いまそこに風が吹いているから(2017/06作)

 地球上の5人に1人は宇宙人である。しかし多くの人にとっては、あまりピンとこない数字だろうと思う。公式に宇宙人の存在が認められ、地球に棲み始めるようになったのはもう300年も昔のことだが、いかにも宇宙人らしい宇宙人はほとんどいないため、街を歩いていてもそれらしい姿を見かけることはないだろう。だから宇宙人を自分の目で直接見たことがないと思っている人も少なくないのだ。そもそも宇宙人にはさまざまなタイプがあり、地球人と全く見分けがつかないような宇宙人や、小さすぎて見えない宇宙人、そして透明な体をした宇宙人などもいる。なので5人に1人と言っても、そうした分かりづらいタイプを全て含めた場合の割合であるため、あまりピンとこないのは当然なのだ。また、地球に棲んでいる宇宙人の大半は、地球人と全く見分けがつかないタイプの宇宙人なのだが、こうやって話をしている私もその1人なのである。


 私の場合は、64分の1が宇宙人の血であり、はるばる地球へやってきた宇宙人の7世代目にあたるのだという。国際的な基準では、血の濃さが128分の1までが宇宙人とされているため、私の子どもまでは宇宙人だが、私の孫からは地球人という扱いになるようだ。でも地球人と宇宙人には法律上の区別はないため、そのことは特に知らなくても問題はない。確かに、混血の宇宙人の中には念力やテレパシーを使える者もいて、たまに話題になることもあるが、元々そういう能力を持つ地球人もいるため、その原因が宇宙人の血によるものかどうかはよく分からない場合が多いのだ。ちなみに私は、他人の血液型を当てるのが得意であり、相手が女性なら大抵言い当てることができる。なぜ女性なのかというと、好きになる女性が、決まってB型かAB型だからという理由もある。相手の女性が、自分の好きなタイプかどうかさえ分かれば、あとはAかOか、またはBかABかの2択になるので、4つの選択肢から選ぶより当たる確率は高くなるのだ。


 そういえば子供の頃、私のことを宇宙人だと言い当てた女の子がいて、その子のことを好きになったことがある。なぜ宇宙人だと分かったのか質問すると、女の子が私をみつめながら「いまそこに風が吹いているから」と言ったのをよく覚えている。私は何度もその言葉を思い返しながら、風に吹かれている自分や、それを眺めている彼女のことを想像した。でも最後まで、君が好きだとは言えなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る