12~逃亡火山ツアーでして~

 異世界転移二日目は初日より慌ただしくなる予感がする。

 二人は宿で朝食を済ませ、まだ登りきっていない朝日の下を馬車で駆け抜ける。

 馬車の運賃が意外と安かったため一気に北上することにした。


 「くれは、ニヶ所目の火山の名前は」


 「グランジバレー」


 流石に国外に出れば安全なはずだ。

 火山でひたすら硫黄を採掘して金にすればウィシュノースに簡単にたどり着ける。


 『着きましたよ』


 運賃を払い、平べったい火山に登る。

 高さは数十メートルしかないのか。


 噴気孔が多く、大量の硫黄を採掘できる。

 下にある街は家が数軒、鉱石の精錬所が一箇所という非常に寂しいものだった。

 イースタンマインのときと同じように、硫黄を採掘しては精錬所へ、採掘しては精錬所へ持ち込むという作業を繰り返し、良質な硫黄を大量に採掘して八千五百メイル獲得した。


 「くれは、ちょっと遊ぼうぜ」


 「なになに?」


 「その下にある硫黄がついてない石を火山ガスにあててみ」


 ガスを若干平べったいにあてると。


 「黄色いのが……えっ硫黄ができた」


 「俺が知ってる数少ない科学的な知識、硫化水素とか二酸化硫黄が冷えると単体の硫黄を入手できる。これをうまく活かせば効率いいかもしれない」


 「なにもない所に突然黄色い物質がくっつくって不思議な感じね、面白い」


 二人はすぐ効率が悪いことに気づき、無言で馬車に戻るのであった。


 「つぎはウィシュノースまでふっとばす」


 「正気!? ここから三時間はかかるわよ?」


 「結果的に時間を足せば三時間になる、もう国を出よう」


 馬車はそこそこのなんとも言えないスピードで火山を離れる。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る