第3部 第17話「狂気との対決・④」

……さて。

前話で地下に閉じ込められて、なんとか脱出した勇一、それと早咲の眷属の女の2人は、第二の関門に難儀を浮かべていた。

「あー、そウ、でしタ。あト、6ツ、あるんでス、よネ。」

そこにあるは、0と1の集合体。

言うまでもなく、2進数、というものである。

「異世界で漢字とパソコンのお勉強ってか……日本人が屋敷の主だってのは分かるが、問題のチョイスおかしすぎ……普通なぞなぞとかクイズだろ……」

“1010001011”

「まあいいや。確か解き方は……」

勇一が側の鉛筆で書き込む。

1=512,0=0,1=128,0=0,0=0,0=0,1=8,0=0,1=2,1=1

「で、右側を足して……」

1+2+0+8+0+0+0+128+0+512 (1+2+8)+(128+512) 11+640=651

「で、パスワードは4桁だから」

“0651”

勇一がパスワードを入力し、扉が開く。

「なるほど……」

“残りの警備:5"

ため息をつき、呟く。

「こんな調子で、異世界で地球のクイズがあと5個続くってわけか……」

この屋敷の警備は、とても厳重だった。

そして次の問題は……

“下の文章を読め”

“めらほさじまくけ”

“ヒント:か→あ、つ→す”

「よし文字ずらす系の問題だ。よくあるやつな」

勇一は天井に貼り付けられた鍵を手に取り、鍵を開けて扉を開けた。



*********



「燃え盛れ! フラーメン・シュトーツ火炎猛突!」

希里花が火炎魔法を放つも、少年は1ミリたりとも驚かず、冷静沈着にその火炎を片手で受け止める。

燃え盛る手を物ともせずに、彼は言う。

「熱い戦いとかいいから早く心臓を渡してくれないかなァ。」

そんな彼の態度に気を取られながらも、希里花は詠唱を続ける。

そして放つ。

黒煙纏いし炎の風ダークフレイム・ヴィントストーム!!!!!

しかし、先程の魔法をもってしても一ミリも怯む様子を見せなかった少年はやはり怯む筈もなく――


……跳ね返した。


「―――――――っ!?」

そして跳ね返された魔法は、彼女――希里花へ真っ直ぐに舞い戻った。

「キャッ―――――!!」

希里花を、黒煙の舞う火炎が包み込む。

そんな様子を見ながら、少年は言う。

「いいからさァ、早く心臓渡してくれよォ!」

傷つく顔面。痛む全身。

その痛みを必死に堪えながらも、希里花は言い放つ。

「あんたなんかに命を渡すものですか!」

そして同時に思った。

勇一に来てくれれば、この状況を打開する策を考えてくれるのではないかと。

即ち、勇一に来てほしいと、そう思った。

その時だった。

「リーブ、もういい。そこまでだ。」

一人の男が、奥の部屋から顔を出した。

「誰!?」

その場にいたパーティの全員が驚き、その男の方を向く。

「リーブがここまで苦戦するとは、よっぽどの心臓なのだろう。」

男は喝采を送りながら言う。

「この心臓は、私が自分の手で掴みたい。」

鬼のような笑顔は、その場の全員に恐怖感を与えた。

「……本丸登場って訳ね。」



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