118 ニーニャ、お仕事頑張ります!

 皆お腹満腹。帰ってお昼寝したい。


 でも、もう一仕事残っているな。と言うより本命か。


 スキル屋に着いた。にゃんこ共は魔女っ子にモフモフされている。ニーニャはトラのお腹をモフモフしてる。ニーニャ、気持ち良いのか? トラは困った顔をしてるけどな。



「お兄さん! この子達、私にください。大事にします」


「うーん。残念だけど自分に決定権無いんだよね。ニーニャに聞いて」



 にゃんこ共が猫でなしとか言って騒いでいる。俺はヒューマンだから人でなしだぞ。



「ニーニャちゃん。お願い。」


「にゃめ!」


「うーん。残念です~」


「飼うのは無理でも遊びに来てくれるってのはどうだ?」


「どう言う意味ですか!?」



 魔女っ子にケットシーの境遇を聞かせてやった。途中で泣き出したのでハンカチを渡してやった。



「ぐすん……酷いです。こんなキュートな子達がそんな目にあってるなんて。ズピッー」



 盛大にハンカチで鼻かんだね……そのハンカチ返さなくて良いよ。本当に。



「わかりました。私もネコちゃん達の為にひと肌脱ぎましょう」



 以前トラに書いて貰ったものではなく、個人宅用のこの家の人はケットシーの味方です。頼ってください。とケットシー文字で書かれた紙を数枚渡して、書いてある内容を説明する。



「これを張れば、キュートなネコちゃん来るんですね! 楽しみです~」


「すぐ来るかはわからないけど、近くにいる街ネコにもケットシー歓迎ですって言っとくと良いと思うぞ」


「そうなんですか~? わかりました。うちの周りに来るネコちゃんに話しかけてみます」



 帰ろうとして、はたと気づく。なにも買ってねぇーよ。



「スキルが欲しいんだが……」


「あっ! ど、どんなスキルがご要望ですか……?」



 完全に忘れてたな。お互いに……。



「良し。にゃんこ共一列に並ぶのだ」


「にゃんこじゃにゃいでござるにゃ」


「我ら三獣士」


「なんか、どちらでも良くなってきましたわ」


「……」



 ん? ニーニャも並びたいの? じゃあトラの前に並ぼうね。



「では始める。ミケ、魔法(土)以上」


「ま、まってにゃー。光も欲しいにゃー!」


「必要ないだろう。それに高いんだからな」


「にゃー! 一生のお願いにゃ。勇者になりたいにゃー!」


「勇者って……ミケ適正属性が光だろ? 得意属性じゃないと勇者になれなかったんじゃなかったっけ?」


「そう言われてますが、ホントの所はわかってないです~」


「にゃー! チャンスをくださいにゃー!」


「いくらするかわかってるのか? 金貨七十枚だぞ」


「必ず返すにゃー! 体で返すにゃー。モフモフして良いにゃー。お願いにゃー!」


「……体で返すって、いらんわ!」



 まさかの猫の泣き落としですか……仕方ないなぁ。



「ハァ……じゃあ魔法(光)も。タマは魔法(火)だけで良いよな?」


「炎を極めてみせよう」


「チロは魔法(水)と回復魔法だな」


「ずるいにゃー! チロだけ最初から二つにゃ!」


「チロはそれだけ才能があったんだよ。回復魔法は大事だからな。戦闘中に傷を舐めてる暇ないだろう。その分チロは戦いながらも、パーティー全体を冷静に見なくちゃならなくなるんだぞ」


「うにゅ~」


「期待に添えるよう頑張りますわ」



 次はニーニャの番だ、そっと魔女っ子にアメ玉を一袋を渡した。



「じゃあニーニャは、まだ魔法は早いから、みんなの体力補給係りに任命します」


「あい!」



 元気良く、しっぽをブンブン振って手を上げた。うぅっ、可愛いすぎる。


 魔女っ子がニーニャにアメ玉の入った袋を渡してくれた。ニーニャは嬉しくて仕方ないようでみんなに見せて回っている。



「疲れてる人がいたら、補給をお願いします」



 ニーニャは首を縦に何度も振って、皆の顔を覗き込んでる。まだ大丈夫だと思うよ。ニーニャさん。



「最後、トラ。魔法(風)」


「合計で六つなので金貨四百二十枚になります~」



 金貨の入った袋を店のカウンターに置く。頑張って数えてくれ。


 それよりニーニャがそわそわしている。ひっきりなしにみんなの顔を覗き込み、がっかりしているのだ。ここはやらねばならぬ時だ。ワザと疲れた風を装い。



「にーに。疲れちゃったなぁ。誰か助けてくれないかなぁ」



 ニーニャは目をキラキラさせて、アメ玉の入った袋からひとつ取り出して



「にーに! あい!」



 くぅっー。ニーニャの優しさに泣けてくる。


 ニーニャの高さまで屈んで、口に直接入れてもらう。うん、元気百倍だね。お礼に抱きあげてほっぺにチューしちゃったよ。


 魔女っ子も数え終わったようで



「ふーう。確かに頂きました」



 ニーニャがまた目をキラキラさせて



「ねーね! あい!」



 どうやら魔女っ子が疲れてるように見えたらしいな。袋からアメ玉を取り出し魔女っ子に差し出す。



「うー。ニーニャちゃんは優しいです~」



 魔女っ子も直接お口に入れてもらい、お互い満足の表情。




「おいちーです~。これくじ引き券です~」



 くじ引き券十枚貰った。これで三十枚になったな。一枚で一回引けるのかな? それとも十枚で一回かな? オークション日が待ち遠しい。いかんいかん、特に頂く気なし……もとい、欲に頂きなし、既に何かを当てる気でいる。無欲が大事だ。この世界にも物欲センサーがないとは言えないからな。


 王都での用事は済んだ。戻ろうか。


 転移ゲートに歩いて行くまでに、ニーニャは疲れてそうな人を見掛ける度、アメ玉を配ってしまう。転移ゲートに着く頃にはあれだけあったアメ玉がなくなってしまった。


 ニーニャは悲しそうに自分を見つめる。うっ、そんな目で見ないでほしい。



「ニーニャご苦労様。今日は一杯人助けしたね。アメ玉ポーションはもう無いから、また明日ね」



 うぅ。ニーニャの哀しそうな顔を見ると、断り切れ無い。レイアごめんなさい。明日頑張ってね……。



 またしても、丸投げだな。




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