第66話 策士、策で溺死するのです。
“ふふ…誰も私の正体に気付いてないみたいね…。”
タマのファンと称し近付いてきた少女。果たしてその正体は!?
“私の尊敬する涼子姉様を侮辱した玉乃井樹にはそれ相応の報いを受けてもらうわ。この鈴木典子(すずきのりこ)の手によって引導を渡してやりましょう!”
……会長の妹さんみたいだね。もうちょっと正体引っ張りたかったな…。
鈴木典子16歳。大田原西高校に通う高校一年生だ。マネージャーというのも嘘である。
姉のいる那須野ヶ原高校を受験しようとするも当時の担任にヤバいから止めておけと言われ当校に入学した。
そう考えるとアホなタマも少なくとも高校受験の時に関しては勉強が出来ていたんだね。まあ、タマが那須野ヶ原高校に合格した時、今世紀…いや、人類史上最大の奇跡と言われ町内会の回覧板に号外的に載せられた位の出来事だったらしい。
ともあれ、尊敬する姉のために妹が一肌脱いだわけだが、会長本人はその事を知らない。妹の暴走である。
「ほお。いいだろう。握手してやろう。」
タマは手を差し出す。
「ありがとうございます。“ふふ、騙されているわね。地獄を見るといいわ。”」
握手をした後、典子は一本のスポーツドリンクをタマに差し出した。
「応援してます!これ良かったら飲んで下さい。」
「おう。ありがとう。ありがたく頂戴しよう。」
“これで午後の試合に玉乃井は参加出来ないわ。ざまぁみやがれだわ!!”
このペットボトルには下剤が仕込まれている。未開封のペットボトルに異物を混入する方法があるのだが、その方法は内緒だ。これを読んでやる人がいたら大変だ!作者もやった事はないぞ!神に誓って!神様信じてないけど!!
「では私はこれで…。」
「まあ、待ちたまえ。これも何かの縁だ。君も一緒に昼飯なぞどうかね?」
ハンクス誘うんじゃなかったのか?
“断るべきかしら?いや…、飲むのを確認した方がいいかもしれないわね…。”
「はい。じゃあ、お言葉甘えてご一緒させて頂きます。」
各々持参の弁当を広げる。フェミちゃんはサンドイッチ、テレちゃんは彩りも綺麗な可愛い小ぶりのお弁当だ。メガネもサンドイッチだが少しボリュームがある。このサンドイッチは羨ましい事にフェミちゃんの手作りだ。このリア充め…。タマは…何だそれ?マヨネーズとソースがかかっているのは確認出来るが…。
「タマ君…それ何?」
フェミちゃんは我慢出来ずに聞いた。
「これか?これはタマちゃん特製たこ焼き風だ。」
「たこ焼き風の何なんだよ?」
テレちゃんも堪らず聞く。
「それは秘密だ。テレちゃん食べてみるか?」
「いや…やめておこう。どうせ中身もマヨネーズとか言うんだろ?」
「良く見ろ!マヨネーズは上にかかっているじゃないか!君はどうかね?」
タマは会長妹に弁当箱を差し出す。
“正直恐怖しかないわ…。でもここで断っては玉乃井のファンという大嘘がバレてしまうかもしれないわね。”
「じゃ…じゃあ1つだけ…。」
震える手で会長妹は謎のたこ焼き風何かを1つ取り上げた。不思議なフルフル感が箸からも伝わって来る。
“気持ち悪いわ!この上なく気持ち悪いわ!”
「あんた無理しなくてもいいんだぞ。」
心配したテレちゃんが助け船を出す。しかし会長妹ももう後には引けない。
「いえ、大丈夫です!」
会長妹はそれを口に含んだ。そして二噛み程した時に事件は起こった。中身がトロリとしたその物体は程よく細かくなり会長妹の口から勢い良く放出される。不幸中の幸いは放射状ではなくピンポイントでタマの顔面をとらえた事であろう。
「わっ!!大変!!これ飲んで!!」
フェミちゃんは慌てて飲み物を渡し会長妹に飲ませた。
「おい!タマ!一体何入れたんだよ!」
テレちゃんがタマに詰め寄る。
「え?あ、カラシマヨネーズ。」
顔を拭きながらタマが答える。
「中身はマヨネーズじゃないって言わなかった?」
「バカ野郎メガネ!!マヨネーズじゃない!カラシマヨネーズだ!!」
「馬鹿はお前だタマ!マヨネーズじゃないか!」
「テレちゃん!マヨネーズとカラシマヨネーズは似て非なり!!いいか?そもそもカラシマヨネーズとはな…。」
「ちょっとタマ君。マヨネーズ談義はいいから彼女にまず謝りなさいよ。」
会長妹の顔は青ざめていた。
「あ…、その…、俺は大好物なんだぞ!だけど、まあ、お口に合わなかったようで申し訳ない。」
タマは頭を下げる。だが、青ざめている原因はタマのマヨネーズインたこ焼き風のせいではなかった。フェミちゃんが慌てて渡した飲み物は他でもない会長妹がタマに渡した下剤入りの物だった。
「わ…私はこれで失礼します!!“チクショーだわ!覚えてやがれだわ!!”」
会長妹は逃げるようにその場を去っていった。
「ほら~、怒って行っちゃったじゃないか。一人ファンを失ったなタマ。」
テレちゃんが呆れたように言う。そもそも彼女はファンではなかったし、本当にファンがいるのかも怪しいもんだが…。
「美味しいと思うんだがな…。」
そう言いながらタマはたこ焼き風のマヨネーズの塊を口に放り込んだ。
その一部始終を見ていた者がいた。
「何て事なの…郷田桐子…恐ろしい子…。」
たまたま通り掛かった那須野ヶ原高校2年2組桑名七海。また出たな。そしてなぜあの飲み物に下剤が入っていた事を知っている?この子の方が恐ろしい子だ。
ともあれ、計らずもフェミちゃんの優しさという凶器で難を逃れたタマ。会長妹の姿をその日見た者はいない…と言いたいところだが、会長が家に帰ればトイレから出てこない妹と会う事にはなるね。
次回!!全高ダン2回戦!!果たして相手は何処なのか!?1回戦のようにはいかないぞ!!……あ…、ハンクス忘れてた…。……つづく!!
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