第36話 鼻つまみ者

 いきなり人の鼻をつまんでくるやつがいたら、そいつは鼻つまみ者だろう。

 名実ともに鼻つまみ者である。


 なかなか「名実ともに」という人はいない。

 「世界の」と冠されてる人はだいたい名実ともに「世界の◯◯」なんだろう。

 桂三度こと世界のナベアツは名実ともに「世界のナベアツ」ではないと多分思う。

 スーパースター桂木久扇も、名実共にスーパースターではないと思う。スターであることを否定しないがスーパーがつくかどうかとなるとはっきり言えない。


 このように「名実ともに」というのは大変なので、名実ともに鼻つまみ者というのもたいへんなことである。

 こんなことで名実ともにある必要はまったくないのだが、世の中には名実ともに人でなしな人もいるだろう。ただ、あまりに人でなしすぎると陰でも人でなし呼ばわりしづらくなるものである。


 「人でなし」と「鼻つまみ者」では、ランクが違う。なんか鼻つまみ者は排除してしまえば済むような気がするが、人でなしはなんか支配側にいるような気がする。あと鼻つまみ者より命の危険を与えてきそうだ。

 だから名実ともにそんな人と顔を合わせるならまだ鼻つまみ者と出会うほうがいい。鼻をつままれても口で呼吸すればいいんだから。

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