第6話

 場面転換、神谷家


「で、教えてもらおうか」

「分かりましたわ。大きく変わり始めたのは中学校に入学したころかしら。事前に計ったはずの制服の前ボタンがきつく感じて」

「お前の胸部成長過程を教えろなんて言ってねえよ!そっちも気になるが今は、俺とお前がいつ、どこで逢ったのか教えろ!」

「そうでしたわね、あれは私がまだ生粋のAmericanで、自分の父親も、お兄様のことも知らなかったころです」


ん?American?アメリカ?こいつ確か、じいさんがフランス人のはず。


「あ、そうそう、こいつ祖父はフランス人だけど、そこの娘と俺の親父が駆け落ちして、アメリカまで逃げて、その後こいつが産まれてすぐに親父が別の女と浮気して、家出ていって、母親が一人で育ててたらしいぜ」

なんだそれ、喜城家の家族事情、複雑を超えてただの雑だろ。

というか、お前らの親父どんだけの浮気性だよ。そしてなぜそんなにモテるんだよ。


「わたくしはお母様に黙って外出し、街の中をうろついていました。すると、怪しい男の人達が話しかけてきて」

「その人達に襲われたの?」

「いえ、その人達は児童保護局員で、わたくしを保護しようとしました。ですが、わたくしは逃げました」

「え?」

「わたくし、お母様に心配をかけたくなかったんです。今思えばまったくの逆効果だったんですけどね」

「それで、いつ俺と逢ったんだ?」

「ここまできても思い出せませんか?」

「わたくしが逃げ続けて、路地に入った時、本当に怪しい男にぶつかってしまいました。すぐに局員が追い付いてきたのですが」


「ですが?」

「男に一撃で倒されました」

がんばれよ児童保護局員。

「もう諦めかけた時、仁さんに出会いました」

さすがにここまで聞いたら思い出した。あれは、家族全員で旅行した先、暇になった俺がぶらついていたら、たまたまその場面に出くわして。


「そうだ、俺は少々を救うべく、勇敢に立ち向かったんだ」

「いえ、後ろから忍び寄って膝カックンした後、鉄パイプでボコ殴りにしていました」

「お兄ちゃん、やり方が卑怯にもほどがあるでしょ」

「その後、なんやかんやで結婚の約束をしてわたくし達はgood-byeしたというわけです」

「おい、一番重要なところを『なんやかんや』で済ませるな。ノリで婚約したみたいになってるだろ」

「わたくしはあなたを探して日本に来たのですが、あてもないので、今はお兄様の家にhomestayさせてもらっています」


「ちなみに、こいつのこのしゃべり方は俺のアイデアだ。相手が誰にしろ、お嬢様言葉なら嫌われる可能性は低いと思ってな」

「お前、ただ自分が『お兄様』って呼ばれたかっただけだろ」

「あ、バレた?だって『お兄様』は男のマロンだろ?」

「ロマンな。分かりにくくボケるな。お前ボケキャラじゃないだろ」

「失礼、噛みま」

「言わせるか‼」

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