それぞれの結末(エピローグ)

 シュシュがヴァレンティアに帰国してから、一日が経った。

「弟子入りさせて下さい!」

「お願いします!」

 須王家の玄関前には、ナンパ男二人が土下座していた。

「だってよ、親父。どうする?」

「どうするったって……うちは弟子を取らねえしなあ……」

「そこを何とか!」

 食い下がるチャラ男。すると、龍範が何かを見つけた。

「おっ、龍野。これ、使えるぜ」

「はいよ。茶髪の、これを持ってくれ」

「何すか? あ……こう、っすね」

 チャラ男が龍野に持たされたのは、厚さ三センチの板だ。

「ふんっ!」

「ヒイッ!?」

 ごく単純な蹴りを放ち、板を両断する。

「やれやれ……この程度でビビってちゃ、修行なんざやってらんねえ。三日と経たずにやめちまうぜ?」

 龍範が意地悪く言う。

「そういうこった。ま、あんたらなら、それぞれに合った格闘術を見つけられるだろうから、ウチに弟子入りすんのは諦めてくれ」

 二人組は恐怖で言葉を発せないまま、おずおずと退散した。

「ふう……お前も大変だな、龍野」

「全くだ親父……あいつら、何度面倒を持ち込むんだ?」

「面倒ねえ……そうだ龍野、睦月はどうなった?」

「ああ、あいつか。無事にヴァレンティア城に帰ったとさ」

「そりゃあ良かった。早く入るぞー」

「おうよ」

 龍野は青空を見つめ、静かに呟く。

「シュシュ……この四日間、お前は楽しかったか?」


「ただいま、お姉様!」

「お帰りなさい、シュシュ。ゆっくり支度を整えなさいな」

「はい!」

「あ、そうだ。シュシュ、一ついいかしら?」

「何でしょう、お姉様?」

「龍野君と……関係は、深まったのかしら?」


「ええ。少しは氷解しましたわ」


「そう、良かったわ。さあ、自由になさい」

「はい!」

 シュシュが城の自室に戻るのを確認するヴァイス。

「さてさて……皐月ちゃんの連絡を聞いて、一時はどうなることかと思ったけれど……この様子では、全て解決したみたいね。それにしてもシュシュ、見え透いた嘘をつくのはやめなさいな。少しどころか、完全に氷解してるじゃない。貴女の笑顔が、はっきり教えてくれたわよ」


 自室で荷を解くシュシュ。その顔は、満足を通り越して幸せそうであった。

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