第13話
宿舎前で警備をしている兵士にあいさつをして宿舎に入る。さすがに宿舎内に兵士はいないようだ。
宿舎に入ってすぐにカミラさんが俺たちの方を向いた。
「エレナ、明日は休みだけど外出は複数人で、するのよ?」
「はーい。」
「……キツネさんはどうするのかしら? エレナと一緒に行動する?」
「そうだな……なんか不安だし一緒にいるよ。」
「あれ? 私、心配されてる?」
良く分かっていないエレナを無視して、カミラさんに手を振って階段を上っていくと、エレナも俺を追いかけて部屋に入ってきた。
薄暗い部屋を進み、俺はベッド横に
エレナも着替えて
「さて、エレナ。」
「ほいほい。」
「飯はさっきの串焼きでいいかも知れんが、洗濯とかは良いのか?」
「あ……。まぁ、明日洗うよ。……ふぁ。ちょっとだけ寝てから考えるよ。」
「そうか、おやすみエレナ。」
「うん、おやすみ。」
エレナが横になり寝入るのを待っていると、エレナが起き上がり
エレナは俺の背に顔をうずめ、寝ようとする。
「エレナ、どうした?」
「……今日は、ありがと。」
「礼を言われるような事をしたっけか。」
「キツネさんがいなかったら、多分私は森に入れなかったと思うから。」
「そうか。」
「……聞かないんだね。何で森に入らないのか、とか。」
「言いたくなったら聞いてやるさ。それよりも、だ。」
「何?」
「エレナ、におうぞ?」
「……そういうのは出来る限りやんわりと教えて欲しかった……。そんなに臭う?」
「ツーンとするくらいには。」
「……。」
エレナは自分の腕や胸元を引っ張り臭いを
薄目を開け、俺を抱く力を少し緩めてくれる。
拘束を解かれた俺はエレナに向き直り、ばつの悪そうな顔をするエレナに事実を突きつける。
「エレナ、今更だが昨日も臭かったぞ?」
「え……そう言えば昨日身体拭いたかな……。うわぁ……今日一日臭かったのかな……。」
「エレナが寝静まった後にキレイにしたから、朝には臭ってないはずだぞ。」
「……キツネさんは掃除の時も魔法使ってたね。ありがと。」
「まぁ、そんなわけで今日もキレイにしておこう。」
「あ、はい。……ほぁ、ありがと。」
黒球によってキレイになったエレナは、やはり疲れがたまっているようで。再度、俺を抱き寄せ眠り始めた。仕様がない、しばらくすれば腕の力も弱まるだろう。
エレナの寝息を聞きながら今日の総括をする。
商業ギルドについて。
商業ギルドの倉庫は外部からの侵入の形跡は無かったようだ。外周を見ただけなので、屋根などは見ていないだろう。明日には何か分かるかもしれない。
黒球について。
片目を開け、近くをふわふわと浮いているそれを見る。
いまだに何なのかサッパリだな。「言えば何かしてくれるボール」程度の認識しかない。俺を守ってくれる。カミラさんが言うには俺から魔力が流れているらしい。残念ながら俺には見えない。
今後について。
エレナの寝顔を見ながら考える。
この世界に来てしまってから数日、自身が動物になるという素敵体験真っただ中なわけだ。言葉が通じるのは良いが、この姿のために街に入るのさえ大変だ。まぁ飯の要らない身体になったのだから旅はしやすいか。
倉庫の件が落ち着いたら出ることにしよう。
ここまで考えたところでエレナが少し動く。かわいい子だ。元の世界でエレナのような女の子と出会うことは無いだろう。ギルドの見習いでドジをしつつも頑張っている。良い先輩にも恵まれているし、ギルド員として成長していくことだろう。……おっと、親のようなことを考えてしまった。
頭を振り考えをやめる。
エレナから離れ、窓の前に座り、月を見ながら考える。
さて、他に考えておくことは……戻る方法か。
こっちに来た時は、あっという間だった。戻るにしても何から手をつければ良いのか見当もつかない。大きな図書館で調べるか色々知っている老人に聞くかだろうか。魔法がある世界だ。何かしら方法はあるのだろう。
分からない事ばかりだな、とため息をつきベッドに戻る。
エレナの側で丸くなり休むことにする。
しばらくするとエレナの腕が俺を捉えるが振り払うわけにもいかず、エレナを至近距離で見ながら朝まで過ごすことになった。
エレナは横を向いて寝ている。整った顔に綺麗な髪、きらめく口元と僅かに酸味の効いたスメル……。
「ん?……おいおい、まじか。」
じわり、じわりとエレナの口元から俺に向かって這い寄る
あ……しみてきた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます