産まれてきた子は(6)



 伊吹とほのかが出て行くのを見届けると一凛と颯太は顔を見合わせた。


「颯太さん、その子はそうなのね」


 颯太はまっすぐに一凛を見つめたままうなずいた。


「その子を抱かせて」


 颯太は赤ん坊を一凛の腕に抱かせた。


 小さな赤い顔が胸の中に収まる。


 一凛は顔をほころばせ、柔らかそうな頬を指で突いた。


 そしてそっとその周りの毛布をずらす。


 りんごのような顔を支える赤ん坊の首から下は濃い体毛で覆われていた。


 人の子としてには濃すぎる体毛は赤ん坊の父親が誰なのかをはっきりと物語っていた。


 一凛は颯太を見上げる。


「颯太さん、ありがとう」


 颯太が少しだけ笑ったように見えたのは、その顔の傷がわずかに動いたからだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る