第14話 支配

目に映るもの

すべてが恐ろしかった

いつも怯えていた

安心できる場所はない

いつどこで襲われるかわからない

油断できない

これまで仲間が連れ去られるのを

何度も目の当たりにした

私は何もできなかった

あまりにも無力だった

この世界は喰うか喰われるかだ


動くこともできない

逃げられない

私にできることは

隠れて耐え忍ぶことくらいだった

誰かが救ってくれることを

現状を変えてくれることを祈った

今は辛いが

我慢していれば

きっと大丈夫


ある時、その方は現れた

私が気づいた時には

もう檻の中

捕まったのだと悟った

これまでの人間と同じように

狩りに来たのだと感じ取る

怯えていた私に

やさしく微笑みかけてくる

それに威嚇で返した

すると落ち着いた様子で

寄って来て

同じ目線で接してくれた

どうしてだろうか

初めて信用できる人間に

出会えたような気がした


毎日、快適な場所で

少しカラダを触らせてあげると

勝手に相手は和んでくれた

あとは何もしなくても

食事が運ばれてくる

安心して眠れる

世話をしてくれる

他者から守られている

尽くされている

どうやら私は生きていることに

価値があるらしい

人間を手懐けている気分だった

もうあの頃に戻ることはないだろう

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