第7話 勝利
「退け、退けぇ!」
その言葉と共に、シガル衆は、あさっての方向へ走り去っていった。
それを見て、父ちゃんは、ひときわ大きな声で叫んだ。
「我らの勝ちだぞ!」
その声音に、村人たちが応じる。
「おお、勝った。勝ったぞ!」
「わしらの勝利だ」
「大樹村の大勝利!!」
勝ちどきが、次々とあがっていく。
俺にも実感が沸いてきた。
勝った。俺たちは生き残ったんだ!
緊張が解けて、どっと疲れが出る。
その場にぺたりと座り込む。
そこへ、父ちゃんと母ちゃんと伊与がやってきた。
「よくやったぞ、弥五郎。お前の開発した弾丸のおかげで村は助かった」
「そうだ、弥五郎のおかげだ! お前、すごいな! 銃の使い方なんていつの間に覚えたんだ?」
伊与は、目をきらきらさせて俺を見つめてくる。吸い込まれそうな、綺麗な瞳だった。
伊与だけじゃない。父ちゃんも、母ちゃんも、そして村のみんなも。
誰もが、感嘆のまなざしを俺へ送ってくれたのだ。
俺は村人たちに、ひとまずわずかな笑みを返した。
それにしても、何度も聞こえている謎の声。
あれはなんなんだ?
考える。
……その日はずっと考えた。
村人たちが勝利の宴を開き、俺をさんざん囃し立てたあと、お開きになり、深夜には布団に入って横になる。その間、俺はずっと、自分の身に起きた現象について考えていたのだ。
だが、やっぱりあの現象はわけが分からなかった。
頭を使いすぎた俺は、やがてウトウトと眠り始める。
……そのときだ。
【俊明。……聞こえるか、俊明】
また、例の声が聞こえた。
俺はゆっくりと目を開く。
すると、目の前に。……なんと、死んだはずの剣次叔父さんが立っていたのだ!
「お、叔父さん!? なんでここに!?」
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