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「どうすることもできない」遥は言う。はっきりと言う。
「神様を復活させればいいんじゃない?」夏は言う。実際に夏が知っているだけでも、(夏がふと感じた人工進化研究のような具体的な方法論ではなく、象徴的な、もっと曖昧な偶像的な意味合いでなら)そういう動きは世界のいたるところである。
「死んだ人を蘇らせることはできない」
「神様は人じゃない。概念でしょ?」
「神様はもう昔の神様じゃない。それに、人類はそこまで愚かじゃないよ」遥は言う。夏には遥の言う昔の神様という言葉の意味がよくわからない。でも、後半の部分は賛成だった。それはその通りだと思う。人類はもう子供ではない。
「なんかさ、ちょっと悲しいよね」
夏も遥と同じで別に神様を信じているわけではない。でもなぜか、こういう話をしているととても悲しい気持ちになる。
神様がいないことは知っている。でも、神様が本当にいてくれたら、どうだろう? と考えてみる。それは、とても幸福なことではないだろうか? 神様が生きていた時代の人たちはどう感じていたのだろう? ……今よりも幸せだったのかな? 夏はテーブルの上の神様について書かれた古書の表紙をみる。そこには十字架が描かれている。それはシンボルである。本当の神様の顔や形、それから名前はその古書には描かれていないはずだ。なぜなら、神様の顔や形、名前を記すことは本来はタブーな行為であるからだ。……人類にはすることができない、神様の決めた違反行為、つまりルールだからだ。
私たちはいっぱい、いっぱい悪いこともしてきたけど、神様がそれを全部、いいよ、って言って許してくれたのかな?
夏はその古書の中に書かれていることを、きちんと読んでみたいと思った。(もっとしっかりと英語を勉強しておけばよかった)
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