第2話 飲み会

 裕太がセッティングしてくれたのは大学の同級生とその友達で全て同じ歳の二十歳だ。俺が知っているのは裕太だけで、他のメンツは男の方も知らない。まだまだ大学二年生。同じ歳のはずなのに若くて遊び慣れている雰囲気に場違いの気がして早くも逃げ出したかった。

 男女共に五対五で、俺と同じように場違いと思っていそうな隅に座っていた女の子。その子の前に座る。裕太も俺を見つけて手を振っている。それでも幹事の裕太は真ん中に座って隣ではなかった。

 メンバーが集まったようで自己紹介から始まった。

「それでは俺から。佐竹裕太、二十歳。酒が飲めるぜ!いえーい!お願いします!」

 どんな自己紹介だよー!と周りは盛り上がっている。ため息をつきそうになって前を見ると俺の前に座っている子も顔を固くしているのが分かった。

 裕太から俺とは逆の方に回っていく自己紹介。俺が後の方になるように裕太から俺への優しさだと思う。それが逆にプレッシャーだ。みんなはしゃぎながら自己紹介をしていて同じように出来るわけがなかった。裕太はいい奴だけどノリは合わない。

 俺の前の子の番になって小さな声がかろうじて聞こえた。

「川島千佳です。」

 どんどん俯いていく顔にセミロングの髪がさらさらとこぼれた。俯いていくのを見て俺の隣の奴がからかった。

「千佳ちゃん可愛い顔、上げてよ〜!」

 俺は苛立ちから素っ気なく言い放つ。

「俺、大坪です。以上。」

 白けた空気には慣れている。隣を見もしないで「次、お前だろ?」と呆気に取られていそうような隣の男に声をかけた。

「あ、あぁ。俺、柳沢隆史。」

 ぼそぼそと言った言葉にお前の方が小さい声だろと言ってやりたかった。ただそこまでの勇気は俺の中のどこを探しても持ち合わせていない。

 沈んだ空気を裕太が仕切り直す。

「さぁさぁ。乾杯しよ!乾杯!」

 裕太には少しだけ悪かったなぁと思いつつ片手をあげる。みんなももちろん上げていて一斉に「かんぱーい!」とグラスを重ね合った。俺の前に座る子も控えめにグラスを合わせた。唇が微かに「乾杯」と動くのが見えた。

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