仮面ナイダー ノーフェイス

トカゲ

ノーフェイス

 街頭すらない山奥に1台の大型バイクに跨った男がいた。

 その姿は例えるなら闇そのものだ。つま先から頭の先まで黒で覆われている。


 彼と同じように全体が真っ黒な大型バイクがバルバルと排気音を上げた。それはまるで馬のいななきの様だ。


 そんな彼の前に1人の男が立っている。

 闇夜の様に黒い彼とは違い、全身を赤で統一した太陽の様な男だ。男の頭は炎で覆われていて、顔は骸骨の仮面で隠されている。男の身体の所々からは蒸気が噴き出していた。


 ゴウゴウと燃え盛る赤い男が右手を上に付き上げると、いつの間にか1本の大剣が右手に収まっている。燃え盛る炎を纏った両刃の大剣だ。

 赤い男は自分と同じ位の大きさがある炎の大剣を片手に持つとそのまま黒い男へと駆け出した。その速さは正に疾風、50mはあっただろう両者の距離は瞬く間に詰められ、そのまま赤い男の大剣は黒い男の首を撥ねた。


 あまりにもあっけない幕切れだ。しかし、それでは黒い男を倒すことは出来ない。何故ならば男にとって、その頭部は飾りでしかなかったのだから。

 黒い男の首から黒い煙が噴き出した。それは夜を更に濃い黒で塗りつぶしていく。星空を隠し、代わりに周囲を漆黒が包む。


 【あぁ、殺しに来てくれて助かったよ。この姿では自動防衛しかできないから、キミが殺しに来てくれないとまた逃がすところだった】


 誰かの声が赤い男の頭の中に直接響く。

 これは、黒い男の声なのだろうか? 赤い男は初めて動揺を見せた。


 【君たちは僕から5つの力を奪った。僕としては返してくれれば何もしないのだけれど、どうかな? 返してくれないか?】


 瞬間、赤い男の右腕が斬り飛ばされた。

 右腕から血が出ているはずなのに、それを見る事すら叶わない。

 そして、助けを求める声すらも闇に飲まれて消えてしまう。


 【なんだい、ダンマリかい? それじゃあ仕方がない。勝手に返してもらう事にするよ】


 しばらくして闇が晴れた頃にはヘルメットをかぶった黒い男だけが佇んでいた。

 黒い男の右手には燃えるように赤いカードが握られている。


 バルバルとバイクがいなないた。

 黒い男はバイクを優しくなでるとそれに跨り闇夜に消えていくのだった。


・・・


 とある悪の秘密結社が6つの頭を持つデュラハンの王の頭を盗むことに成功したらしい。盗んだ頭は5つで、それぞれに強力な力が宿っているんだとか。

 悪の秘密結社はそれを使って怪人を造り出して一気に有名になったが、代わりにデュラハンの王に狙われるようになったんだそうだ。


 6つの頭を持つデュラハンの王の名前はノーフェイス。

 彼の真実の顔を見た者は誰も居ない。

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