116 ニーニャと猫共とお出掛け
部屋に戻ると、猫共が居ない。ファル師匠も居ない。
近くにいたメイドにどこ行ったか聞くとクリスタルの部屋に行ったらしい。
レイアが部屋に戻って来たので、今日はどうするのか尋ねると今日一日はうさ子についていてくれるそうだ。そうしてくれると助かる。うさぎ……もとい、塞ぎ込んだままだからな。
ニーニャにさくらを渡して、クリスタルの部屋に向かった。
どうやら模擬戦をしているようだ。猫三匹とデルタ、トラとファル師匠の二組で戦っている。
「どうなんだ?」
「全く相手になっていません」
「だろうな」
「ですが、見所はあるようです」
「どっちがだ」
「両方でございます」
ミケ、タマ、チロは連携攻撃に秀でてるようだ。相手に攻撃させる隙を与えさせない戦法のようで猫魔法も効果的に使っているらしい。が、いかせんパワー不足なのだそうだ。本来ならこの連携にトラも加わるが、トラはファル師匠の相手をしている為、決定打に欠けるとの事。
そのトラと言えば、ファル師匠に遊ばれていて前に戦った時に気付いた通り無口だが短気な為、ファル師匠から攻撃ではなく口撃を受けていて顔を真っ赤にしてファル師匠を追っかけているそうだ。只、体力には目を見張るものがあるらしく、ファル師匠はその体力に辟易してるらしい。
一長一短、四人揃って丁度良いみたいだ。流石、幼なじみと言う所かな。
あぁー。デルタの一撃で三匹が簡単に吹き飛ばされちゃったよ。おぉー。キャット空中にゃん回転で着地した。デルタが嫌な顔をしている。
ファル師匠の方は鬼ごっこに飽きたのか組手に変わってる。どうやら一から教えてるようだ。トラの格闘は打撃技と言うよりプロレス技に近かかったからな。一対一ならそれでも良いが、一対多では不利過ぎる。基本は打撃、要所要所でサブミッションや大技を組み込んだ方が効果的だと思う。
途中から自分も訓練に参加した。発頸をちゃんと習得したいからだ。忘れないうちに体に覚え込ませようと思う。犠牲者は勿論、トラ。死に戻りしたのでステータスは三割程だが、レベル差的に丁度良いだろう。
挑発するとすぐに乗ってくる。これ、何とかしないと不味くねぇ。ファル師匠も頭を横に振っている。トラが攻撃を仕掛ける度にファル師匠はどこからか持って来たのか知らないが、良く
格闘向きの種族と言うのもあるが、おそらく持って生まれた才能だろう。見る見るうちに動きが良くなっていく。後の亀が先になる……もとい、後の雁が先になるのも時間の問題だろう。凡人の自分が口惜しい……。
凡人は地道に努力するか策を弄するか、或いは運に頼るしかないのだ。
自分も発頸の訓練し危なくなったら、挑発して本能のままの攻撃をさせ主導権を握るの繰り返し。トラなんぞに主導権を握らせてなるものか。
「……鬼じゃな。まぁ、トラの修行には丁度良いかのう」
ファル師匠、なんか失礼な事言ってませんか? 兄弟子として弟弟子の指導をしているのです。他意なんて全く無いです。
全戦全勝。ポコポコにしてやった。ボコボコじゃないぞ。ニーニャの親衛隊として相応しい実力を持つようになって欲しいと思う、親心? だ。
大人げ無いって? そんな言葉知らない、初めて聞いたな。
訓練を終えてクリスタルの部屋に戻ると、何故かトラが俺を見る目に怯えが見える。
「流石、さくらお嬢様の
「オメガ。人聞きの悪い言い方止めてくれ。なぁトラ」
「……イエス、ボス」
「トラの様子がおかしいでござるにゃ!」
「トラどうかしたのか?」
「ねぇ、トラどうしたのですわ?」
なんだ猫共、その人を疑うような目は。言っとくがトラは強くなるぞ、このしごきに打ち勝てばな……。今はそのしごきに耐えてる時期なのだ。と、思うぞ?
「デルタ。こいつらはどうだ?」
「……防御は良い。並の相手では崩せんだろう」
「ほう。デルタにそこまで言わせるか。やるじゃないか猫共」
「にゃー。それ程でもにゃいでござるにゃ。それから猫ではござらんにゃ」
「当然の事」
「当たり前ですわ。我ら三獣士なのですから」
「……が、攻撃に関しては猫と変わらん」
「ぷっ……やっぱ猫じゃん」
「にゃー!?」
「「……」」
これに関してはデルタに考えがあるみたいなので任せた。妖精族なので魔法属性も高いと思われるので魔法を覚え込ませても良いと思うとデルタに言ったら、それなら早いうちに覚えさせた方が良いと言われた。剣術と組み合わせれば幅が広がるからだそうだ。
魔法剣とかかな? 夢が広がりますなぁ。オールの知る勇者と居た拳聖が聖属性を纏って戦ったって言ってたから、十分期待がもてる。
良し。猫共王都に行くぞ。
部屋に戻り、ニーニャも連れていく事にした。うさ子の傍にはさくらとレイアがいるから良いだろう。
王都に行く前にオメガにお金を貰った。俺の持ち金なんてたかが知れてるからな。それに死に戻りしたせいでお金が無い。アイテムは大したものを持っていなかったので痛手は無い。ポーションや予備装備位なものだ。
王都に着くと、昨日来たばかりなのに随分来ていなかったように感じる。
ニーニャは平常運転でみんなに手をブンブン振り笑顔を振りまく。街ネコ達はニーニャを見掛けると寄って来てニャーと一言鳴いて行く。人気ものだな。
チラッとだがエンジェールが遠くに見えた。ゾディアックだろうな。三獣士も街ネコから俺達を見張る者達の情報を貰ったようだ。猫共には無視して良いと言っておく。しかし、ゾディアックはどこから情報を得たのだろう? 所在がばれるには早すぎる。転移ゲートを常時監視しているか、転移ゲートに細工でもしてるんだろうか? 帰ったらオールにそんな事ができるのか確認しよう。
魔法屋に着いた。一応三獣士をパーティーに入れておいた。
「また、あんたかい。いつもいつも変な客を連れて来るねぇ」
「客だと思ってるなら、それ相応の接客しろよ。バァ……」
バァンと後ろで音がし、猫共がパニックを起してにゃーにゃー言ってる。
「ばーば。めっ!」
「おやおや。猫姫に怒られちまったねぇ。でも悪いのはその小僧じゃて」
「にーに?」
「おいおい。人のせいにするなよ。ニーニャにもばーばって言われてんだろ」
「小僧の言おうとした言葉と、猫姫のばーばでは天と地程の差があるよ」
「ふん。言ってろ」
「それより用はなんだい。猫姫を見せに来た訳じゃないだろう」
「うむ。そうなんだが……なんでニーニャを知ってるんだ」
「儂の使い魔は猫じゃ。知っていて当然じゃ」
「ふーん。ゾディアックと対立している俺達を店に入れて良いのか? 大賢者殿」
部屋がピシッと軋んだ。ニーニャのしっぽが緊張してピンと立っている。安心させる為ほっぺにスリスリする。猫共は気付いていない。
「……おぬし、どこまで知っておる」
「さぁ。カマを掛けただけだ。以前に来た時に小耳に挟んだのでね」
顔は笑っているが、目が笑っていない。この婆さん敵か味方かわからないからな。できれば、穏便にいきたいところだ。
猫共さっさと立ち直れ、この場の雰囲気を察しろよ。にゃーにゃー煩い!
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