08 テイムしてないよ?

 水溜りにいたスライムを全て倒し終わった時には、セカンドバトル開始から二時間が過ぎていた。お陰で気付けばレベル5。


 しかし、はたから見ればピエロとスライムの追い駆けっこにしか見えなかっただろう。とてもシュールな絵面だったと推測できる。


 その上、得られた物といえば全てのモンスターが落とすエナジーコアと言うモンスターの核だけだった。勿論、品質は最低で二束三文にしかならないだろう。流石が最弱スライム。


 だが、得られた物は少ないが、清々しくとても満足だった。



「疲れたー。腹減ったー。町に帰るかー」



 帰り道、鑑定を使って薬草でも探しながら行けば飯代くらいになるだろう。



「キュッ、キュッ!」



 そういえば君居たね……。そう言えば、兎って声帯が無いから鳴かないって聞いた事があるが、モンスターだから鳴いても良いのか?



「俺町に帰るけど、うさ公はどうすんだ?」


「キュッキュッキュ!」



 ついてくるんですね。はい。テイムしたモンスターじゃないけど町に入れるのだろうか?


 思案してると、うさ公が近付いてきて俺をつんつんしてくる。



「ん? どうした? うさ公」



 勝手にステータスメニューが開きストレージ内画面が写しだされたと思ったら、大量のドロップアイテムが流れ込んできた。


 驚きつつもうさ公を良く見ると〈ラッシュラビット ♀ Lv12〉となっている。



「じゅーにーだとー!」



 俺は二時間掛けてレベル4しか上がってないのに、なぜに君はレベル10も上がってるのかな? 俺の二時間はなんだったんだ? ライバルと思っていたのが遠い昔、光陰矢の如しだ。


 ドロップアイテムの量を見ていると、なんかうさ公がお金に見えてきたな……。いやいや、いかんなうさ公は友なのだ。


 後でブラッシングでもして機嫌とっとこー。



 歩いて帰る道すがらステータスの確認をしていたら魔法(光)lv3になっていた。そして、新しい魔法【浄化】を覚えている。


 試しにうさ公が獣臭かったので、浄化を使ってみたら獣臭が無くなり、ごわごわした毛並みがあら不思議モフモフになっている。町に戻ったら是非、モフモフを堪能したいものだ。


 町までの帰り道モンスター達はうさ公を見ると回れ右をして逃げて行く。うさ公がどこぞの音痴なガキ大将と重なって見えた。そんなこんなで、町まではモンスターとの戦闘もなく無事着いた。



 門にいた衛兵さんは出た時とは違う方だった。一応、Jobを詐欺師に変更しておく。Jobは使ってこそ価値があるって偉い学者さんが言ってたからな。



「よう。お疲れさん、町に入るなら許可証を確認させてくれ」



 気さくな方の様だ。言われた通り全財産で手に入れた許可証を渡す。



「許可証に問題はないな。そのモンスターはお前さんのだろう?」


「……ハイ、ソウデス。ワタシノトモダチデス」



 Jobは詐欺師だが嘘は言っていない。鼓動が周りに聞こえるかと思う程バクバクいっている。



「町の外で会ったら恐怖の対象だが、テイムされていると可愛いもんだな」



 衛兵さんはうさ公の頭をワシャワシャと撫でている……。



「キュッキュッ!」



 ゴ、ゴメンナサイ。スイマセン。テイムシテマセン……。



「よし、通っていいぞ」


「アリガトウゴザイマシタ……」



 その場を逃げる様に中央の噴水広場に移動した。犯罪者の気分だ。


 ベンチに座り、うさ公を見る。動かなければ人形と誤魔化せるか? 試しに持ち上げてみる。



「キュッ?」



 重い、当たり前か身長120cm程あるのだ、横幅もあるのだからおもぃ……。


 ガツ、ドフッ。


 ヘッドバットからのボディーブロー。声も出ない……。別に太っているとか言っ……。


 ゴンッ。


 うさ公さん踵落としはマジ痛いっス。すいません……もう言いません。


 まぁ、うさ公の事は、なんとかなるだろ。余り気にしない事にしよう。


 とりあえずアイテムの換金だな、目の前にラピットの串焼きとのぼりの立った屋台がある。ストレージの中を確認するとラピットの肉が結構な量があった。



「すみません。ちょっと良いですか?」


「へい、らっしゃい何本ほしいんだい?」


「二本ください。それと聞きたい事があるんですけど?」


「そいつは構わねぇが……一本はそっちのが食うのかい? 共食いになるんじゃねぇか?」


「やっぱりそうなのか……」



 そんな気はしましたよ、やはりラピットは兎タイプのモンスターのドロップアイテムか。共食い以前にやったのうさ公だし。



「食べるか?」



 うさ公はプイっと横を向いてしまう。



「食べないそうです……」


「だろう。で聞きたい事ってなんだ?」


「ラピットの肉を持ってるのですが、買い取ってくれたりしますか?」


「買うのは構わんがハンターギルドで売らなくていいのか?」



 普通はハンターなんだろうな。後で行ってみるか。



「自分、ハンターじゃないので」


「ほう。どの位持ってるんだ?」


「20羽分ですね」


「うーん、10羽で大銀貨2枚でどうだ」


「取引成立ですね」



 一本の値段から推測すればそんなもんだろう。屋台の後ろにある箱に入れてくれと言われたので入れてから屋台の前に戻り、串焼き代を差し引いた大銀貨3枚と残りの硬貨を貰った。




 やっとこ貧乏脱出だよ。





 ~~~~~~~~~~~~~~~~

 ルーク・セブンスランク Lv5

 job 旅人

 HP/MP 880/460

 Str 8

 Vit 12 (+10)

 Int 13 (+10)

 Dex 8

 Agi 13 (+10)

 Luk 12 (+10)


 Spt 8


 skill

 魔法(光)Lv3 鑑定Lv1 気配察知Lv2 気配遮断Lv2 健脚Lv3 魔法発動短縮Lv2 夜目Lv1 魔法(時空)Lv1 幸運Lv1


 Job固有skill

 HP回復速度上昇(小) スタミナ減少軽減(小) 空腹度減少軽減(小)



 頭 フールマスク MP回復速度上昇(大)

 体 レンジャーコート 認識阻害(小)



 保有Job

 旅人  詐欺師


( )内の数値はJob補正値です。

 Int、Agiは個別経験値により1UP。

 Spt(ステータスポイント)は本人まだ気づいていない。



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