第五章:夢のディストピア

 きのえ



 取り返しのつくミスと取り返しのつかないミスがある。取り返しのつくミスならばできるうちにしているほうがいいだろう。プロとして名乗っていたとしてもミスをすることがある。それは呪術師であるレイ君も一緒だ。

 とはいえ――――。

「これはひどくないかな」

 私は思わず呟いた。目の前にあるのは大海。そして潮の香りと潮風が私の髪を激しく揺らしている。

 そして何より意味が分からないのが、いつのまにか水着姿となっていることである。

「なんか、かわいい水着なのが一周回ってはらがたちますね、もう」

 逆に不細工な水着だったらどうだったのかといえば、もちろん怒り狂っていただろう。こんなわけのわからない展開なのだから、せめて水着ぐらいはかわいいものを用意してくれと言いたくなる。

 とどのつまり、何があっても腹が立つ状況に立たされているのだ。

 クロネコの皆さんと旅を初めて数ヶ月。それなりに仲もよくなってきたし、呪術に関する知識も増えてきた。そんな中で起きたアクシデントがこれだ。

 とりあえず、辺りを散策してみることにする。砂浜が熱くないのが救いか。一体何の救いかはわからない。わかる人がいたら教えてほしいものである。

 この砂浜からの視界は非常に悪く、少し先も白い霧でおおわれている。何があるのかがわからない。試しに白い霧の中を歩いているとコツンと何かに当たった。まるで霧が壁となっているかのように行く手を阻んでいる

 私の知識が正しければ霧とは水蒸気であるはずだ。それがこのような塊となり行く手を阻むなんて話を、少なくとも私は聞いたことがない。

 ソッと手をずらしていくと開いた空間があることに気が付く。そこを凝視してみるとうっすらとだが、階段があるのがわかる。これを上るべきか否か。下手に動いて迷惑をかけてもいけないという結論に至る。

 仕方がないので、そのまままっすぐに来た道を引き返す。このまま霧の中を色々な方向にさまよっていると、今どちらを向いているのかすらわからなくなるだろう。太陽が顔をだしているから一応の目安にはなるが、あまり過信をしすぎるのもよくない。

 以前レイ君たちと共に森林地帯を歩いた際、森の中をまっすぐ歩いているつもりが、気が付いたら同じところに戻ってしまう人がいるという話を聞いたことがある。これは太陽を目安にまっすぐ歩いているつもりが、太陽は徐々に動いていくので気が付くとぐるりと一周してしまうというものらしい。

 だからまっすぐ歩くだけでも危険なのにあちこち行くのは自殺行為も甚だしい。そもそもこの空間の太陽が私の知っている太陽と同じように、時間経過とともに移動をするのかも疑問ではあるのだけども。

 できるだけまっすぐ歩いていると、また霧が晴れていく。海に向かって歩いている最中に砂浜に私の足跡が残っていないことに気が付く。ということはやはりまっすぐ歩いているようで結構ふらふらしていたらしい。

 ともかく、こうして私はまた海辺に戻ってきたわけであるが、次の狙いとして海の中を泳ぐつもりはない。どこに陸地があるのかもわからないし、泳ぎに自信があるわけでもないのだから。

 結論として私ができることがないと判断をする。

 大海の青さを前にして、なぜこのようなことになったのかを思い出してみることにした。




 きのと




「ガイスティック、か」

「はい。私たちが扱う呪術道具のことをガイスティックと呼んでおります。まぁ、その名前事態には特殊な意味を持たせているわけではありません。しかし、名前を付けるという行為、そのものが意味深いものだと感じる出来事が多々ありますから」

「どういうこと?」

 首をかしげる。

 今までコンクリートしか歩いてきたことがなかった私にとって、土がむき出しどころか、舗装もされていない道を歩くということは、疲れが生じるものであり、そんな私に気を使ってくれているようにも思える。それは本来の予定より一日遅れて到着したこの国からも理解される。

 そして今現在、私は隣で眠るシンちゃんを置いてレイ君に呪術師とはなにか、ということを教えてもらっていた。

「私がレイという名前である必要性はまったくありません。たった今から私がユイという名前に変わろうが、レアという名前に変わろうがたいしたことではありません」

「うん、普通はそれは大したことだと思うけども」

「しかし、名前がなければ。私を示す呼び方がそこの男、といったその人物の外郭を表すものでしかなくなり、本質を現わせなくなるのです。つまり、本質を現わす、そのものをそのものであると強く認識させるもの、それが名前なのです」

「う、うぅーん」

 わかるようなわからないような話だ。今一つ飲み込むことが出来ない。

「逆説的に言えば名前というのは、その存在の在り方を縛るものなんです。名前なんてなんでもいい、といいましたが、その呼び名が、例えば『第21未来師者』であったらどうでしょうか?」

「そっか……。第21未来師者というものが重要なのであってヒカリという人間が必要であるわけではなくなる。その人物の存在意義が変わってくる」

「そういうことです。例えば『母親』という呼称もそう。母親と呼ばれることで自身の中に変化が生じていくということも少なくありません。しかしながら、その在り方に縛られてしまうと、母親の『私』となってしまい、個人がどのような存在でもよくなってしまうということになる。夫婦円満の秘訣などではたまには『母親』『父親』といった記号ではなく、個人を指す名前を呼ぶことが大切という話もございますから」

 画一的な記号はその存在もゆがめてしまう。私も未来師者として役に立たない存在だと、ふさぎ込むわけではないが、どこか達観していた節があった。今、ただの『ヒカリ』となってからは、私自身がどうしたいかを優先させることが出来るようになっているように感じる。

 名前は記号ともなり、その存在を定義してくれる存在ともいえるのだろう。

「ガイスティックと名をつけているのも同じです。術具としてまとめてしまいますと、やはりどこか他人行儀なものを感じるんですよね。だから、十全な力を発揮することが出来ない。しかし、そこで、私が手塩をかけて作ったガイスティックというものであると認識することで思い入れも異なってきますから。やはり、ただの子供と、自身が面倒を見ている子供と、我が子とでは、それぞれ感情も異なってくるでしょう?」

「なるほど……」

 名前というものの意味を考えたことがなかったけど、よく考えたら確かに、名前というものにある魔力はすごい。

 ただの記号と捨てきるのでもなく、かつ意味が深いものとしすぎるのでもなくそれなりの距離感で付き合う必要性があるということか。

「さてと、ガイスティックにはどのような種類があるのかについてもついでに説明をいたしましょうか」

“レイ君”は立ち上がると“リュック”から“ガイスティック”をいくつか取り出す。

 なんだか、先ほどの話を聞いたせいで名前一つ一つに強い意味が込められているように感じてしまう。いや、名前というか、言葉というか。そもそも、名前という名前は誰が付けたのか……。ダメだ、思考が順繰りしてきた。名前が鬱陶しいものに思えてきた。ひとまず名前に対しての考察は終えておこう。

「ガイスティックには主に三つの種類に分けられます。一つは封印術」

 ことりと机の上に置く。そのガイスティックの名前を私は知らないが、とりあえずこの道具が封印形式のガイスティックであると認識する。

「その名の通り、様々なものを封印するための道具です。心霊現象の解決には暴走をしている想いを一つの場所にとどめる必要性があります。そして漏れ出さないように強引に封をする。それが、封印です。その他にも軽度の封印を用いれば人を縛ることもできるのですが、そういった封印術を用いるのは非常にまれですね。誰かをとらえたいときぐらいでしょうか」

 誰かをとらえたいときがあればそれを用いることもあるということか。まぁ、想いの暴走が心霊現象の根本にあるのだとしたら、その想いを暴走させている本人をとらえることは確かに大切かもしれない。

「二つ目。お守り系統。一般的な願いを成就させるものから、悪霊などにとりつかれにくくするお守りまで様々です。少し前、ヒカリさんに送りましたました『蒼き数珠共感』などはこちらに区分されますね」

 これはなんていうか、一番想像しやすい気がする。お守りは呪術師がかかわらずともなんとなく守ってくれたりする存在としてわかっていたし、メカニズムは置いといても一般人にとっても嬉しいものである気がする。

「そして三つ目。媒介道具、又は増幅器。正直こちらの種類はあまりにも膨大なのですが、ともかくこちらにあるのは、私どもの力を強めたり、想いをこちらに宿らせたりするもの。『真銀の宝玉』などがこれに当てはまるわけですが、厳密には増幅器とも取れない存在を私は思いついたら作ったりしていますから、これら三種プラスその他もろもろ、といった方が正しいかもしれませんね」

「そうなんだ、大変だなぁ、覚えるの」

「一度に覚えようとしなくても構いませんよ。徐々に慣れてくるものです」

「そうかな?」

「そうですよ。それに、作ってみたはいいが、結局使っていない道具なども存在するぐらいですから。例えば……あっ」

 レイ君の間の抜けた声音を聞いたのはその時初めてだった。それと同時に私も小さな声を上げていた。

 机の上のガイスティックの一つがまばゆい光を出す。思わず、目をつぶる。

「人体にはダメージはないのでご安心を」

 そんな声と共に、この光が消えた先に待ち受けていた光景はホテルの一室ではなく、大海の青であった。




 ひのえ




 当たり前だけ呪術師も人間なんだということが分かった。こんな人間らしいミスをするとは。文句を言うとしたらわざわざ私たちを巻き込むようなミスをしてほしくなかったところである。

 それにしても、先ほどから観察をしていると波が大きくなっているように感じる。この世界の構造も不確かすぎる。

「意味がわかないなぁ」

「……何が?」

「この空間が……って、シンちゃん!?」

 何気なく言葉を返してから後ろの存在に気が付く。立ち上がって彼女をよく観察してみる。普通の格好だ。水着の私が並ぶと、私の異様性が際立つような気がする。

「これ、何が起きているかわかるかな?」

 助かったという面持ちから彼女の手を握り尋ねてみる。

「……たぶん、『夢幻回廊むげんかいろう』というガイスティックが使われたんだと思う。その理由知ってたりする?」

「レイ君が、間違えてスイッチを押してたみたい」

「……レイ。たまにバカする」

「あ、あはは」

 今回はフォローをすることもできないので笑ってごまかす。私のためにやってくれていたことなので責められまい。

「この道具って、どういうものなの?」

 なので、まずは道具の意味合いを聞いてみることにする。話をそらそう。

「……本当の使い方は見たい夢をみるというもの。だけど、今は暴発しているから、その人物にあった夢というものになっている。ただの夢だからいつか覚めるけど、やっぱりさっさと解決をしておいた方がいいと思う」

「そうだね。それで、解決方法って?」

「……一つ一つ階段を上って、各階にいる主人公を知ることで回廊を破ることが出来る。……私は一つ下の階で、ここはあなたの階」

「そう、なんだ……。というか、巻き込まれたのは私達だけなの?」

 もしそうであれば、あとはレイ君を見つけ出せば終わりということになるのだが、話はそう簡単ではないだろうなと直感が伝える。

「……周りにいた人も巻き込まれている。合計で10人。今までで私とあなたの階を突破。それで、どうする? 私と一緒に行くか、ここで待っているか?」

「もちろん行きます」

 こんなところで一人で悩まされるのはたまった物じゃない。それに、勉強にもなるだろうと私はついていくことを希望する。

「……それなら、靴は履いておいた方がいいかも」

「靴? でも、持ってないし」

「……大丈夫。ここは夢の世界。ビーチサンダルぐらいだせる。想像してみて」

「う、うん」

 言われるがままに想像をしてみる。すると、結果はすぐに表れてビーチサンダルがでてきた。とりあえず、裸足から脱することが出来た。

「それなら、服とかも、出せるんじゃないの? ビーチサンダルにこだわる必要性もないと思うけど」

「……たぶん無理」

「な、なんで?」

「……自分の夢にあったものしか基本的に出すことはできないから」

「そ、そんなぁ。う、う~ん」

 頑張って服や靴を想像してみるけど、結果はまったくでない。代わりに大きくなったのは波の音。そっと見てみると波が大きくなり砂浜に打ち寄せる量も大きくなっていた。

「……ちなみに、各階層には名前がついている。ここの階の名前は『悩み波』というもの。……たぶん、ここの主人公……あなたの悩みに生じて波が発生するんだと思う」

 またしても名前か。しかし、確かにその名前はここをよく表している。名前が先にあったのか、それとも名前があってからこの部屋が作られたのか。

「そうなんだ……。それで、これからどうやっていくの?」

「……各階には必ずのぼりの階段がある。だから一階ずつ上っていくことになる」

「わかった。あっ、大体の階段の場所は分かるから、ついてきて」

 やっぱり上らなくてよかった。何も知らずに階段を昇ったら見ず知らずの人間と出会っていたということになるし、ここでシンちゃんは誰にも会えずにうろうろしすることになっていたかもしれない。

「それじゃあ、いこっか」

 私先導で連れていく。霧の中では一応手を引いて一緒に歩く。それでも少し迷ってしまったが、なんとか先ほど見つけた階段にたどり着く。

 そのまま次の階――――私が2階なのだとすれば3階にたどり着く。

「これが、階の名前っていうやつ? えっと、『桃源郷』?」

 私は首をかしげながら、扉を開ける。そしてそこで視た空間で思わず声を漏らす。

「うわぁ……」

 キィーという音は気になったけど、それ以上に視覚に飛び込んできた空間に思わず声が漏れた。

 全体が桃色の霧のようなもので包まれており、派手な香水の匂いは、嗅いでいるだけも気分が悪くなりそうだけど、ソファーには一人の男が座っている。おそらく彼が主人公だろう。そう確信をしたのは、この部屋の名前が『桃源郷』ということと、その貧相な彼に寄り添うようにしている美しい顔立ちの女性たちがいることからもわかる。この女性たちは私が言えた義理ではないのだが、水着を着用しており、その双球はスイカやメロンと揶揄されるよな大きさである。

 爆乳ここにありといわんばかりの豊富なそれで男を満足させているけど、その男は男で緊張の面持ちが透けて見える。

「……結局おっぱいか」

「何か言った?」

「……あなたもあそこに混ざってくる?」

「なんで!?」

 ぼそりとつぶやいた言葉を聞き逃しただけなのに帰ってきたのは罵声、と、まではいかないが、突き放すような言葉。思わず驚くけど、シンちゃんは視線をそらして取り合ってくれない。

「……童貞」

「し、シンちゃん。あんまりそういう言葉は使わないほうが」

 今回のミスもそうだけど、シンちゃんの発言からも、なんていうか彼女たちは人間だなっていう風に感じさせられた。

 時々忘れそうになるが、彼女たちは私よりも年下なわけであり、年相応の装いをみれたところで、人間らしさを感じた。

 私自身も通常の人間とは異なる性能を持っている為に、もとから呪術師である彼らとは共感ができる部分を持っていたが、それが加速したような形だ。

 心なしか、ここの主人公を罵ったことによりすっきりした様子を見せる。そして彼女に連れられるまま桃色の霧を超えていくとまたしても階段を見つける。ふと、振り返ってみて、私たちが上ってきたところを観察してみる。

 階段はおろか扉もなくなっていた。おそらくはそういうものなんだろうと無理やり納得をする。

 4階の名前は『ウミノキオク』というものであった。

 またしても海かと感じるが、そういえば私たちが止まっているホテルからは海が覗く。元から潮の香りを一度味わっていた。これは想像でしかないが、夢というのは本来記憶の整理だ。つまり、無意識に海の記憶が目新しくあったために私は海にいたのではないだろか。そして今回の主人公は……。

 扉を開ける。またしてもきしむ音が響く。今回は白い霧に包まれている。風雨の霧だ。その霧を乗り越えた先にあったのは大きく、古い船であった。

 古いというのは使い古されて、という意味ではない。新旧のことを指している。

 この国の技術力は詳しくはないが、それなりに発達をしている様子だった。見た目だけでも、この船は明らかに旧型のものであった。しかし、うす汚れているということはなく、まるで新品であるかのように手入れもされた跡がある。

「おぉ、アリス殿。アリス殿、生きておられたのか」

 車いすの音が響く。私達……いや、たぶんだけど、私をみつめて嬉しそうに声を漏らすおじいさん。人は年をとると昔に戻るというが、それは真実なんだろうと感じさせる。

 私を過去の誰かと勘違いをしている、ということか。もう一度観察をしてみるとこの船には砲台が付いている。少なくとも、戦闘が想定されるものであるということだ。

「お久しぶりです。あなたも生きられていたのですね」

 私はアリスという存在になりきる。なりきるといったが、アリスがどんな人なのか、声音がどうとかもわからないけど、話の筋だけ合わせていれば十分だろう。

 シンちゃんは少し距離を取り霧の中に隠れる。人の気持ちを察することが強い彼女だ。何かを感じたのだろう。

「私は、この大戦から帰ってきたばかりでございまする。あれは、ひどかった。仲間が次々と倒れていった……。私たちの船は、なんとか危機一髪で戦闘海域を抜けてこちらまで舞い戻った次第でございまする」

「大変でしたね……。心中ご察しいたします」

「生きているだけでも、儲けものということでございます。我々はここに生きている皆様のために、必ずや敵を打倒し、我々の正義を主張するのでございます。そしてゆくゆくは、この国の真の平和を、おとどけいたしましょう」

「ご立派な、お考えでございます」

 戦争を賛成するつもりはないけど、そういうほかない。戦時中は自分たちの行いが間違っているとわかりづらいものだし、もしかしたら、彼の言う通り、戦いでしか平和を取り戻せないのかもしれない。

 悪政に苦しむ国では戦いを通じてでしか戻せないということもある。どれだけ説得しても聞いてもらえないこともある。ただ、戦争反対をうたうということは簡単だけど、その実として、どうすればよいかを考えなければならないのだろう。

「それでは、また現世でお会いいたしましょう」

「あぁ、そうだね」

「失礼いたします」

 頭を下げてこの場を辞する。おじいさんは敬礼をしていた。霧の中に隠れているシンちゃんが姿を現し手招きをする。おそらくそちらに階段があるのだろう。

 ウミノキオク……、確かにそれにふさわしい内容だった。なんていうか、考えさせられるというか……。

「シンちゃんは、っていうより、呪術師にとって、戦争はどんな解釈なの」

「……想いと想いのぶつかり合い。それによって悪霊が増えて、仕事が多くなる」

「よくないこと?」

「……仕事ができるということから見ると、武器商人と同じ感じ。だけど、私は嫌。憎悪と憎しみが、ぶつかり合う、あの空間。嫌」

「なら、よくないことだね」

 呪術師の全体なんてどうでもいい。今の私はクロネコの一員だ。シンちゃんたちが嫌だというならば、それを反対する。それだけで十分だ。

 5階。『恐怖の間』。なんていうか、率直な階層だった。

「……悪夢の部屋、だと思う」

「悪夢かぁ。夢が舞台だからあり得る話だよね」

「……普通は見せないように設定できるけど、暴発だから」

「そうだよね」

 見たい夢が見られるというもののはずなのに、わざわざ悪夢を見たいと思う人間は……いないとも言えないんだろう。そういう変わった人間もいるだろうし、いわゆる悪夢と言われるもので遊ぶというのは十分に考えられる。

 薄暗い霧の中を歩く。周りが木で囲まれていることは分かる。木が鬱陶しく生い茂っていて視界が悪い。

 それでも歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。歩みを進めていると、歩みを進める。

「おかしくない?」「おかしくない?」「おかしくない?」「おかしくない?」「おかしくない?」「おかしくない?」「おかしくない?」

 言葉が何重にも交差をして、全体が暗くなり今がどこなのか何を歩いているのかもわからなくなる。なぜか、妙に体も重い。

 ぐるりと世界が一周して全てを恐怖に埋め尽くす。そんな様子にシンちゃんは小さく息を吐いて思考を巡らせる。

 この部屋の主はぐるぐると回る世界で迷っているらしい。その迷いに自分たちもとりこめられようとしているということであろう。この部屋で主を見つけ出すのは至難の業だ。

 シンちゃんがぼそりと、私に分からない言葉をつぶやくと、体の中の倦怠感だけは抜けていく。

「……簡単な防護の呪術。これで、主人公ではないモブキャラの私たちは普通にしゃべられる。でも、部屋の特徴までは解除できてない」

「そうなんだ。でも、どうする? たぶんだけど、ここずっとループしてるよね」

「……このまま探し回っても、たぶん鼬ごっこ。だから、これ持って一定のスピードで歩いて」

「録音機?きゃぁ!?」

 私は思わずその録音機を手放してしまう。

 その録音機からは低い女性の、唸るような声が響いてくる。

「……この声は、私が夢の世界で産みだしておいた録音機にとっておいたもの。全部、演技。安心して」

「安心できるものなのかなぁ」

「……ラップ音とか色々加工はしている。ちょっと心霊的な力も使ってるけど」

 聞かなければよかったと思った。心霊的な力とはいったい何だろうか。

「とにかく、歩いてみるね。一周すればいいんだよね?」

 確認だけ取った後、私は歩き出す。この過程にどのような意味があるのかわからないけどもひとまずは、盲目的に信じてみることにする。

 しかし、この行為に対して一体どういった意味があるのだろうか。謎ではあるが、仕方がない。それより早く一周したいところだけど……。

「我慢我慢」

 一定のスピードでと言われているから早足になることもできない。だが、気持ちとしてはいくら演技であるとわかっていても、この気持ちの悪い声と長く付き合いたくない。

 自分の呼吸音を手掛かりに一歩一歩丁寧に歩いていると、ようやくシンちゃんの姿が見えてきた。だけど、なんだか少しだけ様子がおかしい気がする。

 ともかく、これでゴールだと思うと、ホッと胸をなでおろす。自身の姿と森のミスマッチのせいで、ただの痴女にしか見えない。

「どうしたの?」

「……ヒカリねぇが歩き回ったおかげで、この主人公が走り回ってくれた」

「あー、そういうことね」

「……ただ、あとで謝っておかないといけないかもしれない」

「謝る? 確かにかわいそうなことしてるけど……」

「……ここの主人公、10歳ぐらいの女の子」

「あっ」

 思わず察した声がでてしまった。

 無言の時間がしばらく続く。もとよりシンちゃんはおしゃべりじゃないけど、それ以上に静かな気がする。

「もう、いないぃ? あぁん!!」

「あの子か……。ごめんね」

 背中に向けて謝る。今すぐ追いかけて謝りに生きたいところだけど、ますます恐怖をあおるだけな気もするのでぐっとこらえる。

 ともかく、主人公が見つかったのだから、次の階にすすみたいところである。

「それで、階段探さないとね……。木のせいで分かりにくいけど」

「……ある程度推測は立てられている。まず、私たちが入ってきた階段があそこ」

「よく覚えているね」

「……目印着けてたから」

 目印……。あ、本当だ。気が付かなかったが木の枝が折られている。だから、この場所からというのもあったのだろうか。

「それで?」

「……あなたが歩くスピードが分速50メートルほど。そして一週して返ってくるのには8分30秒。つまり、ここの距離はおよそ425メートルとなる。……そして。今ままで上ってきた階から平均的に見て入り口の階段と降り口の階段はおよそ200メートルだった。……その誤差はほとんどなくてプラスマイナスで5メートルぐらいしかない。だからここから200メートル先の部分を中心に探せば見つかると思う」

「なるほど……そんな決まりがあったんだ。夢幻回廊てっていうだけで、そういうのはないと思い込んでいた」

「知識さえつければ、ヒカリねぇの方が先に気づけるようになると思う」

 これは嬉しい言葉だ。

 200メートルほど歩いた場所で探ってみると、階段を見つけることが出来た。

 それにしてもここの部屋の主人公はできるだけ早く救出してあげるべきだろう。

 続いて6階、『極光の輝き』。

 極光……。本物を見たことはないけど知っている。確か寒い地域で見られる天体現象のはず。

「オーロラ、だよね」

「……この部屋の主がオーロラと設定していればそのはず。部屋の名前は夢幻回廊が勝手につけているから、他の極光、もしくは何かをオーロラに例えていれば別だけど」

「むり、無理無理無理無理!? 仮にオーロラだとしたら私死んじゃうよ?水着こんな姿でオーロラ見える場所って私死んじゃうよ!」

「……大丈夫。夢幻回廊の中で死ぬことはない。夢の中で死ぬ体験しても死なないのと一緒」

「なら安心とでも言うと思います!? 全くもって安心できないよ?」

「……仮に死んだとしてもちゃんと送るから」

「最悪の結末だよね!?」

「……開けるよ?」

 返事を無視して扉を開ける。そこに広がるのは真っ白な氷に覆われた世界。風こそふいていないがシロクマやペンギンがいてもおかしくないような氷上の中にオーロラが輝いている。

「待って!! 寒く……はない? 感覚麻痺してるわけでは、ないよね?」

「……夢の中だから何でもありと言うことだと思う」

「確かに夢の世界で温度って感じにくいかも。なら、助かったかな」

 思えば『悩み波』の時も特別日差しが強かった覚えもなかった。適正な温度だったように思える。『恐怖の間』のでも、木々による冷たい空気が流れていてもおかしくなかったのに寒さを感じなかった。

 そういうものなんだろう。もちろん、夢の主人公が寒さを感じるように設定をしていれば別だろうけど。

「わぁ……。綺麗、だね」

「……うん。見晴らしもいいし。あそこにココの主人公も」

「そうだね。話しかける?」

「……うぅん。認識さえ出来ればいいから」

 その人物は17歳ぐらいの少女であろうか。氷上で、車いすに乗り、頭のニット帽は坊主頭を隠していることがその様子から理解できる。この国はそれなりに科学文明も進んでたということは医療もそれなりに進んでいたということだろう。

「……夢幻回廊の暴走。それが病院の方にまで行ってた。あの病院は末期のがん患者も収容していた、のかな」

「そうだね。あの子、もう」

 それ以上の言葉は何も告げずに小さく頭を振る。クロネコに身を置くようになってまだ少しだが、シンちゃんの様子からなんとなく読み取れる。未来を推測することが出来る。

 あの子の寿命を。余命幾ばくかと言うことを。

「……あなたに幸せを」

 聞こえないことを理解している。それでも告げられずにはいられなかった。病状の女の子。かわいそうと思うことが正しいのかどうか。死が全てを分かつわけではない。だが、それでも人の死というのは重い物であろう。特に一般人にとっては馬鹿にならない重さがあるであろう。

 そういえば、オーロラはこの世を去った魂が天へ昇るときに使われていた、という伝承を聞いたことがある。

 少女にとって、オーロラにどのような意味があったのだろうか。この寒い土地でオーロラを見つめた先にあるのは一体何なのであるのだろうか。

 階段はすぐに見つけられた。もう一度少女とオーロラを見てから階段を上る。

「……次は『微笑みの裏へ』」

「これ、は」

「……ん。たぶん、レイが主人公だと思う」

「だよねぇ」

 微笑みといえばレイ君を思い出す。さらにその裏と言われれば、もはや彼以外にいないのではないだろうか。

 扉を開けると私の想像以上の世界が待ち受けていた。クスクスという笑い声が辺り一面に咲いていて、もはや狂気の沙汰ともとれる。

 思えば怖い話などでは幽霊側の笑い声というのはつきものだ。幽霊は笑うか泣くか叫ぶか恨むか……人間のそれより表情豊かに描かれてる気がする。

「……それで、レイはなにしているの?」

 部屋の中央でベンチに座って読書のふけこんでいるレイ君に話しかける。よく、こんなうるさい部屋で読書ができるものだ。というか、今回の元凶であるはずの彼が一番リラックスしている。

「シンが動いているのは分かっていましたから。どうです? 何人見てきたのですか?」

「……自分の分とここも含めて7階分」

「ほう。では残りもシンに任せましょうか」

「れ、レイくんはなにするの?」

「正直二人で動き回るとすれ違ったりなどで、お互いに最後のピースを埋めれない可能性が高いため、私は休んでいることにしました。ほら、こちらの夢幻回廊のマップでシンが動いていることは見えましたから」

「えっ?」

 誘われてみると壁紙の一つと同化していて気づきにくくなっているが、そこにはこの夢幻回廊の階層と思しきものと、そして全員の主人公の位置が書かれている。シンちゃんは桃色、私は白色、レイ君は青色といった具合に書かれている。おそらくあのぐるぐる動き回っている黄色が『恐怖の間』の主人公だろう。

「こんなものまで」

「それに、なにか問題が起こったときに戻ってこれる地点としてここをリスポーン地点としていただくべく、私も整理しておきましょう」

 パンパンと手をたたくと、空中からボタンが二つ表れて私たちにわたされる。この世界の主人公は彼なんだと改めて認識する。

「そちらのボタンを押すとこちらの部屋にワープするようになっております。もし、道具が必要になりましたら私が出して差し上げます」

「なんでもあり?」

「夢の世界ですから。それにここは微笑みの裏へ。幸福になるものから不幸になるものまで、道具は自由に出せるようにしてあります」

「へ~……って、そうだ! じゃあ、私の服! 服を出せるかな?」

「そうですね……服自体は出せると思いますが。夢の中で作られたものですので出来は保証できませんし、なによりなにかしら不思議な力が付属する可能性が高いです。微笑みの裏へはもともとそういう道具を出すようにしてありますから。それでも出しますか?」

「大丈夫、です……。そのままでいるよ」

 私は少し悩んだけどあきらめる。これ以上変な目にあいたくない。

 というより水着姿を見てもなんの動揺も見せないレイ君は一体何者であろうか。性欲というものをどこかに忘れてきているかのようにも感じる。一人の女性としては少しだけ複雑だ。かといって下心丸出しにされても困るものがあるのだが。

「……じゃあ、ココでの管理お願い。私たちは先に行く」

「そうですか、それでは」

「うん。またねってあれ……私もここにいても」

「……いくよ」

「う、うん」

 誘われたのだから仕方がない。実際のところ一人でも問題ないが、逆に言えばココの部屋に二人でいる必要性もない、ということであろう。まぁ、私としても知識を深めるためにはついていく方がいい気がする。

「……8階、『空』。簡潔な名前」

 今までは何かしら回りくどい様子が見えていたのに今回に限ってはたったの一言で片付いている。部屋の名前で推測できなければ夢の内容も推測しにくくなってしまう。とはいえ先ほどの階のように欲望に塗り固められていたりすれば別だが。

「あっ」

「……うわぁ」

 扉を開けて全てを察する。そこにあるのは空だった。まごうごとなき空。そして上から落ち続けている一人の少年。齢9歳といったところだろうか。

「確かに一回は空を飛んだりとか、階段を踏み外したりとか、そいういう夢をみるよね」

「……地獄」

「空なのに地獄ってのもおかしな話だけども」

 『恐怖の間』以上に早く助けてあげるべき人じゃないかな。夢から覚めなければ延々と落ち続けなければならない。

 子供はやはり刺激が強い分悪夢なども見やすいのかもしれない。ストレスがないと思われがちだが実際はストレスだらけということもある。

「それで、私たちはどうするの?」

「……リスポーン」

「えっ?」

「……レイのところに戻ってパラシュートを二つもらってくる」

「あっ、なるほど。あの子の分は……空中にいるから手渡しも出来ないかな」

「……ココで頑張るより夢から覚めさせてあげる方が先決」

 そう言い残してボタンを押すと目の前から瞬時に消える。便利な物だと思う。

 しばらくの間落ち続ける少年を見ていると、後ろから軽い足音が聞こえる。

「……ただいま、もらってきた」

「ありがとう。それにしても本当になんでも出せるんだね」

 パラシュートを受け取りながら言う。

「……夢の中だから」

「便利な言葉だなー。夢って」

 夢幻回廊の付加価値ともいえる。メインとしては自分が望む夢を見るというものである夢幻回廊。今となってはそれはその人にあった夢としか設定されていないのでメインの価値が消失をしているのだろう。

「それと、これ双眼鏡。階段探しに役立つかもって」

「……うん。ありがとう」

 双眼鏡を受け取ってあたりを見渡す。その双眼鏡は付加価値として熱源探知もついていた。ビュンビュンと男の子が下に落ちているが、意図的に無視しつつ探しているとと、一カ所不自然な部分を見つける。

 あそこかな……。シンちゃんにも指をさして教える。

「だとしても、スカイダイビングか……」

「……いくよ。せーの」

 バッと二人そろって飛び降りる。

 悲鳴を押し殺しながらパラシュートで落下しつつ、その不自然な点まで降りてきたところで扉を開ける。未来を視る能力のおかげで風の流れも簡単に操作することが出来た。

「よいしょっと……シンちゃん!」

 私がうまく扉内へと侵入をして手をさしのべる。その手をとってなんとかシンちゃんもフロアへ降り立てることができた。

「よし、がんばろう!」

 自分を元気づけるためにも声を上げる。早く助け出してあげるべき住人の2人目だ。

 その願いもかなってか、それともぐうぜんか、次二人は簡単にクリアーできた。8人目『徒労宿舎』、9人目『ストレス総会、爽快へ』というもので、これまでの傾向的に、なぜか若い成人男性の夢は簡単にクリアすることができた。問題はといえば、主人公二人の目は死んでいたことぐらいだ。

「大変そうだね、仕事って」

「……自由気ままな仕事だね、クロネコは」

「呪術師も大変なんだろうけど、また違うよね」

 自分の国を思い出す。あの国では、ここまで死んだ目の人間を見なかったけど、こういう人もいたのかな。

「これで、出られるの?」

「……ううん。最後の仕上げ」

「えっ? う、うん」

 その言葉に少しとまどいながら、登り切ると現れたのはもはや見慣れた扉。『真空の夕焼け』とタイトルがかかっている。

「これ、は?」

「……私が主人公の部屋。私にとっては1階」

「ん、うん、あれ? シンちゃん、ずっと上ってきたんだよね?」

「……うん」

「階段を上ってきて、一度たりとも降りてないのに同じ部屋に戻る……?」

「……夢幻回廊だから」

「すごい……、免罪符だね」

 クロネコに入って日に浅いけど、この思考放棄は大切な気がする。なにかしら原理があるのだろうけど、そういうものだと、無理やり納得をしておく方がいいだろう。

 ともかく、タイトル通りの夕焼け空間に足を踏み入れる。

「それで、ここで何をするの?」

「……これ、もってて」

「どこから出したの……」

 思わず素で突っ込んでしまう。

 とはいえここはシンちゃんが主人公の部屋。何が起こってもおかしくない。

 渡されたのは大きな円盤。もっているだけでもかなりの重さで手がぷるぷるとする。

「……ここに夢の住人の顔と目的、内容を綴った紙をいれていく」

「『桃源郷』はわかりやすいけど……空みたいなやつの目的って?」

「……色々言われてるけど必死に頑張って、それでも手に入らない、もがいているときによく見る夢としてどこまでも落ちる夢をみるみたい。……あの年齢なら子供の中でも色々葛藤も生まれる頃だと思う。……不安もあるから見たんじゃないかと予測できる」

「へ~」

 少し間の抜けた声で返事をする。そこまで考えていかなきゃならないのかと。

 ともかく、全ての事柄を書き終えて円盤にセットしたその時だった。

 辺りが輝きだす。妙な感覚が瞼を焼く。

 これは、夢の目覚め、ということなのだろうか。私の記憶はそこで途切れていった。




 ひのと



 ぼんやりとした視界の中、徐々に焦点があっていく。ホテルの天井が目に入る。

「おはようございます」

「おはよう、レイ君」

「はい、お目覚めしていただけて嬉しい限りです」

 まるで、目覚めない可能性があったかの言い回しである。まさか……いや、ないだろう。

 ふと視線を落とす。当たり前だが、水着姿でないことにほっと胸をなでおろす。

「そういえば、シンちゃんは?」

「先ほど目を覚ましてまた眠っています。夢の中で疲れたのでしょう」

「それは、確かにね」

 私も夢の中でだいぶ動き回ったせいでかなり眠い。夢といっても、明晰夢に近いものだったのでかなりつらいものがあった。

「とにかく、これで色々助かりました」

「もう、こんなこと勘弁だよ?」

「はい、すみません。では、ヒカリさんもお休みになられますか?」

「そうする」

 のろのろとベッドにはいよっていく。それにしても、いくつもの人間と出会ったものだ。彼らはここから解放されたことを覚えているのだろうか。ただの、意識がはっきりしていた夢と処理をしているのだろうか。

「さてと、お勉強と悪戯の境目でしたね。巻き込んでしまった方は申し訳なかったですね」

 あれ、まさか今回のことはわざとやっていたの?

 そういえば、レイ君の階だけ、本当に何でもありにされていたようにも感じるし。

 そのことを問い詰める前に眠りに落ちていってしまう。

「皆様に、幸せを」

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