06~『願い』は脅威でして~
『次は イースタンマインです』
異世界転移時にヴィシーズ語が分かるように脳にインプットされたらしくアナウンスも含めた言葉が日本語に聞こえる。
地下鉄の電車を降り、誰もいないホームに降りたつ。
割と広く、芸術的な駅だ。
鉱山へはここから徒歩15分。駅を出て歩き出す。
外は紅葉が広がっていた。
「国王が四季はなく年中秋って言ってたな」
「そうね、紅葉と狐で癒やされる」
「そういえば紅葉とか狐ってなんか伝説あったっけ」
雪斗は何気なく会話しているつもりだった。
もちろん、くれはもだが。
「紅葉に願いを込めると一番叶えやすい環境を作ってくれて、狐はそれを叶える――」
待て、紅葉に包まれた祠の前で願ったからこの世界に来たと言うのか。
その筋でいくと――
「――おい」
「なに?」
「俺って世界の鉄道を掌握したいって願ったんだよな」
「うん」
「お前は――」
待て、待て、待て、待て、確かに鉄道が少ない世界だから掌握はしやすい。だが。
「え?」
「確認だ、お前は何を願った」
「あー、原子力発電所を作りたいなって」
――マズい。どう考えてもマズい。
ここは中世だ。紅葉が一番叶えやすい環境を提供するとして、原子力発電所を作りやすいのが日本でもアメリカでもなくこの中世の異世界だと言うのか?
だとしたら原子力に関わる環境がここに備わっていると言うのか?
「――お前、国王が資源に関する争いが起こってるって言ってたよな?」
「言ってたね、この国もちょっと参加してるって言ってたね」
おい、まさか『資源』って――
「くれは、国王って資源が何か言ってなかったか?」
「そこまでは……」
くれはの人格が変わる、つまり『アレ』だ。
もうそれ以外無い。
この争いの中で――
「――ウラン」
「え?」
「資源は絶対ウランだ、お前が願った原子力発電所に必要な燃料のウランを奪い合ってるからここに転移したとしか考えられない」
ウラン、つまりは核燃料。
まさか資源争いで本当にウランを奪い合っているとしたら原子力発電所、原発を作る技術を確立しているというのか。
中世、ホントに怖えな。
今こんな事を考えても仕方ない、ここは鉱山でウランを採掘して国王に何としてでも会って話を聞くべきだ。
「雪斗、そろそろ行こ」
鉱山へ向かう二人の背中は、何か重いものを背負ってるように見えた。
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