第29話 盲目

いつも彼女を見ていた

ただずっと穴があくほどに

見飽きることはなかった


彼女がいた頃は

なにも知らなかった

いなくなってから

見上げた空は

建物に切り取られ

細長く青かった


重ねてきた

思い出の束が

重みを失い

シャボン玉のように

天高く舞い上がり

弾けて消えた

私には

本当の彼女は見えていなかったらしい

この想いもシャボン玉のように

いつしか消えてしまうのだろうか

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