第5話 ホルスの目 5
古代バビロニアでは、一年の始まりを「春分」に置いたが、北部のアッシリアでは「秋~晩秋」に一年が始まった。
古代ユダヤには、春から一年が始まる「宗教暦」、秋から一年が始まる「政治暦」とがある。
バビロニアから伝わった太陰太陽暦を用いた後、エジプト由来の太陽暦が伝わり、それを用いた「ペルシア暦」はゾロアスター教の宗教儀礼と密接な関係を持ち、春分の祭り「ノウルーズ(新しい日の意)」と秋分の祭り「ミフラジャーン」という二大祭礼があり、時代と暦法の種別によって、どちらかが新年の最初の日になる。
「ミフラジャーン」は「ミスラ祭」の意味で、「ミスラ」とはインド神話の「ミトラ」と起源を同じくする、「契約」を意味する古い神格。太陽神と同一視され、中世ペルシア語では日曜日のことも「ミフラ」と呼ぶようになった。さらに、ソグド語「ミール」になり、日本では「蜜」と音写された。
ギリシャ語・ラテン語形では「ミトラース」と呼ばれ、太陽神、英雄神として崇められた。「ミトラス教」と呼ばれる密議宗教となり、冬至の後で太陽の復活を祝うもの(クリスマスの原型とされる)が最大の祭儀となった。
「弥勒菩薩(マイトレーヤ)」も名の語源が同じであるとされ、救世主の部分が共通しているとされる。
「メタトロン」、異称「ミトロン」と呼ばれるユダヤ教の天使も起源が「ミスラ」であるという説があり、「太陽のような顔」、「夜警」、「契約の天使」という性格を備えるとされる。
「ラー」の地位が「一年の始まり」、春と秋の「年2回の始まり」が古代エジプトにもあったと仮定し、循環に当てる。
一巡目の春分「ラー」、秋分「オシリス」。二巡目の春分「セト」、秋分「小ホルス」となる。
太陽信仰、死を克服する力の象徴という部分が共通しているが「ラー」は生者の神で、「オシリス」は死者の神であるという差がある。
春分と秋分は、昼と夜の時間が同じであるが、春分は冬至の後、昼の時間が増えていく過程の中心にあり、秋分は夏至の後、夜の時間が増えていく過程の中心にある。
古代エジプトの季節は、ナイル川の増水を基準に三つに分けられていた。氾濫が起きる時期、最も重要な季節「アヘト」は、7月~11月あたりで「冬」と扱われている。北半球の季節では夏にあたる時期も、収穫が終わり畑に何も植わっていない期間は「農業」においては「冬」だからである。
ギリシャ神話の季節・四季は、穀物の栽培を人間に教えた神とされる「デメテル」が、冥界に連れ去られた娘を探す放浪を起源とする。
放浪の期間は大地が荒廃し、娘の帰還をもって豊穣と実りを取り戻す。ただし、冥界の食物を食べたものは冥界の住人となるという掟により、差し出されたザクロの総量を一年とし、食した数で割った期間だけ冥界で暮らすこととなり、この間は実りのない「冬」となった。
女神デメテルの祭儀は「エレウシスの秘儀(密議)」と呼ばれ、その意図するものは「人を現世を超えて神性へと到らせ、業の贖いを保証し、その人を神と成して不死を確かなものとなす」というもの。現人神たるファラオの復活を助ける「オシリス信仰」と似ているし、「キリスト信仰」とも似ている。
「似ているものは、同じもの」なのだとしたら、無数の目を持つとされる「メタトロン」は、多数の目を持つ巨人アルゴスの死後、その目を飾り付けたとされる、ギリシャ神話の最高神の正妻、天の女主人「ヘーラー」の眷属「孔雀」と同じもの。さらに「ヘーラーの威光」という意味の「ヘラクレス」と同じものにされたのかも。
ファラオの名前は「ホルス名」、「ネブディ名」、「黄金のホルス名」、「即位名」、「誕生名」の五つで構成される「五重称号」と呼ばれるもの。産まれた日に母親から与えられる「誕生名」以外の4つは戴冠式の時に布告される。
「ホルス名」は先王朝時代から用いられた最も古い称号で、ホルス神を象徴するハヤブサが描かれ、王宮を表した模様「セレク」と呼ばれる枠で囲まれている。
第2王朝に「セレク」の上にハヤブサの代わりにセト神を象徴するセト・アニマルに変更されたものに変わる。この後、ハヤブサとセト・アニマルを共に「セレク」の上に置くが、象徴を対等に扱うのは第2王朝のみである。
現在の秋頃、天頂で輝く「ぺガスス四辺形」がセレク「白鳥座」がホルス「ぺガスス座」がセト・アニマルなのかも。
春分点は移動するもの。秋に観測できるものは、昔々その昔に見えた春の夜空。
原初の水「ヌン」から最初に顔を出した「ベンベン」とは原初の丘のこと。これをを模したものは四角錐の石で作られピラミッドやオベリスクの原型とされる。ヘリオポリス創世神話では、太陽神ラーは「ベンヌ」と言われる黄金色に輝く青鷺の聖鳥が混沌より自生的に誕生して原初の丘に舞い降りたとされる。
太陽と同じように毎朝産まれ、夕暮れとともに死して、翌日朝と共に甦る。フェニックスのモデルともいわれている。
「白鳥座」は夏の大三角を形成する星座の一つであり、β星「アルビレオ」は金色と青色の星の二重星として「北天の宝石」と称えられていて、不死鳥を思わせる。
「ペガサス」はゼウスの武器「雷霆」を運ぶ天馬。嵐が起きる時には雷鳴が轟くし、セト・アニマルは馬面だから。
「ネブディ名」は「二女神名」とも呼ばれ、上エジプトを表すシロエリハゲワシ「ネクベト」下エジプトを表すコブラ「ウアジェト」の二柱が、上下エジプトが統一されたことを表し描かれる。
現在の夏頃、南天の地平線付近で「ウアス」である「蠍座」が輝く時、北天の地平線付近には「手」である「カシオペア座」が輝き、東の空には「シロエリハゲワシ」同様に首の長い鳥「白鳥座」が輝いている。前3600年頃の地平線を這うように「海蛇座」は輝いていたので「地平線=ウアジェト」とし、カシオペア座をその「手」とする。
夏に観測できるものは、昔々に見えた春の夜空。
ファラオが頭部につける装身具「ケペレシュ(青冠)」は丸みを帯びた形、前面にコブラがつけられているもの。戦闘、軍事面での王権を示すもの。これと同じような形をしたものが「竜座」と「小熊座」を組み合わせると、出来上がる。
王権が天に輝く物なのならば、北天で「カシオペア座」と「白鳥座」の間に輝く、「ケフェウス座」と「ポラリス(小熊座α)」を組み合わせると、ボウリングのピンの様な形をした「ヘジェト(白冠、上エジプト)」になり、南天の「蛇座(頭と尾)」が「デシュレト(赤冠、下エジプト)」で赤冠から延びる、巻かれたもの「ヘマチェト」が「冠座」。上下エジプトを象徴する「セケムティ(二重冠)」は「蛇座」、「冠座」に「蛇使い座」を組み合わせると、似た形のものが出来上がる。
「黄金のホルス名」は永遠に輝く太陽を象徴する色、黄金のヒエログリフの上にホルスがのる形。他にも金がセト神の町「オンボス」を示し、ホルスがセトに勝利したことを示しているとされる。
第4王朝以降の権威を表す象徴の冠は、ツタンカーメンのマスクと同じ「ネメス」である。「ネメス」を表すヒエログリフは「ヘルクレス座」で同じようなものが出来上がる。ヘルクレス座の頭部から肩にかけて結ばれる線を、頭(α星)から蛇の絡まる枝を持つ腕(μ星)の方で結ぶ。
第1王朝の頃から「ネメス」と同様の形状の頭部を持つ人物が描かれており、初期の頃は「ウィッグ」と共に用いられたとされる。
春に観測できるものは、昔々に見えた冬の夜空、来るべき未来の春の夜空。
「獅子座」が南天の天頂付近で輝く時「ヘルクレス座」の背中「獅子の衣」が東の地平線上に置かれ「大地の獅子」となる。「ウイッグ」が用いられていた理由かも。
西の地平線には「牡牛座」と「オリオン座」が輝く。これは、オシリスの牡牛と呼ばれる「アピス」が新しい「アピス」が見つかった際に、ナイル川に沈められたとされる理由かも。
「即位名」は上エジプトを象徴する「スゲ」、下エジプトを象徴する「ミツバチ」が描かれ、それぞれの下部に半円の形の「パン」を表すヒエログリフが描かれる。
「ミツバチ」の生物分類学上の名は「アピス」である。名付けられた当時「ハナアブ(ハエの一種)」と間違われ、牛の死体から生まれると考えられていた。生命復活の象徴として、牡牛の神と同じ名が与えられた。
「オシリス」と「アピス」合成神の「セラピス」は冥府の王、医術の神とされ、マケドニア、ギリシアで崇拝される頃に豊穣神として「酒神ディオニソス」と同一視され、太陽神になぞらえられていた。
「蜂蜜」はミイラの腐敗防止に使われたり、傷の手当に使われる薬としての利用や、そのまま栄養価の高い食品として、水で2~3倍に薄めれば発酵し「ミード」と呼ばれるお酒になる。
「スゲ」は湿地や渓流沿いで生育するものが多い植物。日本では注連縄の材料にされる種もある。水中に根を張り、葉を水面に出す。スゲ類は大株になって湿地に塊を作り盛り上がって見える物がある。何も無い所に現れる「原初の丘」のような形の、下エジプトのデルタ地帯を表すのか、または死後の再生の地「楽園アアル」を指すものとなる。
「スゲ」が属するカヤツリグサ科には、紙のように加工していた「パピルス」がある。この科が属するツユクサ類イネ目には「葦」があり、古代エジプトで「葦船」と呼ばれるものは「パピルス」で出来ている。有名な例が、赤子のモーセがいれられていたもの。
「パン」のヒエログリフに似た形をした星座は「南の魚座」である。そのα星「フォーマルハウト」と「水瓶座」の流れる「水」の部分を繋ぐ形は「蜂」の「尻と針」の形に似ている。
「南の魚座」の一部であった可能性のある星の名を持つ「鶴座」の形は「f」の形に似ていて「f」に横線をもう一本足し左右反転すると「スゲ」のヒエログリフにソックリになる。
「誕生名」は「息子」を意味する、首の短い「水鳥」を描いたものと「太陽神ラー」を意味する「二重丸」を描いたものを組み合わせたものに続き、ロープの象形文字「シェヌ(カルトゥーシュ)」取り囲まれている。
古代ギリシア側で「ゼウス」と、時にガチョウの姿で表される「アメン」は同一のものとされていた。
ギリシア神話と統合されたローマ神話では、最高神と正妻の間に生まれた「マルス」が立春を元日とする一年の始まりの「月」の名になっている。これは「エジプト雁」の抱卵期間が「1ヵ月」とほぼ同じ「30日」である事が、起源なのかも。
「シェヌ(カルトゥーシュ)」は取り囲むこと、永遠を意味していて「名」を保護している。楕円についた棒状部分は結び目を表している。
現在の冬空に観測できるものは、神代の時代「イシス神」の威光によって、赤子の「ホルス神」が継承者と認められた、秋分の空。
「冬のダイアモンド」は楕円状に結ぶ事もできるし、その中心には「オシリス」とされる「オリオン座」の赤色巨星「ベテルギウス」が輝いている。
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