第26話 知ってるよ

 今日も紙ひこうきを飛ばす。俺の部屋の窓から紙ひこうきが飛ばない日は無かった。

 世間は紙ひこうきの電子化が進んだり、紙ひこうきの受け取り可否を選択できるようになった。受け取り可否は俺が提案したことが採用されたのだ。欲しくない時だってある。だけど必ずまた欲しくなるんだ。人は一人では寂しいからね。


 千佳からあの後、明かされた。

「本当は紙ひこうき届け屋さんでしょ?知ってるよ。」

「え?知って…。」

「だって私も勇気がなくて紙ひこうき届け屋さんに頼ろうとしたの。そしたらお届け出来ませんって。」

 紙ひこうき届け屋に思いを送った場合に限って送れない通知が来ることになっていたらしい。紙ひこうき届け屋と知らずに送り続けて思いを無視してると思われないようにするための配慮らしかった。

「紙ひこうき好きじゃないって言いつつ、職業にしてるんだから、やっぱり本当の本当は好きなんでしょ?」

 そうなのかな。紙ひこうき届け屋にはなるもんだと思ってて深く考えずになっていた。大っ嫌いにはなれなかった紙ひこうき。それが物語っているのかもしれない。今は…。

 俺の前で笑う千佳が戯けたように口を尖らせる。

「紙ひこうき届け屋だって内緒にしておくなんてひどいなぁ。」

 不満げに訴える千佳に「ごめん。何度も言おうと思ったんだ」と謝った。そしたら千佳は笑うんだ。

「私も途中で知ったけど知ったこと内緒にしておいたから、おあいこ。」

 千佳は紙ひこうきの受け取り拒否を選択した。恋人が紙ひこうき届け屋なのに営業妨害じゃない?って笑ったら千佳はこう言った。

「一番届けて欲しい人からもらえないんだもん。」

 そんなこと言うなんてと、いたずらっぽい笑みを浮かべて提案する。

「メモ帳の紙ひこうきを送るよ。」

「ううん。やっぱり口で言って欲しい。」

「勇気がないからダメ。」

「けちんぼ。」

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