異能者たちの苦悩-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-【オカルトも神話も、歴史も今も、世界も宇宙も、すべてはひとつに集約される】
第161話 平成(へいせい)・修文(しゅうぶん)・正化(せいか)/H・S・S
第161話 平成(へいせい)・修文(しゅうぶん)・正化(せいか)/H・S・S
「どうした?」
「現状報告です」
「そうか。それで?」
「そのご空飛ぶ刀を目撃したという追加情報はありません」
「そうか……しかたがないな」
「あの。こんなことをいうのも
近衛の部下は恐縮しきりにいった。
「かまわん。いってくれ」
「はい。お言葉に甘えさせていただきます。その刀を目撃したという一般人は本当に
「一般の協力者がうそをついているとでも?」
「はい。目撃者はたった
「空飛ぶ刀を見た一般協力者は”戸村伊織”という」
「女性ですか?」
「ああ」
「あの。そのどこにその情報が信頼のおける情報だという根拠があるのでしょうか?」
「彼女は病院の看護師だ」
「じゃあ。国立六角病院の?」
「そうだ。九条と一緒に診察することもあるそうだ」
「なるほど」
部下は近衛のその言葉を聞くまで空飛ぶ刀などどこか
ふつうであれば国が一般協力者の空飛ぶ刀の目撃情報をなんの証拠もなく鵜呑みにすることはない。
部下の信頼度がここで極端に高まった理由はまず
国立六角病院の看護師であればアヤカシをはじめ忌具、魔障は身近なもので知識としても一般人とは天と地ほどの差がある。
また魔障専門医の九条と一緒に働いているということが銀行の格付けのようにさらに信頼度を高めさせた。
そんな
明確な物証は提示されていないにしろ”戸村伊織”は信じるに値する人物だった。
「疑ってすみません。刀のことは引きつづき調べます」
「ああ。頼むよ。それになにか疑問があればすぐにいってくれ? 高校生の沙田くんでさえガツンといってくるからな。――じゃあ、情報管理を見直したほうがいんじゃないですか? バシリスクのときにそういわれたよ。それを官房長に進言すると官房長自身もそう思ってたみたいだけれど」
「か、官房長まで意見が伝わってしまうなんて。と、とんでもないです」
部下は当局内において神にも等しい官房長の名が出て目を見開いた。
「なにをいってるんだ。おまえだって国交省の職員。超のつくエリートだろ?」
「いえいえ。あっ、つ、つぎの情報です」
「国家一種に合格したんだろ?」
「ええ。まあ、はい、それは」
「謙遜するな。それをエリートというんだよ」
「は、はい」
部下も近衛に褒められて悪い気はしなかった。
「自信を持て」
部下はこくっとうなずき一枚の紙を広げた。
「つぎの情報を読み上げていきます」
「わかった」
「――現在拘留中だった男は消えた。というよりも
「なるほど」
近衛はとくに表情も変えずにそれを受け入れた。
「あ、あの近衛さん。これはどういうことか僕が訊いてもいいのでしょうか?」
「かまわないよ。ここ数ヶ月のあいだ日本各地で謎の偽造硬貨が使用されたのを覚えてるか?」
「あっ、はい。ありましたね。最近も北海道コンビニエンストアで777円硬貨が使用されたとか。じゃあ、その777円硬貨は本物だってことですか?」
「そうだ」
「でも、あれはたしか
近衛はおもむろに部下の方へと向き直した。
「昭和が終るときにつぎの元号の最終候補は三つあったとされる。それが
「そうだったんですか?」
「ああ、そして昭和のあと平成になった。それはなぜかというと三つの新元号をローマ字表記したとき
「そんな
「察しがいいな。おまえはやっぱりエリートだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます