第149話 友
前世において、
しかしその頃の
当時は俺たち魔人が様々な種族に技術を提供していため、集落というよりも町くらいの規模で石造りの建物が連なっていることが多くなっていたからだ。
けれど、ここにある建物はそういうものではなく、藁などの植物性の材料でで作られたテントのような家屋が大半である。
また、
門番をしていた
特に非戦闘員らしき女の
さらに子供のオークの中には腰布だけつけて後は素っ裸の剛の者もいる。
ここでなければ別にそこまで不自然ではないというか、一般的な
いかに彼らが本質的には魔物であると言っても、中々の厳しいのではないかと思ってしまう。
しかし、そんな俺の考えを察したのか、歩きながら案内の
『……寒そうに見えるか?』
『ああ……ちょっと人である私には、この雪山では出来ない格好であると言わざるを得ない……』
『はっはっは。確かにそうだろうとも。それどころか平地の
そう言って
何だろうか、と思って見てみると、その腕には細かな毛がびっしりと生えている。
通常の
これによって寒さを防いでいる、というわけだろう。
『なるほど、元から防寒着を纏っているようなものなのか……』
『その通りだ。加えて、体質的に氷雪に対して強い耐性を持つ者が多い……かといって、平地の
『それは凄いな』
これはお世辞ではなく本音だ。
魔物の中で、何かしらのものに対して耐性を持つものは、その反対のものに対しては無力であることが少なくない。
火属性の魔物は水や氷に弱いものだし、その反対もしかりだ。
しかし、
上位の魔物になればなるほどそういう傾向があるのは確かだが、
……まぁ、創造神となるような真竜の魔力に当て続けられてきたのだ。
考えてみれば、ある程度高位の存在になっても納得か……。
それにしても
様付けだしな。
加護を受けし、と言っているということは神のようなものとして捉えているということだろう。
しかしそうなるとなぜネージュに喧嘩を売りに行くのか謎だが……。
神に喧嘩を売るか? 普通。
まぁ……それは族長に聞いてみればいいか。
『ところで、今更ながら名前をお聞きしても良いか?』
『
そういう掟がある、と昔、言葉を習った
これに
『本当に我らの掟に詳しくていらっしゃるな……まさにその通りだ。しかし、名前を呼び合えぬでは不便であろう? 遙か昔、神代の時代は徹底していたようだが……今ではあだ名程度のものはどの
なるほど、そういうことか。
俺の知り合いの
魔王陛下と、俺たち四天王くらいか。
それ以外はそれこそ勝手に決めたあだ名で呼んでいたな。
《血黒き甲冑の豚鬼》とか、《鏖殺包丁の角豚鬼》とか……物騒なあだ名ばっかりだ。
俺は
『いや。確かに私が学んだ
何と名乗ろうか迷った。
今世の名前で行くか、それとも本来の名前を名乗るか。
人間相手なら今世のそれで確定なのだが、どうしても
しかし昔の名前を名乗ってそれが広まるのも問題か……?
と、色々と考えてみたが、結局のところ、この山に住む
彼らに名乗ったところで、変に広まる、ということもあるまい。
それに……彼らの文化として真名は秘密にしてくれるわけだから……その辺りで責めてみればいいか、と思った。
俺はそこまで考えて言う。
『……アインベルク・ツヴァインという。しかしこれはあなた方で言うところの、真名でな。出来ればアイン、と呼んで欲しい』
『……真名を。人間は特に気にしないとは聞くが……明かしてもいいのか? やはりなんとなく心配になるが……』
『広めたり公のところで呼んでくれなければそれで構わない』
『……承知した。では俺も名乗ろう。
『カーヌーン……法を意味する古語だな。門番に相応しいが……それこそ、真名では?』
そこまでしっかりした起源を持つ名前は、真名にこそつけるものだと思ったからこその質問だった。
これにカーヌーンは頷き、
『真名を明かした者に対する礼儀だ……もちろん、人前では呼んでくれるな』
『では……そうだな、普段はカーと呼ぶことにしよう』
『俺の友は皆、そう呼ぶ。新しき人の友アインよ』
どうやら
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