Anatomical Venus

ねぇ その 閉じた瞼と唇は

永遠に 開くことなどないのでしょ

ねぇ その 冷たい皮膚の下には

つくりもののはらわたと 動かない心の臓と

ひずんだ骨格と硝子ガラスの眼球と死んだ子種と

薄汚いヒトの欲とが 詰まってるのでしょ


物云わぬアナタは

生きてるときより綺麗

笑わないアナタは

生きてたときより冷たい


アナタのすべてが欲しいと

そう云ったのは僕だけれども

どうするの命までくれてしまって

僕のいのちココロはもう手渡せないのに


アナタの身体をかきいだ

気の向くままに侵してみても

満たされない渇望と

莫迦々々ばかばかしい感情論


綺麗なひとは死んでも綺麗なんだなと

知りたくもなかったことを思った


アナタならあるいは、と

臍の窪みをなぞるけれど

その肚に僕の子はいない


いっそ模型でも詰めてみようか

ちょうど子持ちの柳葉魚シシャモみたいに

お腹がすいた喉が渇いた

きっとこの餓えは癒されない


となりにアナタのいない世界は

僕には少し、広すぎたんだよ



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