書き初め

 つまらぬ散歩を続けていると、ふと何かの白い廊下の風景が頭の中にやって来た。中学校時代の廊下だということは、少し考えた末に分かった。廊下の前には、正月には月並みの、あの掛け軸が並んでいて、それから「理想と現実」。ああ、確かにあの時は、この言葉に何の感情も芽生えることはなかっただろう。いくつかの理想はあったかもしれないがそれは人生の話だろう。今や詩の理想なんかにゃたどり着けない事が分かってから1世紀以上も経っているが、いくつも並ぶこの「理想と現実」は何を語りかけるだろうか。この対立、いや接近かも分からぬ。そいつは何故今になってあらわれたのだろうか。怠け者には分からないから、この辺でやめよう。永遠と続く廊下を歩くぼくに向かって、無邪気にトメハネする黒い蛇が上から下から睨んでいる。下を向いているぼくには、「理想と現実」とやらには勝てそうにもない。

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