199 お披露目会と陰謀
あみゅーさんにメールで調査の依頼を出した。この件に関してはメール
以外では話をしないこともお願いした。どこで誰が聞いてるかわからない。特に耳の良い獣人なら、尚更だ。
それから、何事もなく数日が経ち今日はウィズダムグリントの新本拠地のお披露目式だ。
ニーニャが連れて行ってほしそうにしていたが、ニーニャが行くとなれば、必然的にミーニャも行くことになる。あの場所はミーニャにとっては辛い思いをした場所。いずれミーニャが大きくなったら、一緒に訪れたいとは思うが今はまだ早い。
なので、今回は留守番。連れて行くのはさくらは言うまでもなく、ファル師匠にデルタ、にゃんこ共だ。いつも朝練一緒にしてるからな。それににゃんこ共を連れてこいとのご要望だ。小生意気な奴らだが、外見は可愛いらしいから、お披露目会に来る女性プレイヤーの客引きパンダ役だろう。
城壁から少し離れた場所に転移魔法で飛んだ。始めてここに来た時と違い、青空が広がり美しい湖の湖畔に古城が佇んでいる。一流の画家が書いた風景画が霞むほどの美しい風景だ。心が洗われるな。ニーニャやミーニャに見せてやりたい風景だ。死者の迷宮は年中どんよりしてるから、こんな場所に別荘でも欲しいな。
城壁の門をくぐり中に入れば、多くの馬車やプレイヤーが集まっていた。
さすが、ナンバーワンクラン。イノセントハーツのクランお披露目会とは規模が違う。
受付に行くとニンエイさんがいた。
「これはよく来てくださいました。ファルング様、デルタ先生。ついでにルークとにゃんこ諸君」
「にゃんこじゃないにゃ!」
ついでかい!? ついでなのかい! それもにゃんこ共と一緒にされた……。お土産渡すのやめようかな……。
「受付を済ませたら城に入らず、練兵場に向かってくれたまえ」
「お土産持って来たんですけど……いらないですよね……どうせ、ついでの男が持って来たお土産なんて……つまらないですよね……」
「よ、喜んで受取ろう」
「つまらないものですよ?」
「つ、謹んで受取ろう」
「どこに置きますか?」
「ちなみに、何かな?」
「シャンパンを百本ほど」
「ぜひ、会場のほうに持って行ってくれ! セイがいるはずだ」
ということで、練兵場に設営された会場に来た。大勢のプレイヤーがいる。見知った顔もチラホラいるが、セイさんはどこだ? ウィズダムグリントの人たちが集まっている場所がある。行ってみるか。
「すみませーん。セイさんいますか?」
「ん? なんだルークか、どうした?」
「お土産持って来たんですけど、ニンエイにこっちに持ってけと言われて」
「おっ、そうか悪いな、って! ファルング様にデルタ先生、よくおいでくださいました」
あらら、また蚊帳の外ですか……もう、好きにして。それにしても大きな、練兵場だけでイノセントハーツの砦が入るんじゃないのか? 湖と森に囲まれ、守りやすく攻め難い、理想的な城だ。これで城下町でも作れば小国だな。
どうやら、話が一段落したようだ。
「旦那、それでどこにおけばいいでやんすか?」
「なに、卑屈になってるんだ……。何か知らんがそこに置いてくれ」
なので、シャンパンの入った箱を四つ置いた。
「これは、酒か?」
「シャンパンですよ」
「マジか……」
どうやら、喜んでいただけたようだ。受付で渡された番号のテーブルに行くと、リンネたちがいた。
「老師、デルタ先生! に、師匠とにゃんこちゃんたち!」
「にゃんこじゃないにゃ……」
お、お前たちもなのか、お前たちまで……。どうせ、俺はいらない子だよ。にゃんこ共といじけてやるにゃー!
「何やってんだ? 師匠」
「キュピ?」
気にするな、現実逃避をしてただけだ。
「それより、お前たち最近どうなのよ?」
「ちゃんとクエストこなしてるぜ。こないだも土竜討伐クエストに参加して来た」
「ほう。迷宮はどうした?」
「珊瑚に囲まれし島の迷宮はクリアした。死者の迷宮はまだかな……」
土竜討伐クエストは第五陣プレイヤー専用クエストらしい。リンネたちも着々と力を付けているな。今度一緒にクエストでもしてみるか。
ユウと雑談していると、イノセントハーツのメンバーも到着。同じテーブルらしい。
「大きいわね……。うちの砦が小さく見えるわ」
「値段を聞くのが怖いわね。どうなのスポンサー?」
「湖が凄く綺麗だ。絶好のデートスポットだな」
「はいはい、そういうのは、彼女できたら言え! 馬鹿兄貴」
「お城も大きいー」
「何人くらい収容できるんだろうな」
思い思いの感想を述べている。ちなみにサキさん、いくらしたのかは知らん。安くはないだろうね。でも曰く付きの物件だったから、意外と安かったりして。
どうやら時間のようだ。セイさんの挨拶が始まった。と同時にゲインからメールが届いた。見るか見ないか迷ったが、若干の嫌な気がしてメールを開いたら、嫌な思いが当たってしまった……。
メールの内容は、ウィズダムグリントのお披露目会に、クルミナ聖王国が何やら画策しているという内容。シルバーソードが一枚咬んでいるそうだが、どのようなことか迄はわからないと書いてある。残念ながら何時起きるかも書かれていない。不味い状況だな。
お披露目会にはNPCも多く参列している。取引のある商人だったり、協力してくれている有力者に冒険者にハンター。彼らが巻き込まれるのは非常に不味い。ウィズダムグリントの信用問題にも係る。
しかし、相手がどんな手に打って出て来るかわからないのは痛い。取りあえず、セイさんとニンエイさんには報告しよう。
俺が持ってきたシャンパンが各テーブルに配られ始めた。ニンエイさんが来たので早急に話したいことがあると言い、セイさんの所に向かう。
しかし、シルバーソードも明日はワサビ……もとい、明日は我が身だと思わないのだろうか。まさかバレてないと思ってるのか?
それはありえない。
いや、あいつらアホぞろいだからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます