第十八話

 わたしはまいしんした。

 うつぼつたる希望とともにばくしんしていた。

 国家社会主義ろー労働者党本部前にてろーていこく総統を暗殺したのちベルゼブブときよくてんせきのわたしはろーていこく特殊部隊の猛襲をまぬかれんと四十一世紀にほうてきされた実験施設のはいきよへととんざんしていた。ほうはくたる大宇宙をほうこうする三個の監視衛星による精緻なる三次元超高精度地上探査システムによって『スペースデブリ』を墜落させたわたしの位置もしゆもなくしゆんべつされるはずであったからだ。新型大量破壊兵器の実験によって異常なる電磁波が発生しているはいきよにてようやあんしたわたしたちはくだんのとおり漆黒の魔法陣を発生させきようらんとうぎんばえによる暗黒のなかにまきまれ刹那のうちにろーていこく内最大級のいつ拘置所かいわいへと時空を超越した。西南と東南にたる鉄扉のしようりつするいつ拘置所ではすでに英吉利いぎりす人過激派がせんどうする『反ろー人解放戦線』がはんらんじやつし男性用拘置施設へとちんにゆうするために西南の鉄扉を爆破していたようであった。

 わたしたちにとってはぎようこうでもあった。

 反ろー人解放戦線による囚人きゆうじゆつ計画が進捗しているなかわたしたちは三十六世紀に開発された爆薬INRIを仕掛けて南東の鉄扉を爆破しいちれんたくしようのあなたが収監されている女性用拘置施設へとまいしんした。きようかんの男性用拘置施設とはかいしているためにせいひつなる女性用拘置施設ではまだはんらんは勃発しておらず男性用拘置施設のそうじようそくぶんされるくらいであった。てつ急をさとったわたしたちはしゆもなくちようきゆうの防弾がらに幽閉されたまんしんそうのあなたの独居房を発見し破壊力のきようじんすぎる爆薬INRIをごうだけ仕掛けて虹色の防弾がらを爆破した。めいもうたる煙霧のなかでおうしているあなたに肉薄しそんきよしながらすすまみれの指先を差延べるとかつて東京都千代田区の古書店でってからほうはくたる時空をりようしてついに到達するまでの記憶をほうふつとしぼうとして落涙しごうぜんとしてどうこくしそうになった。

 歓喜の時間は刹那であった。

 漆黒のわたしの指先を掌握した途端あなたはそうろうたるあしもとに出現した魔法陣から出現したきようらんとうの古代文字群のふうまきまれ元気でねという一言をのこしてしゆつこつとして消滅してしまったのである。きようがくしたわたしは刹那かいなる陰謀にまきまれたことに勘付きほうじようなるベルゼブブをへいげいした。灰褐色のマルボロをくゆらせていたベルゼブブはすまんとささやいてつづけた。いわくあんたの恋人は西暦二〇〇八年からおよそ二千五百年後死刑をまぬかれたあんたとかいこうできるかわりにその刹那昇天するように天使たちと契約していたんだ。これをさとればあんたは愚行を犯さなくてすむだろうと天使たちは考えたんだろうが無論おれたちはそれを秘密にしてあんたと契約した。ほんとうにすまなかったなと。わたしはげつこうした。えいごう不滅の神霊にはいするかたちでぎようなる両腕によりあなたの消滅した場所をちようちやくしたわたしはふんまんやるかたないようにほうこうした。

 いわくもう一度契約してくれと。

 いわくおまえたちの魔王とやらに会わせてくれと。

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