再会(4)

 


 研究を進めれば進めるほど、類人猿と人間の差が微々たるものだという現実に驚かされたが、逆にではそれらの壁をとっぱらって、人間もゴリラもチンパンジーもみんな一緒だと同じ檻の中にいれたら、人間は人間、ゴリラはゴリラで寄り集まるのが動物の本能でそれが自然の摂理だった。


「あ!あれ武だ!」


 ほのかはハンドルに胸を押し当てフロントガラスに顔を寄せる。


 肩に小さな女の子を乗せた男性が横断歩道を横切っている。


 その横にはお腹の大きな女性が並んで歩いている。


「うちらの同級生でパパやママになってる人って結構いるよね」


 ほのかはまだ彼らの姿を追っている。


 信号が青になった。


 それに気づかないほのかを一凛はうながす。


「そう言えば、小学校のときの愛ちゃんって覚えてる?」


 それからほのかはひとしきり昔の同級生たちの現状を話し出した。


 その中に依吹のことはなかった。


 依吹ももしかしたらもうパパになっていたりするのだろうか。


 優しい人だったから素敵な奥さんがいても不思議ではない。


 一凛はそっと自分の唇を噛んだ。


 一凛のファーストキスの相手だった依吹。


 今となって思えばハルと同様懐かしい想い出だ。


 ほのかに依吹のことを聞いてみようかとも思ったが止めておいた。


 なんとなく想い出の形はそのまま残しておきたいと思った。





 帰国してからの数ヶ月間は懐かしさに浸る余裕もないほど慌ただしく過ぎていった。


 新しい環境にようやく慣れた頃、一凛はあるプロジェクトを頼まれた。


 動物園の環境が与える動物たちへのストレスを調べ、その改善策を提案するものだった。


 とりあえずと、調査させてもらう動物園のリストを手渡される。



 その中に依吹の動物園の名前があった。



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