電子の星。

零と一の波間を滑るように掻い潜っては

ディスプレイの向こうの君を見つめる

どんよりと濁って死んだ目でこちらを見た

そんな君が誰よりも強いことは知っている

ただ踏みだす勇気のひと欠片がないだけで

本当の君は熱い思いを秘めたひとなのだ


電子の瞬きの中に埋没した僕の見る世界は

ゴミクズのような感情の集積場みたいで

いつもいつでもどす黒い思いが渦を巻く

そんな汚い感情を目にするのは飽きたから

死んだような目をしながらも熱さのある

君のような珍しい存在を求めたのだろう


君がキーボードを打つ音だけが部屋に響く

一定のリズムは神秘的な音楽のようで

繰り返されるハーモニーはきれいだった

その打鍵音に乗って僕は電子の世界を舞う

穢れた思いの坩堝のような世界だけれど

その中に一瞬だけ輝くものが見えたから


不恰好で無能でどうしようもないと

君は君自身のことを嘲笑って腐るけれども

そんなことはないと僕は声を張り上げたい

本当に腐っているのはこの世界の方だと

僕は電子の旅を通じて知っているのだから

君の濁った目の中のヒカリを感じていた


電脳の世界に瞬く一粒の星が君の目だから

全身全霊をかけて僕は君の存在を肯定する

君という名の電子の星が瞬く世界は

相変わらず汚くて穢れゴミだらけだけれど

その中に灯された一筋の希望が君なのなら

流れてゆく君の涙を受け取っていいかな

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