青春の喪失
青春には限りがある。
移動中の電車でそう考える。
私は15を過ぎた時にそう思った。そもそも私の人生に春は存在していたのだろうか。勉学において可も不可もあったわけではなかった。身体的能力も特に褒められた記憶がない。色恋沙汰にも疎かった訳ではないが、どれかが特別記憶には残っていない。平凡
平坦
大衆
私に似合った言葉だ。先ほどの言葉を訂正しよう。私に青春は来なかった。それが正解だ。ふと思い立ったとき、扉が開き、外から杖を持った老人が入ってきた。そんなことより先に扉の外から吹く風に不快感を覚え、早く扉が閉まることを願った。しかしながら、その老人は奇しくも私の目の前に立ち続けていた。居た堪れなくなり、席を譲ろうとした。
「席、どうぞ」
「いやいいんですよ」
「一度譲ってしまったんです。受け取ってください」
「そうですか」
老人は座った。よくわからない罪悪感に打ち勝ったような気分であったが、同時に自分の状況を再確認し、自虐的に笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます