Chapter10 少女の為に


カルミナから念を押されたのは、その効果が分からないうちはクラウンネーム持ちの人間には下手に接触しない事。

[覇気]が効かないからと言って、俺に他の能力まで効かない保証は無いという事だった。


カルミナのように、多くの人を同時に支配するような能力は珍しいみたいだ。

ほとんどは、個人の能力向上タイプが多いらしい。

クラウンネームが、能力を使った時にはオーラが見える。カルミナのように能力を自分で止められないようなタイプは、常にオーラが見える。


恐らくカルミナも、あまりこの力の類に関しては、あまり詳しくないのだろう。

話を纏めるとこんな感じだった。


「も、もしや、この俺の死ねない体質はクラウンネームでは? 俺が、この世界に選ばれし人間の1人だったと…」


俺は一歩後ずさりし、厨二病さながらに、それっぽいポーズを決めた。


「うん? 違うよ?」


カルミナはキョトンとした目で言った。

笑顔で即否定かよ。


「だってKが切られた時、オーラは出てなかったよ!

んーと、魔法に近い感じがしたから、私は絶対障壁フルガードだって思っちゃったけど、魔法とも何か違うんだよねぇ…

詠唱も無しで、魔法陣も見え無い魔法なんて、見た事も聞いた事もないもん。」


カルミナは身振り手振りを交えて説明した後、とても難しい顔をしている。


なるほど。 神の仕業でも魔法でも無いというのなら俺自身が神になった…これはワンチャンあるな…


「案外、呪いの類いかもねぇ〜」


カルミナは満面の笑みを俺に向けていた。

笑顔で怖い事を言わないでくださいますか?


「そ、そういえば、さっき兵士さんが襲われたって言ってただろ? しかも相手は1人だって…

それってもしかして…」


俺は少し焦った表情で話題を変え、少し考えるようにポケットに手を突っ込んだ。


「私もそう思う。第10騎士団は、イルム騎士団の中でも強者揃いなの。 たった1人にいいようにやられるなんてクラウンネーム持ちしか考えられないよ。

だから、団長の回復を待って詳しく聞くつもりだよ。」


カルミナも少し考えこむような表情で話した。


「あぁ、やっぱそうだよなぁ…」


一個小隊を1人で倒してしまうような奴から、俺がカルミナを守らなきゃいけないなんて、いったいどうすればいいのだろう。

死ねないからと言って相手が倒せる訳ではない 。

いくらなんでも素手ではダメだろう。

いくら旅立ちの初期設定の勇者でさえ、こんぼうぐらいは持っているはずだ。


「なあ、カルミナ…ここで俺に剣を教えてくれるような人っているのか? いや、えっと…

カルミナを守る為にも、攻撃手段はあったほうがいいと思うんだ。」


俺は話題と気分を変える為に、少し笑顔でカルミナに話しかけ、剣の素振りのジェスチャーをした。


「守るって、目の前で言われるとなんか照れるね…

うん、いるよ。 ヴァイスにお願いしてみるね!

ヴァイスは結構強いんだから!

あ、あと…うちの騎士団には…もう1人…」


カルミナは少し頬を赤く染め、1度視線を外した。

そしてそれを誤魔化すように真っ直ぐと俺を見た。



その後、カルミナの計らいでヴァイスさんとも合流し、剣の練習相手を快諾してもらえた。

俺だって、少しでも剣が振れるようにならねば!


俺がカルミナを守る。という事を有言実行してみせる。


最後にカルミナがいったクラウンネーム。

[剣聖] がこのイルム王国騎士団にいるようだ。


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