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夏のとても美しい黒髪が春の日差しを受けて輝いている。とても奇麗。遥はその光の反射の中に夏の未来を感じた。
遥は夏が考えているほど完璧な人間ではない。できることはたくさんあるけど、同じくらいできないこともたくさんあった。できないことは遥の日常の至るところにあふれている。夏にできて、遥にできないこともたくさんあった。
ピアノだってそう。遥は夏の突拍子もない行動に驚かされることがとても多い。
本人はそう思っていないだろうけど、これからもきっと夏の行動で驚かされることがたくさん起こるだろう。
そこが夏の一番の魅力だ。瀬戸の家に生まれたことでも、ピアノが上手に弾けることでもない。なにもしていなくても、夏は夏としていつも輝いている。生きていく力を秘めているんだ。
問題はそのことに本人が気づいていないことだ。自分の中にある宝物に気がついていない。もし偶然にそれを見つけたとしても夏はきっとその宝物が入った箱を開けたりはしないだろう。むしろ自分から鍵をかけるはずだ。きっと今、夏が暮らしてる鳥籠の鍵と同じように。自分と向き合うことが、怖いから。
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