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「あ、あ、あ、!わあー本当にペアリングつけてるんだ。それ、サファイアだよね?まるで湖みたいな色、綺麗……」


 矢吹君がエルフの王女にもらったサファイアのリング。このリングには不思議な魔力がある。母はその魔力に記憶を塗り替えられた一人だ。


「司会者が『それは彼女からのプレゼントですか?』って聞いたら、『信頼する方からのプレゼントです。彼女のリングもその人からプレゼントされたものです』って、サラッと言ったのよ」


「……まじですか」


「そしたら会場が『ワーワーキャーキャー』大騒ぎになって、ファンが泣き出しちゃって」


 それは……

 大変だ……。


「司会者が『恋人は噂に上がった女優さんではなかったのですか?』って」


 矢吹君と風月桜……。


「『真剣にお付き合いしている方は一般人なので、もう騒がないで下さいね』って、もうスタジオ内はパニック状態。生放送だから、大変だったのよ」


「……ていうか、ママが一番騒いでるよ」


「だって、俳優さんだよ。優香、マスコミくるかな?ママ、明日美容院に行くね。エステも行くね」


「やだ。カメラに映る気満々じゃない。やめてよ。絶対にインタビューなんて受けないでね」


「えー?ダメなの?つまんないな。一生に一度くらいテレビに映りたかったのに。子供の頃、アイドルに憧れていたんだから」


「ママがアイドル!?まじで?矢吹君の立場をちゃんと理解してね。ママが矢吹君と交際してるわけじゃないんだから」


「はいはい。でも、明日美容院行こうっと」


 鏡を見ながら笑顔の練習をしている母を残し、私は二階に駆け上がり自分の部屋に入った。


 矢吹君が……

 テレビで交際宣言した。


 ど、ど、どうしよう……!?

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