリザを起こす声が聞こえる。

「誰? 私を呼ぶのは?」

エリザが目を開ける。

「シュー? シューなの?」

エリザの前にはシューがいた。

「エリザさん。」

「ああ、シューの声が聞こえる。やっぱり私、死んだのね。」

エリザは力無く、改めて瞳を閉じる。

「エリザさん!? 起きて下さいよ!?」

「キャア!?」

シューは眠りにつこうとするエリザを揺さぶり起こす。

「シュー!?」

エリザは目の前のシューに驚く。

「シュー、あなたも死んだの?」

「生きてます!?」

エリザは目覚めたばかりで、少し寝ぼけている。

「エリザさん、遅れてすいません。」

「シュー! 私が大変な時に、どこに行ってたのよ!?」

「ちょっと冥界まで。」

「え? 冥界?」

エリザは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。

「やっぱり私が死んだのね!? そうよ! そうに違いないわ!」

取り乱し暴れるエリザ。

「落ち着いてください!? エリザさん!?」

暴れるエリザを抑え込もうとするシュー。

「いや!? 離して!? 離しなさい!? シュー!?」

「確かにエリザさんは死にました!」

「はい?」

エリザはシューから自分は死んだと聞いて動きをピタッと止める。

「ですが、僕が生き返らせました。」

シューのブラッディソードは蘇生を司る天使ガブリエルの血を吸っている。

「死を司る天使よ! エリザを生き返らせたまえってね。」

シューは自分の意志で死人を生き返らせることができる。

「・・・ちょ、ちょっと! 私、死に過ぎなんじゃない!?」

エリザは拳をあげて怒る。それもそのはずである。エリザが蘇ったのは2回目だからだ。

「すいません!? すいません!?」

シューはエリザをなだめて、何とか落ち着かせる。

「遅れてすいませんでした。エリザさん。」

「シュー!」

シューの優しい笑顔にエリザはシューの胸に飛び込み泣き出す。

「シュー!? 怖かった!? ウエエエ~ン!」

「もう大丈夫です。僕が側にいますから。」

二人だけの世界にいるシューとエリザ。

「ギャア!?」

しかし、外では魔物が街を破壊し続ける音が聞こえ、避難している教会も振動で窓ガラスが割れたりして、エリザは悲鳴をあげる。

「エリザさんは、ここから動かないで下さい。」

「え? シュー、あなたは!?」

シューはエリザを離し立ち上がり背中を向ける。

「僕が外の魔物を倒します。」

シューの表情に険しさは無い。ただ自分に自信のある顔をしていた。

「エリザさんは、美味しいエクレアを作ってくださいね。きっと食べたがる人がいるから。」

シューはエクレアを思い出して、エリザに優しく笑いかける。

「わ、わかった。」

エリザの女の第六感が、シューに少しの違和感を感じ取るのであった。


つづく。

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