安堵と罰
「今日来るのは控えてって言ったのに。きちんと連絡は入れるって言ったでしょ?」
「すいません……。居ても立ってもいられなくなってしまって」
病室に突入した俺はその後すぐに祐子さんに追い出され今は絶賛説教中だ。
「まあ……気持ちは分かるけど。それでもだよ。まったく、病室に飛び込んでくるなんて。医療器具が倒れて壊れたりしたらどうするの!!」
「本当にすいません……」
すっかり絞られてしゅんとなっている俺を見て祐子さんは苦笑いする。
「大切なことだから私もこんなに怒ってるんだよ。これからはちゃんと気を付けてね」
「はい。本当にすいませんでした」
「反省してくれてるならもういいよ。じゃあ、私はもう行くけど博人君はどうするの?ていうか学校は?」
「その……昼休みに抜け出して来てしまって……」
「ああ、だから薫ちゃんあんな怖い顔してるんだ」
「ははっ……えっ!?」
慌てて振り返った目線の先には恐ろしい顔をした宮本先生がこっちに来るのが見えた。
「駒井!!何をしているんだお前は!!」
「げっっ!!痛っっ!!」
先生の平手が頭に炸裂する。
あまりの痛みにその場に蹲る。
「薫ちゃ~ん。病院の中では静かにね」
「ああ、悪い祐子。まったくこの馬鹿者が」
「まあまあ。私からもいっぱい言っておいたし勘弁してあげて。じゃあ、私はもう行くよ。仕事がまだ沢山残ってるからね~」
「ああ、迷惑かけたな。本当にすまなかった」
「大丈夫だって~。薫ちゃんは真面目だな~。いつもは大雑把なのに」
「駒井の担任として当たり前のことだ。あと、一言余計だぞ」
祐子さんは宮本先生に何か耳打ちをし、それを聞いて先生は驚いたような顔をする。
笑いながら「じゃあね」と言って祐子さんは歩いていく。
先生は複雑な顔をしていたが祐子さんの姿が見えなくなるとじろりと俺を睨み付けてくる。
「本当にお前は……」
「す、すいません。……でも、よくここが分かりましたね」
「生徒が一人学校から脱走したと他の先生から報告があってな。事務の人に玄関の監視カメラの映像を調べてもらったところ、走っていくお前の姿が映っていたんだ。お前だったら行く場所は一つだろうと思ってな。あと、ほらっ」
先生が投げたものをキャッチする。
それは俺の携帯だった。
「落ちていたのを拾ったんだ。あとパンも一緒に落ちていたがそれは職員室に置いてある」
「そうなんですか?ありがとうございます」
先生は相変わらず不機嫌な顔だったが少しだけ微笑んで言った。
「まあ、良かったな。目が覚めたんだろ?」
「……はい、本当に良かったです」
「栗山には会えたのか?」
「はい、チラッとだけですけど。でも三、四日は検査とかで面会拒否らしいです」
「まあ、それは仕方ないな」
そう言うと先生はまた真剣な顔に戻る。
「しかしどんな理由があろうと無断で学校から抜け出すことは許される行為ではない。学校に戻ったら反省文もしっかり書いてもらうからな」
「マジですか。……まあ分かりました。今回は俺が悪いですからね」
「じゃあ今すぐ学校に戻って説教と反省文だな。どうせ今は栗山にも会えないんだろ?」
「えっ……。あ、あの説教はもう……」
先生は笑いながら諦めろとばかりにポンと俺の肩を叩いた。
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