(短編版)ネカマ姫プレイしていたら、イケメン騎士が部屋に来た
うみ
部屋にイケメン騎士が訪ねて来た!
とあるネトゲのキャラ絵が気に入って萌え萌えしいロリキャラで遊び始めた頃、ピンチになってイケメン騎士キャラに助けてもらったことがあったんだ。
その騎士が
最初は何てことになってしまったんだーと戸惑っていたんだけど、姫になりきってゲームをやるのがすぐに楽しくなってきたんだよ。
そして、社会人になって一人暮らしをし始めると日頃のストレスもあり、ますますネトゲの姫プレイにのめり込んでいく俺……
今日から週末だしとウキウキしながら仕事から帰って、重たい仕事用のショルダーバックを床に放り投げ部屋着に着替えたら、さっそくこたつ机の上にいつも置いているノートパソコンの電源を入れる。
パソコンが立ち上がるまでの間に、冷蔵庫からビール、棚からスナック菓子を出してきてこたつに潜り込むといつものネトゲにログインした。
今日は誰がログインしているかなあとネトゲのフレンドリストを見ていたら、最初に俺を助けてくれて姫プレイのきっかけになったイケメン騎士のユウからテルチャットが入った。
テルチャットとは、ゲーム内でフレンド登録した者どうしが利用できるチャットで、離れていても会話することができて他のプレイヤーからチャットの内容を見られることがないという便利なものだ。
『すまない、助けてくれないか』
イケメン騎士のユウから、珍しくヘルプ依頼が来たけど……どんなボスを倒しに行くんだろうか?
『どうしたの? すごーいボスを狩るのかなー?』
俺はゲーム内だけで使う女言葉で彼へ返すと、
『すまない、一晩泊めてくれないだろうか?』
え、えええ。一体どうしたんだ? 「泊めてくれ」ってゲームじゃなくて
『それって、どういう?』
『言葉の通りだよ。アイ。突然のことで戸惑うのは充分理解している。何とか考えてくれないだろうか?』
彼に何があったのか分からないが、イケメン騎士のユウはかなり切羽詰まってるようだった。
俺がどう返信すればいいのかと考えている間にも彼からのチャットは続く。
『大丈夫、君のことは分かってるから安心して欲しい。ゲームの誰にも君のことは言わないとも』
『え?』
分かってるってなんのこと? その時、部屋のチャイムが鳴る。
まさか、ユウがここへ来たっていうのか? どうやってこの場所が分かったんだろう。いやいや、宅配便か何かだって。
そう思いながらも、俺はチャットを続ける。
『まさか、ユウ?』
『ああ、突然で本当にすまない』
マジかよお。何でユウが俺の住所を知っていたのかとか非常に気になるけど、このままストーキングとかされたら困るしなあ。
きっと彼も俺が男だって知ったらガッカリして帰ってくれるはずだ。この際、ネカマだとバレてもいいや。いやむしろ、ネカマで良かった俺……俺が本当に女の子で、いくらゲームで親しかったとはいえ突然知らせても無い家のベルが鳴らされたら恐怖しかないだろ……
俺は男だから、その点まだ何とかなる。
俺は扉のチェーンをかけてから、少しだけ扉を開く――
――扉の外に立っていたのは……女の子だった。
彼女は
服装はというと、厚手の白の腰下くらいのコートに、黒のハイネックセーター、ふわっとした感じの薄青色の膝上スカートに厚手の黒色のタイツ。足元は短いこげ茶色のブーツを履いていた。
一方の俺はというと、黒色に白のストライプの入ったジャージ姿だ……
「君は?」
「……わ、私は……」
黒髪ロングの女の子はポケットからスマホを取り出すと、もう一方の手で扉の向こうにある机の上に乗った俺のノートパソコンを指す。
どうしたものか……パソコンの前に座ると扉が閉まってしまうから少し戸惑ったけど、彼女が示す通り俺はノートパソコンの前へ座る。
どれどれ――
『君が男だと分かっていたのだよ。君は私の性別を男だと思っていただろう?』
『う、うん』
イケメン騎士ユウがあんな可愛い女の子だったのか! 俺は驚きで叫び声をあげそうになるが、慌てて口を
今度は扉のチェーンをかけずに扉を開く。
やはり、扉の外には黒髪ロングの白いコートを着た可愛らしい女の子が立っている。
本当にユウなのか……俺は茫然と彼女の顔を見つめると、彼女は目を伏せスマホをいじりだす。
「ユウなのか……?」
「……う、うん……」
俺の言葉に彼女は消え入りそうな声で肯定すると、
うーん、扉の前とノートパソコンを行ったり来たりするのもあれだし、こんな可愛い女の子だったら……まあ家に入れてもいいかー。
「男の家だけど……パソコンと行き来するのもあれだし、どうぞ」
俺が中へ入るように促すと、彼女はペコリとお辞儀をして玄関に入って来るが、それ以上先に進もうとせずその場で立ったままだ。
俺には警戒しているのか、何なのか彼女の真意が分からないけど、まずはノートパソコンを見るかな。
『行き場がないんだ。君を頼りたい……』
だあああ、そんな殺し文句をお。いや、分かってる。俺だって分かっているよ。いくら見た目がアイドルのような可愛らしい女の子だったとしても、素性も知れないし後から怖い人が来たり、壺を買わされたりするかもしれない。
でもさ、でもな。
彼女からのチャットを見た俺は思わず振り返ると、唇をギュッと震わせて下を向く彼女の顔が目に入るんだよ。このまま見捨てておけなくなるのが男ってもんだよ!
「俺だって男なんだし、下心とか……」
彼女の方から断ってくれないかなと思って考えた結果の発言だったが、あまりにいけてないぞ……我ながらダメだな……俺。
だー、ダメだ。これじゃあ。チャットならちゃんと伝えることができるはずだ。文字なら焦らないし、恥ずかしくもならない。
俺は焦りながらキーボードを叩こうとするが、後ろから彼女が俺を呼びかける。
「あ、あの、アイさん、わ、わたし……」
「あー、そんな顔しないでくれよ。今晩だけだからな!」
うああ、言ってしまったあ。
だってさあ、
ふう。パソコンはもういいだろと思い画面に目をやると、チャットに彼女からの返信があった。
『私も、その、だな。少しは下心がないわけでは無い』
え? 俺はぺたんと座る彼女へ振り返る。
「よ、よろしくお願いしま、す」
彼女は赤面し、両手をモジモジさせながら蚊の鳴くような声でそう呟いた。
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