救世主とのお別れ
「これが僕のブルーだ!!」
絶叫と共に振り下ろした長剣から、セッカの体を包んでいたブルーのオーラが一直線にほとばしりオオジュリンの体を貫く。倒れたオオジュリンはそのままピクリとも動かない。
その間にセッカはミサゴを助け出す。
トキとアイリスはオオジュリンを確認する。外傷はない。死んでもいない。ただ気を失っているだけのようだ。二人は用心のために縛っておく。
一体ブルーとはなんだったのか?
セッカは「僕のブルー」といった。
セッカのブルーとオジロのブルーとは違うという事なのか?
セッカはツグミに手伝ってもらってミサゴを介抱する。
「ありがとう、セッカ」
瞳をうるませてお礼の言葉を口にしたミサゴに対し、セッカは照れ臭そうにこめかみの辺りをポリポリと掻く。
「僕の方こそ、お礼を言わなきゃ」
「どういう事?」
ツグミが不思議そうに尋ねる。
「それは俺たちも聞きたいな」
セッカは思いっきり照れて、今度は頭をガシガシと掻く。
「えっとね、ノスリが言ってた正義の力と平和の力ってどう違うのか…僕、実は今でもよく判んないんだ」
「そりでよくブルーが発動したね」
ノスリが茶化す。
「でも、そんな時にミサゴの声が聞こえてきた。どんな事があっても人を殺しちゃダメだって」
セッカは続ける。オオジュリンを殺さずにどうすればいいのか悩んでいたら、オジロがヒレンジャク・キレンジャクを封印した時の様子が浮かんできた。オジロの答えはこうだった「殺してはいけないのであれば、永遠に封じ込める」。ブルーの発動がどんなものかはそれで判った。でも、それじゃあ今回みたいに封印を破るような人がまた現れるかも知れない。
「だから僕は考えた。封印じゃない何か別のいい方法はないかって。で、二つの方法を考えた。一つは、オオジュリンから魔法を奪う方法」
「なる程、魔法が使えなければ今回のような大きな計画は出来ないな」
トキが感心してうなずく。
「もう一つの方法は?」
じれったそうな顔のツグミにそう聞かれたセッカは、顔をくしゃくしゃにして笑う。
「僕らの仲間にした」
「は?」
「自分のためじゃなくて、みんなのために何かをする人。トキのように何も知らない僕に親切教えてくれたり、ツグミみたいに頼まれなくても人助けをしたり、アイリスのように何も言わずに協力してくれるような、そんな人になれ…って、願いを込めたんだ」
「そりで本当にそうなるのかね?」
ノスリが不審そうな目でセッカを見る。
「ブルーの力は発動者の信念を受けて奇跡を起こします。必ずセッカの思った通りになります」
ミサゴはキッパリと答えた。
「目覚めれば判るさ」
アイリスも信じているのだろう。ちらりとオオジュリンを見るとクスリと笑った。
鎧は再び青白い光を放ち始めていた。
「さぁ、セッカ。祈りなさい。元の世界に帰ると。やらなければいけない事があるのでしょう?」
ミサゴが優しく微笑む。
「でも…」
心配そうな寂しそうな顔を向けられたトキは、初めて会った時とおんなじ笑顔でこう言った。
「後の事は俺たちが何とかする。心配すんな」
「寂しくなるなぁ…」
「こら、ノスリ。そんなこと言ったらセッカが帰れなくなるでしょう」
「お別れだ、セッカ。私は君の事を忘れないよ」
「俺もだ」
「私も」
「オーラも」
セッカはアイリス、トキ、ツグミ、ノスリと順番に握手をすると、瞳からは自然と涙があふれてきた。
「みんな…」
最後にミサゴがそっと、頬にくちづけをくれた。
「ありがとう。セッカ…」
セッカが静かに目を閉じると青白いオーラは輝きを増し、白く、まぶしく辺りを包む。一瞬白い闇が支配し、やがて元の景色が戻ってくると、そこにはもうセッカの姿はなく、龍の鎧とセッカが使っていた冒険道具だけが五人に囲まれて残っていた。
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