第四話 信長の曲がらない事実 其の一

 信長が清洲城を出陣して間もなく今川の大軍によって丸根砦、鷲巣砦の二つが陥落した。


 しかし、信長は焦る様子もなく平然として歩みを進めた。


(こういう時こそ冷静に、戦は相手の考えを上回る事が勝利へと繋がる。)


(地の利は我にあり。)


 信長は己の命運が決まるであろう、この今川義元との戦いに勝つ為にの選択を選ばなくてはならなかった。

 今川を討つ事は信長にとって、この上ない絶好の機会である。


(今川義元の首を取れば...天下取りへの展望が開ける。)


(間違いは...許されぬ。)


(神は我を試しているつもりか?)


(神などに我の命運を決められてたまるものか!)


 神をも恐れぬ信長らしい考えである。

 信長の天下取りへの執念は神すら恐れをなすだろう。

 この執念こそが信長を突き動かすエネルギーの源なのかもしれない。


(しかし、不思議なものよ...これから死ぬかもしれないと言うのに、この昂る高揚感は...。)


 信長は久しく感じていなかった、軍旅の独特な緊張感を楽しんでいた。


 そして信長は丹下砦を介し善照寺砦に向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る