革命のクラウディア -Klaudia die Revolutionar-

青海イクス

第1章

Opening.

 目を閉じると、今でも思い出す。

 肌を舐める地獄のような焦熱。無残に打ち崩され瓦礫と化した街。焼け焦げた血の匂い。灼熱の中を走る幾多の叫び。

 そして、炎の熱に煽られながら、朦朧とした意識に鮮烈に焼き付いた、彼女の姿。

 軽装のドレスを纏った細い身に赤銅の胸甲鎧を付け、火に映える白い右手に炎の色を照り返す厚刃の剣を提げ、緋色の長い髪を熱風に靡かせて、まるで世界の全てを斬り伏せた屍のその上に、襲いかかる熱波と暴虐の嵐から僕を守るように凛と立っていた、どこまでも強い、その背中。

 その勇姿は今も、その手にあった剣で深く胸を貫かれたように、僕の心に刻まれている。

 降り注ぐ火の粉を振り払った紅い戦場の乙女は、振り返って背後に倒れていた僕を見、目の前まで来ると小さな僕の前にしゃがみ込んで、誘うようにその手を差し伸べてくれた。


「立てる? 私と一緒に来なさい。今は生きなければ」


 燃えるような煌めきを宿した、大粒の炎玉フラメリアのような瞳の、深く、鋭く、熱い眼差し。

 七年前のあの日、轟炎に包まれる中、僕は彼女のその眼差しに心の奥を射抜かれた。


 あれが全ての始まりだったのだと、僕は今でも確信している。

 僕の、彼女を巡る戦いの。

 そして、彼女とこの世界の運命を変える、僕らの全ての戦いの。

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